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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
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  • 補助事業 の実施及び経理が不当と認められるもの

(3) 国民健康保険の療養給付費負担金が過大に交付されていたもの[22都道府県](69)-(162)


94件 不当と認める国庫補助金 1,124,185,043円

国民健康保険は、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関して、療養の給付、出産育児一時金の支給、葬祭費の支給等を行う保険である。

市町村の国民健康保険の被保険者は、一般被保険者と退職被保険者(注1)及びその被扶養者(以下「退職被保険者等」という。)とに区分されている。そして、国民健康保険の被保険者の資格を取得している者が退職被保険者となるのは、当該被保険者が厚生年金等の受給権を取得した日(ただし、国民健康保険の資格取得年月日以前に年金受給権を取得している場合は国民健康保険の資格取得年月日。以下「退職者該当年月日」という。)とされている。退職被保険者等となったときは、年金証書等が到達した日の翌日から起算して14日以内に市町村に届出をすることなどとなっている。

(注)
退職被保険者  被用者保険の被保険者であった者で、退職して国民健康保険の被保険者となり、かつ、厚生年金等の受給権を取得した場合に65歳に達するまでの間において適用される資格を有する者

国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険の事業運営の安定化を図るために、療養給付費負担金(以下「国庫負担金」という。)が交付されている。

国庫負担金の交付の対象となるのは、一般被保険者に係る医療費(平成19年度以前は老人保健法(昭和57年法律第80号)による医療を受けることができる者に係る医療費(被用者保険の保険者等が拠出する老人保健医療費拠出金等で負担)を除く。)であり、退職被保険者等に係る医療費については、被用者保険の保険者が拠出する療養給付費等交付金等で負担することとなっていることから、国庫負担金の交付の対象とはなっていない。

毎年度の国庫負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金等の算定に関する政令」(昭和34年政令第41号。平成20年3月以前は「国民健康保険の国庫負担金及び被用者保険等保険者拠出金等の算定等に関する政令」)等により、次により算定することとなっている。

一般被保険者に係る医療給付費−保険基盤安定繰入金(注2)の2分の1+前期高齢者納付金等(平成20年4月以降)=国庫負担対象費用額 国庫負担対象費用額×国の負担割合(注4)=交付額

(注2)
保険基盤安定繰入金  市町村が、一般被保険者の属する世帯のうち、低所得者層の負担の軽減を図るために減額した保険料又は保険税の総額について、当該市町村の一般会計から国民健康保険に関する特別会計に繰り入れた額
(注3)
前期高齢者納付金等  「高齢者の医療の確保に関する法律」(昭和57年法律第80号)の規定により社会保険診療報酬支払基金の高齢者医療制度関係業務に要する費用として納付する前期高齢者納付金及び後期高齢者支援金並びに介護納付金(前期高齢者交付金がある場合には、これを控除した額)
(注4)
国の負担割合  平成16年度までは40/100、17年度は36/100、18年度から23年度までは34/100、24年度以降は32/100

このうち、一般被保険者に係る医療給付費は、療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る被保険者の一部負担金に相当する額を控除した額と入院時食事療養費、療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額との合算額とされている。

ただし、届出が遅れるなどしたために退職被保険者等の資格が遡って確認された場合には、一般被保険者に係る医療給付費から、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った医療給付費を控除することとなっている。

また、都道府県又は市町村が、国の負担金等の交付を受けずに自らの負担で、年齢その他の事由により被保険者の全部又は一部について、その一部負担金に相当する額の全部又は一部を、当該被保険者に代わり医療機関等に支払う措置(以下「負担軽減措置」という。)を講じている場合がある。負担軽減措置の対象者の延べ人数が一定の規模以上の場合には、負担軽減措置の対象者に係る療養の給付に要する費用の額等に、被保険者の負担の軽減の度合いに応じた所定の率を乗じて減額調整(注5)を行うこととされている。

(注5)
減額調整  被保険者が医療機関等の窓口で支払う一部負担金を軽減させると、一般的に受診が増えて医療給付費の増加(波及増)が生ずるとされており、これにより増加した医療給付費を国庫負担対象費用額に含めると、他の市町村との公平を欠くことから、この増加分を減額するために調整すること

