農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事務所(以下「筑波事務所」という。)は、筑波農林研究団地における研究業務に必要な研究用ほ場用水を確保するため、農林水産省農林水産技術会議事務局(以下「事務局」という。)が土浦市外十五ヶ町村土地改良区(以下「土地改良区」という。)との間で昭和49年8月に締結した協定書(以下「協定書」という。)に基づき、土地改良区が保有する施設を利用している。
協定書によると、事務局は、上記研究用ほ場用水の取水のため、土地改良区が保有する施設のうち導水路、揚水機場等を利用することができるとされている。そして、これらの施設の運転及び管理については土地改良区が行うものとされており、事務局は、毎年度、揚水機場の運転経費(運転者等の人件費、光熱水費及びその他の運転諸経費。以下同じ。)及びこれらの施設の管理経費について、別に定める割合によりその一部を負担するものとされている(以下、この協定書に基づき筑波事務所が負担する経費を「負担金」という。)。
事務局は、協定書に基づき、土地改良区との間で52年6月及び55年3月に覚書(昭和56年1月一部改訂。以下「覚書」という。)を取り交わしている。覚書によると、年間の負担金の額については、次のとおり算定することとされている。
そして、筑波事務所は、毎年度、上記の覚書に基づき土地改良区が算定した負担金の額等について文書により通知されており、その算定内容、支払内訳等を確認した上で、土地改良区に対して負担金を支払っている。そして、筑波事務所が平成19年度から23年度までの5か年度に支払った負担金の額は計64,978,100円となっている。
本院は、合規性等の観点から、負担金の支払額は適切なものとなっているかなどに着眼して、筑波事務所において、上記負担金の支払額を対象として、協定書、覚書等の関係書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、筑波事務所が19年度から23年度までの間に土地改良区から負担金の額等について通知された文書の支払内訳には、各年度とも、前年度の運転経費の合計額に導水路の草刈り、排水管補修等の経費(以下「導水路等の維持管理経費」という。)が含まれており、その額は5か年度で計27,491,649円となっていた。
しかし、導水路等の維持管理経費は、揚水機場の運転に直接関係するものではなく、管理経費に当たるものであることから、これを前年度の運転経費に含めて負担金の額を算定していたのは適切でないと認められる。
したがって、負担金の額の算定の基礎としていた前年度の運転経費の合計額から導水路等の維持管理経費を差し引いて、19年度から23年度までの5か年度における適正な負担金の額を算定すると計57,213,300円となり、前記の負担金の支払額計64,978,100円との差額7,764,800円が過大に支払われていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、筑波事務所において、覚書の内容等についての理解が十分でなく、負担金の額の算定に対する確認が十分でなかったことなどによると認められる。