農林水産本省(以下「本省」という。)は、平成22年度に、日本産の農林水産物及び食品の輸出を拡大するなどのために、株式会社近鉄エクスプレス販売及び株式会社日ソ貿易(以下「2会社」という。)に、委託契約に基づき「平成22年度海外ビジネスネットワーク構築委託事業(ジャパンパビリオン設置(香港(Asia Fruit Logistica 2010)))」等6件の委託事業を実施させており、委託費計155,965,158円を支払っている。また、本省は、22、23両年度に、海外の有望市場において輸出志向のある農林漁業者等と現地需要者とのマッチング商談会を実施させるなどのために、農山漁村6次産業化対策事業関係補助金交付要綱(平成22年21総合第2075号農林水産事務次官依命通知。以下「交付要綱」という。)等に基づき、2会社に対して農山漁村6次産業化対策事業費補助金5件、計74,965,894円を交付している。
本省は、上記の委託契約及び交付要綱等に基づき、委託事業及び補助事業(以下、これらを合わせて「委託事業等」という。)が終了し、2会社から委託事業等の成果が記載された実績報告書等の提出を受けたときは、当該委託事業等が委託契約や補助金の交付決定の内容等に適合するものであるかどうかについて審査、確認等を行っている。その結果、適合すると認めたときは、委託契約で定めた委託費の限度額又は国庫補助金の交付決定額と2会社が委託事業等に要した経費の実支出額とのいずれか低い額を委託費の額又は国庫補助金の額として確定し、2会社に支払うこととしている。
本院は、合規性等の観点から、委託事業等に係る経費の算定は適正かなどに着眼して、本省及び2会社において、前記の委託事業6件及び補助事業5件を対象として、実績報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり、適正とは認められない事態が見受けられた。
2会社は、委託事業6件及び補助事業5件について、委託事業等に従事した者(以下「従事者」という。)ごとに社内での役職等を勘案して時間単価を設定し、これに従事者が委託事業等に従事した時間数を乗じて得た額を人件費として実績報告書に計上していた。
しかし、時間単価について、株式会社近鉄エクスプレス販売は、他社の事例を参考にしたなどとして、具体的な根拠に基づくことなく設定しており、株式会社日ソ貿易は、従事者に対して実際に支給した給与等の合計額を水増しした上で、この額を基に設定していた。また、2会社は、委託事業等に従事した時間数について、管理職の職位にあって時間外手当が支給されていない従事者が所定労働時間外に委託事業等に従事した時間数を含めるなどしていた。このため、実績報告書に計上された人件費の額は、実支出額より高い額となっていた。
株式会社日ソ貿易は、23年度に実施した補助事業1件において、ロシア連邦のスーパーマーケットで日本食フェアを開催したとして、店舗スペースの賃借、販売員の確保等を3業者に発注した費用計18,537,528円(以下「外注費」という。)を補助対象事業費として実績報告書に計上していた。
しかし、上記の外注費は、いずれも国庫補助金の交付決定前に締結した契約に係るものであり、国庫補助金の交付対象とならないものであった。
したがって、2会社が委託事業6件及び補助事業5件の従事者に対して実際に支給した給与等の合計額に基づき適正な人件費を算定するとともに、補助事業1件の外注費を補助対象事業費から除外するなどして適正な委託費及び国庫補助金の額を算定すると、計139,080,116円及び計42,185,223円となることから、前記の委託費支払額及び国庫補助金交付額との差額16,885,042円及び32,780,671円、計49,665,713円(株式会社近鉄エクスプレス販売21,874,962円、株式会社日ソ貿易27,790,751円)が過大となっていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2会社において委託事業等に係る適正な経費の算定等についての認識が欠けていたこと、本省において委託事業等の実績報告書等の審査及び確認並びに2会社に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。