厚生労働省は、社会福祉法人が設置する保育所(以下「民間保育所」という。)に保育の実施を委託した市町村に対して、その委託に要した費用(以下「運営費」という。)の一部を交付しており、民間保育所は運営費を運営費収入として受け入れて、その残余を積立預金又は当期末支払資金残高のいずれかに整理している。しかし、一部の民間保育所において、使用計画を作成せず、使途について具体的に説明できないまま多額の積立預金を保有していたり、過大な当期末支払資金残高を保有していたりする事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、積立預金を含めた資金について、民間保育所の経営状況等の実態を調査して、運営費の使途についての透明性の確保を図る観点から、資金の流れが分かるよう、会計状況が明確になるような仕組みを設けることについて、子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)等による新制度の施行までに検討するとともに、当期末支払資金残高のうち過大な保有分については、指導監査において是正措置を執らせるなどの具体的な指導方法等を明確に定めて、都道府県等に対して通知を発するなどして周知する処置を講ずるよう、厚生労働大臣に対して平成24年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示し及び改善の処置を要求した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、24年度に、新制度の設計を行うために民間保育所の経営状況等の実態を調査するとともに、24年11月に都道府県等に通知を発して、当期末支払資金残高のうち過大な保有分については、指導監査において指導を行い、それでもなお過大な保有となっている場合については、過大な保有が解消されるまでの間、交付する運営費を減額することとするなど、民間保育所に対する具体的な指導方法等を定めて周知する処置を講じていた。
そして、会計状況が明確になるような仕組みを設けることについては、内閣府に設置された子ども・子育て会議において、財務情報の公表を含めた民間保育所における会計処理の運営基準等を新制度の施行までに検討することとしている。