国庫負担金の交付手続については、①交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書を提出して、②これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査した上で厚生労働省に提出して、③厚生労働省はこれに基づき交付決定を行い国庫負担金を交付することとなっている。そして、④当該年度の終了後に、市町村は都道府県に事業実績報告書を提出して、⑤これを受理した都道府県は、その内容を審査した上で厚生労働省に提出して、⑥厚生労働省はこれに基づき交付額の確定を行うこととなっている。

本院は、37都道府県の375市区町村及び2広域連合において、18年度から23年度までの間に交付された国庫負担金について、会計実地検査を行った。その結果、22都道府県の92市区町及び2広域連合において、負担軽減措置の対象となっている医療給付費に係る減額調整(後掲297ページの「国民健康保険の療養給付費負担金及び財政調整交付金の交付額の算定に当たり、定額制の負担軽減措置を実施した市町村において減額調整率を適用する際に必要となる負担軽減措置対象者の負担割合の算定方法を具体的に示して都道府県を通じて市町村に対して周知することなどにより、その交付額の算定が適正なものとなるよう是正改善の処置を求めたもの」参照)を誤っていたり、遡及して退職被保険者等の資格を取得した者(以下「遡及退職被保険者等」という。)に係る遡及期間中の医療給付費を控除していなかったりなどして、国庫負担金交付額計308,835,422,982円のうち計1,124,185,043円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、上記の92市区町及び2広域連合において制度の理解が十分でなかったり事務処理が適切でなかったりしたこと、上記の22都道府県において事業実績報告書の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

埼玉県春日部市は、平成22年度の国庫負担金の実績報告に当たり、一般被保険者に係る医療給付費の算定において、遡及退職被保険者等について、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った21年度以前分の医療給付費の一部を控除していなかったため、国庫負担対象費用額を過大に算定していた。

