ページトップ
  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第11 農林水産省 |
  • 不当事項 |
  • 補助金 |
  • 補助事業 の実施及び経理が不当と認められるもの |
  • (3) 工事の設計が適切でなかったなどのもの

管水路の設計が適切でなかったもの[中国四国農政局](355)


(1件 不当と認める国庫補助金 2,344,825円)

部局等 補助事業者等 間接補助
事業者等
補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
千円 千円 千円 千円
(355) 中国四国農政局 山口県
(事業主体)
中山間地域総合整備 19、20 76,415 42,028 4,263 2,344

この補助事業は、山口県が、岩国市山代の郷地区において、水路内への土砂等の流入を防止することなどを目的として、市道に沿って設置された開水路と暗きょから成る既存の用水路(延長717.8m)を管水路に改修したものである。このうち、既存の用水路が開水路であった区間(延長568.5m。以下「開水路区間」という。)については、水路内に高密度ポリエチレン管(径630.0㎜、管厚30.0㎜。以下「ポリエチレン管」という。)を開水路内に敷設して、開水路の側壁天端まで土砂を埋めるなどして管水路に改修したものである(参考図参照)。

同県は、開水路区間の管水路の設計に当たり、ポリエチレン管を市道の幅員外となる開水路内に敷設することから、ポリエチレン管には自動車荷重が作用しないとして、管水路の応力計算を行わず、これにより施工していた。

しかし、現地の状況を確認したところ、開水路区間の一部(延長36.6m)については、車両が市道に隣接する民地に出入りする際に管水路の上を横断しており、ポリエチレン管に自動車荷重が作用する状況となっていた。このように自動車荷重が作用する場合は、「下水道用ポリエチレン管技術資料」(下水道用ポリエチレン管・継手協会監修)によると、ポリエチレン管に生ずる曲げモーメント(注1)により発生する曲げ応力度(注2)が管材の許容曲げ応力度(注2)を下回ることを確認することとされている。

そこで、自動車荷重を考慮して応力計算を行ったところ、ポリエチレン管の頂部に生ずる曲げ応力度は9.1N/mとなり、ポリエチレン管の許容曲げ応力度6.4N/mを大幅に上回っていて、応力計算上安全であるとされる範囲に収まっていなかった。

したがって、上記開水路区間の一部に敷設された管水路(工事費相当額4,263,319円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額2,344,825円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、管水路の設計に当たって、現地の状況の把握が十分でなく、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。

注(1)
 曲げモーメント  外力が材に作用し、これを曲げようとする力の大きさ
注(2)
 曲げ応力度・許容曲げ応力度  「曲げ応力度」とは、材が曲げられたとき、曲がった内側に生ずる圧縮力又は外側に生ずる引張力の単位面積当たりの大きさをいい、その数値が設計上許される上限を「許容曲げ応力度」という。

(参考図)

開水路区間の管水路概念図