(1件 不当と認める国庫補助金 10,851,100円)
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助 事業者等 |
補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(353) | 農林水産本省、九州農政局 | 大分県(事業主体) | — | 農山漁村地域整備交付金等2事業 | 22 | 33,852 | 16,926 | 21,702 | 10,851 |
この交付金事業等は、大分県が、宇佐市安心院町筌ノ口地内において、農道を新設するために、切土法面保護工として植生工、モルタル吹付工等を実施したものである。このうち、植生工(3,722.6㎡)は、切土法面に植物を繁茂させることによって侵食等を防止するなどのために施工したものである(参考図参照)。
同県は、「道路土工 切土工・斜面安定工指針」(社団法人日本道路協会編。以下「指針」という。)等に基づき植生工の設計及び施工後の管理を行っている。指針によれば、植生工の設計に当たっては、現地の諸条件や動物生息状況等の周辺環境を把握して、施工後の維持管理を考慮し、植物等の材料及び工法を選定するとともに、施工後の管理に当たっては、植物の繁茂、生育基盤の流出等について点検を実施し、生育不良等の不具合に対しては、原因を究明して適切な処置を施すこととされている。
また、同県は、同県が策定した「特定鳥獣(ニホンジカ)保護管理計画」に従って鹿による被害防止対策として防護ネットの設置等を実施してきており、同計画によれば本件工事の施工箇所周辺は鹿の生息数が多い地域となっている。
そして、同県は、本件植生工については、生チップに種子等を混合した植生基材を法面に吹き付ける方法(厚さ3㎝〜5㎝、吹付け厚さの中間部に金網を設置)により施工していた。
しかし、本件植生工における植物の生育状況を確認したところ、前記のとおり施工箇所周辺は鹿の生息数が多いこと、また、同県は近隣におけるその被害の発生を把握していたのに設計では被害を防止するための防護ネットを設置するなどの工法を選択していなかったことのため、植物が食害を受けたり植生基材が踏み荒らされていたりなどしていて、植生工のほとんどの箇所(3,722.6㎡のうち3,339.6㎡)において植物が十分生育していないなどの状況が見受けられた。
また、同県は、本件植生工の施工直後に鹿の侵入を確認するなどしていたのに、施工後の管理において、指針に従った点検を行っておらず、生じた不具合に対する原因究明や適切な処置を実施していなかった。
したがって、本件植生工3,722.6㎡(工事費相当額21,702,202円)は、設計及び管理が適切でなかったため、切土法面に植物を繁茂させることによって侵食等を防止するなどの効果が期待できないものとなっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る交付金等相当額10,851,100円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、植生工の設計及び管理についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)