その結果、国庫負担金が44,216,593円過大に交付されていた。

以上を部局等別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

部局等 交付先
(保険者)
年度 国庫負担対象費用額 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象費用額 不当と認める国庫負担金 摘要
千円 千円 千円 千円
(69) 北海道 札幌市 19、20、22 207,284,359 70,456,069 517,367 175,905 遡及退職被保険者等の遡及期間中の医療給付費を控除していなかったものなど
(70) 函館市 18〜21 50,929,429 17,278,297 138,557 47,110 負担軽減措置の対象とした医療給付費の減額調整を誤ったもの
(71) 小樽市 18〜21 22,447,468 7,349,849 98,167 33,379
(72) 室蘭市 18〜21 12,838,785 4,355,875 110,289 37,500
(73) 釧路市 18、21 13,026,762 4,425,618 10,056 3,420
(74) 北見市 18〜21 20,553,503 6,985,057 74,217 25,234
(75) 夕張市 18〜21 2,593,060 873,110 11,241 3,822
(76) 岩見沢市 18〜21 15,844,053 5,382,388 67,178 22,841
(77) 留萌市 19〜21 2,607,932 886,612 8,271 2,812
(78) 苫小牧市 18〜21 22,998,737 7,636,282 120,919 41,126
(79) 稚内市 18〜22 7,088,252 2,408,789 29,651 10,081 負担軽減措置の対象とした医療給付費の減額調整を誤ったものなど
(80) 美唄市 18〜21 5,383,305 1,825,945 14,300 4,863 負担軽減措置の対象とした医療給付費の減額調整を誤ったもの
(81) 芦別市 18 945,060 318,740 7,856 2,671
(82) 江別市 18〜21 14,190,325 4,817,453 20,330 6,913
(83) 赤平市 18、19、21 2,238,825 731,046 24,623 8,364 負担軽減措置の対象とした医療給付費の減額調整を誤ったもの
(84) 紋別市 18〜21 3,636,201 1,235,789 13,769 4,682
(85) 士別市 18〜21 3,818,137 1,295,770 11,275 3,833
(86) 名寄市 18、19、21 3,572,644 1,214,408 7,696 2,616
(87) 根室市 18、19、21 5,115,208 1,737,905 9,631 3,274
(88) 千歳市 18〜21 11,106,510 3,774,893 69,216 23,536
(89) 滝川市 18〜21 7,515,822 2,552,049 28,983 9,860
(90) 砂川市 18〜21 3,273,043 1,112,346 17,171 5,838
(91) 登別市 18、19 3,916,446 1,325,609 22,865 7,775
(92) 恵庭市 18、19、21 6,752,213 2,290,993 37,334 12,694
(93) 伊達市 18〜21 6,953,983 2,344,903 38,328 13,031
(94) 北広島市 18〜21 6,950,198 2,354,848 34,247 11,644
(95) 石狩市 18〜21 9,858,622 3,348,177 33,939 11,540
(96) 石狩郡当別町 18〜21 3,064,912 1,040,068 8,733 2,964
(97) 茅部郡森町 18〜21 5,073,934 1,716,688 15,730 5,348
(98) 二海郡八雲町 18〜21 5,360,344 1,821,899 13,390 4,553
(99) 余市郡仁木町 18〜20 875,882 284,602 8,646 2,939
(100) 余市郡余市町 18、20、21 3,234,380 1,099,712 23,169 7,877 負担軽減措置の対象とした医療給付費の減額調整を誤ったものなど
(101) 夕張郡栗山町 18〜21 2,594,001 880,847 16,979 5,773 負担軽減措置の対象とした医療給付費の減額調整を誤ったもの
(102) 苫前郡羽幌町 18〜21 1,712,066 582,175 7,608 2,588
(103) 枝幸郡枝幸町 18〜21 2,398,063 804,076 6,723 2,288
(104) 白老郡白老町 18〜21 4,106,372 1,365,938 8,555 2,907
(105) 虻田郡洞爺湖町 18〜21 2,328,691 766,100 10,714 3,642
(106) 勇払郡日高町 18〜21 3,319,671 1,128,288 23,675 8,049
(107) 日高郡新ひだか町 18、20、21 3,740,868 1,272,009 24,270 8,251
(108) 中川郡幕別町 18〜21 4,689,749 1,593,787 7,935 2,691
(109) 厚岸郡厚岸町 18〜21 2,822,558 958,584 8,119 2,760
(110) 野付郡別海町 18〜21 4,752,988 1,615,973 11,930 4,056
(111) 標津郡中標津町 18〜21 4,212,301 1,432,092 12,840 4,365
(112) 空知中部広域連合 18〜21 6,084,748 2,066,591 11,917 4,052
(113) 後志広域連合 21 3,318,467 1,116,728 13,042 4,434 一般被保険者の医療給付費を過大に算定していたもの
(114) 秋田県 潟上市 23 1,125,372 382,626 20,307 6,904 遡及退職被保険者等の遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(115) 茨城県 つくば市 21 7,215,004 2,453,059 20,897 7,105
(116) 茨城県 鹿嶋市 22 3,180,172 1,082,848 4,870 3,998 遡及退職被保険者等の医療給付費の控除額の計算を誤ったものなど
(117) 埼玉県 さいたま市 22 38,940,963 13,239,896 32,782 11,145 遡及退職被保険者等の遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(118) 川口市 22 19,589,700 6,660,498 42,329 14,391
