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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第11 農林水産省 |
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  • 補助事業 の実施及び経理が不当と認められるもの |
  • (3) 工事の設計が適切でなかったなどのもの

木造建築物の設計が適切でなかったなどのもの[林野庁、2農政局](346)-(350)


11件 不当と認める国庫補助金 203,924,776円

(5件 不当と認める国庫補助金 96,669,509円)

部局等 補助事業者等 間接補助
事業者等
補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
千円 千円 千円 千円
(346) 近畿農政局 和歌山県 有田郡有田川町
(事業主体)
農山漁村活性化プロジェクト支援交付金 23 90,925 44,899 89,798 44,899
(347) 中国四国
農政局
岡山県 岡山市
(事業主体)
元気な地域づくり交付金 18 33,600 16,800 32,264 16,132
(348) 愛媛県 喜多郡内子町
(事業主体)
19、20 55,046 27,346 36,597 18,298
(349) 林野庁 富山県 特定非営利活動法人無漏路
(事業主体)
森林整備加速化・林業再生 22 25,200 10,000 23,732 9,417
(350) 愛媛県 西条市
藤岡建設
株式会社
(事業主体)
21、22 134,289 63,947 15,844 7,922
(346)—(350)の計 339,060 162,992 198,236 96,669

これらの交付金事業等は、1市2町2民間事業者(以下「5事業主体」という。)が、柱、土台、筋交いなどの部材で骨組みを構成する木造軸組工法により木造施設(以下「木造建築物」という。)の建築等を実施したものである。

木造建築物は、建築基準法(昭和25年法律第201号)等に基づき、地震や風により生ずる水平力に抵抗するため、柱と柱との間に筋交いを設置した耐力壁を張り間方向(注1)及び桁行方向(注1)に配置し、設計計算上の耐力壁の長さが水平力に対して必要な長さをそれぞれ上回るなど設計計算上安全な構造のものでなければならないとされている。そして、耐力壁を構成する柱については、水平力により生ずる引抜き力に抵抗するため、同法等に基づく告示「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」(平成12年建設省告示第1460号。以下「告示」という。)に基づき、筋交いの種類や柱の位置に応じて定められている金物等(以下「接合金物」という。)から適合するものを用いて梁、土台、基礎コンクリート等と接合することとされている(参考図参照)。

しかし、5事業主体において、誤って引抜き力に対する耐力が不足している接合金物により柱と土台等とを接合することとして設計し、これにより施工したり、設計図面に使用すべき接合金物についての記載がなく、施工業者が梁や土台等との接合箇所の一部に接合金物を使用せずに施工したりするなどしていた事態が見受けられた。

このように、接合方法が適切でない柱で構成された壁は耐力壁とは認められないことなどから、張り間方向及び桁行方向について、改めて有効な設計計算上の耐力壁の長さを算出すると、水平力に対して必要な長さをそれぞれ下回っていて、木造建築物の所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金等相当額計96,669,509円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、5事業主体において、設計図書を作成する際の確認が十分でなかったり、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのにこれに対する検査が十分でなかったりするなどしていたこと、4県及び西条市において5事業主体に対する指導及び監督が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

有田郡有田川町は、同町清水地区において、農山漁村と都市との地域間交流を促進するため、地域間交流の拠点となる施設として、体験・作業棟を9棟新築した。

しかし、告示によると、出隅の柱(注2)にたすき掛け筋交いを取り付ける場合には、15kN用引寄金物、アンカーボルト等を用いて柱と基礎コンクリート等とを接合する必要があるのに、同町は、誤って引抜き力に対する耐力が不足している山形プレート等を用いて柱と土台とを接合するなどして設計し、これにより施工していて、柱と基礎コンクリートとを接合していないなどしており、9棟の柱の接合方法が適切でなかった。

そこで、9棟のそれぞれの張り間方向及び桁行方向について、改めて有効な設計計算上の耐力壁の長さを算出すると、4棟において張り間方向及び桁行方向の両方向で0mとなり、耐力壁として機能している壁が皆無の状態となっており、また、5棟において張り間方向又は桁行方向で0mとなっていて、全棟において、張り間方向又は桁行方向で水平力に対して必要な長さを大幅に下回っていた。

したがって、本件施設9棟(工事費相当額計89,798,201円、交付金相当額計44,899,100円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっていた。

注(1)
 張り間方向・桁行方向  一般的に建物の短辺方向を張り間方向といい、長辺方向を桁行方向という。
注(2)
 出隅の柱  建物の外側の隅の柱

(参考図)

耐力壁の概念図。接合金物の概念図、引抜き力の概念図