(119) 加須市 22 4,449,650 1,512,878 9,414 3,231
(120) 春日部市 22 10,493,450 3,567,769 129,887 44,216
(121) 羽生市 22 1,964,774 668,023 8,234 2,891
(122) 吉川市 22 2,556,965 869,347 16,916 5,778
(123) 千葉県 松戸市 22 16,159,090 5,494,077 12,785 4,347
(124) 東京都 目黒区 22 10,604,129 3,605,462 26,848 9,150
(125) 板橋区 20 19,110,840 6,495,436 32,480 11,434
(126) 西多摩郡奥多摩町 22 413,192 140,487 19,859 6,723
(127) 長野県 松本市 21 7,392,730 2,508,012 20,617 7,010
(128) 岐阜県 加茂郡富加町 23 154,519 52,536 4,289 1,458 一般被保険者の医療給付費を過大に算定していたもの
(129) 静岡県 三島市 22 4,029,444 1,369,943 17,588 5,979 遡及退職被保険者等の遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(130) 島田市 22 3,260,680 1,110,765 (注6) 2,154 遡及退職被保険者等の医療給付費の控除額の計算を誤ったもの
(131) 富士市 22 8,845,233 3,007,345 7,379 2,509 遡及退職被保険者等の遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(132) 伊豆市 22 1,623,596 552,012 13,440 4,562
(133) 牧之原市 20 1,829,329 620,620 5,355 1,821
(134) 榛原郡吉田町 22 977,364 333,250 5,606 2,853 遡及退職被保険者等の遡及期間中の医療給付費を控除していなかったものなど
(135) 愛知県 春日井市 22 8,516,884 2,895,642 21,521 7,317 遡及退職被保険者等の遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(136) 安城市 22 4,894,422 1,664,101 18,265 6,202
(137) 清須市 23 2,049,952 697,020 5,611 1,908
(138) 滋賀県 大津市 22 9,570,557 3,253,986 52,834 17,963
(139) 米原市 22 1,059,871 360,356 6,847 2,352
(140) 蒲生郡安土町 21 377,886 128,489 8,740 2,971
(141) 大阪府 茨木市 21 9,140,590 3,107,852 16,855 5,730
(142) 大東市 22 5,438,995 1,849,258 7,702 2,618
(143) 泉南郡熊取町 22 1,690,396 574,734 18,301 6,229 一般被保険者の医療給付費を過大に算定していたものなど
(144) 兵庫県 加西市 21 1,748,453 594,438 16,842 4,953 遡及退職被保険者等の遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(145) 奈良県 大和高田市 22 2,765,354 940,218 10,830 3,682
(146) 岡山県 井原市 20 1,366,891 464,287 3,776 1,284
(147) 山口県 周南市 20 4,185,643 1,422,732 11,636 3,959
(148) 徳島県 小松島市 22 1,736,423 590,382 67,721 23,023 一般被保険者の医療給付費を過大に算定していたものなど
(149) 板野郡北島町 22 690,293 234,699 15,373 5,226 遡及退職被保険者等の遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(150) 香川県 高松市 18〜20 42,311,002 14,371,720 392,558 133,469 負担軽減措置の対象とした医療給付費の減額調整を誤ったもの
(151) 丸亀市 18〜20 11,719,215 3,982,722 70,632 24,014
(152) 坂出市 18〜20 6,464,797 2,187,683 29,343 9,976
(153) 善通寺市 18〜20 3,265,836 1,109,915 6,001 2,040
(154) 観音寺市 18〜20 8,303,545 2,822,373 86,425 29,389
(155) 佐賀県 武雄市 22 2,381,175 809,599 8,374 2,868 遡及退職被保険者等の遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(156) 藤津郡太良町 22 699,010 237,663 28,157 9,573
(157) 長崎県 長崎市 20〜22 64,642,776 21,971,638 28,758 9,777 負担軽減措置の対象とした医療給付費の減額調整を誤ったもの
(158) 鹿児島県 薩摩川内市 21 3,711,741 1,261,496 28,322 9,629 遡及退職被保険者等の遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(159) 日置市 21 2,373,338 771,534 6,289 2,343
(160) 沖縄県 浦添市 23 6,079,106 2,069,335 4,479 遡及退職被保険者等の医療給付費の控除額の計算を誤ったもの
(161) 中頭郡北谷町 23 1,576,212 535,912 9,820 3,339 一般被保険者の医療給付費を過大に算定していたもの
(162) 島尻郡与那原町 23 981,560 333,730 35,185 12,262 遡及退職被保険者等の遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(69)—(162)の計 910,787,040 308,835,422 3,276,102 1,124,185
(注6)
島田市及び浦添市は、集計を誤ったため、国庫負担金を過大に算定していたが、国庫負担対象費用額には誤りはなかったことから、本表の「不当と認める国庫負担対象費用額」欄には計数を掲げていない。
(注7)
平成22年3月21日以降は近江八幡市