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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第11 農林水産省 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1) へい殺畜等手当金等の交付に係る家畜の評価額の決定に当たり、算定方法等を確認できる具体的な資料を提出させることにより、都道府県が算定した家畜の評価額の妥当性を十分に確認できるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)農林水産本省(項)食の安全・消費者の信頼確保対策費
部局等
農林水産本省
制度の根拠
(1) 家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)
(2) 口蹄疫対策特別措置法(平成22年法律第44号)
制度の概要
(1) 家畜の伝染性疾病の発生を予防し、まん延を防止するための防疫措置を実施する制度
(2) 平成22年4月以降において発生が確認された口蹄疫に起因して生じた事態に対処するため、口蹄疫のまん延を防止するための防疫措置を実施する制度
疑似患畜及びワクチン接種家畜に係る評価額等
(1) 291億8274万余円(平成22年度)
(2) 239億9409万余円(平成22年度) 計 531億7683万余円
上記に係るへい殺畜等手当金及び口蹄疫まん延防止対策事業費負担金
(1) 233億4611万余円
(2) 225億4742万余円
計 458億9353万余円
統計報告に基づく産み落とし価格を用いた場合との評価額の開差額
(1) 3億8572万余円(平成22年度)
(2) 1億0690万余円(平成22年度)
計 4億9263万余円
上記に係るへい殺畜等手当金相当額及び口蹄疫まん延防止対策事業費負担金相当額
(1) 3億0858万円
(2) 1億0046万円
計 4億0904万円

1 制度の概要

(1) 宮崎県で発生した口蹄疫に対する防疫措置の概要

宮崎県は、平成22年4月20日以降、家畜伝染病である口蹄疫に感染している疑いがある豚、牛等(以下「疑似患畜」という。)が県内で多数確認されたことから、家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号。以下「家伝法」という。)等に基づき、防疫措置として、同日から、発生農場を消毒するとともに、当該疑似患畜を隔離して移動を制限するなどした上で、これらの殺処分及び埋却を実施した。

そして、国は、同年5月19日、発生農場を中心とした半径10㎞圏内の区域で飼養されている疑似患畜に該当しない豚、牛等について、殺処分を実施することとし、これを前提として口蹄疫の発症を抑制するためのワクチン接種を行うことを決定した(以下、ワクチンを接種した豚、牛等を「ワクチン接種家畜」という。)。これを受けて、同県は、同月22日からワクチン接種を開始し、更に6月4日に施行された口蹄疫対策特別措置法(平成22年法律第44号。以下「特措法」という。)に基づき、同日にワクチン接種家畜の殺処分の勧告を行い、翌5日から殺処分及び埋却を実施した。

(2) 家伝法、特措法等による国の負担

家伝法等によると、国は、殺処分された疑似患畜の所有者に対して、疑似患畜となる前における当該家畜の評価額の5分の4をへい殺畜等手当金(以下「手当金」という。)として交付することとされている。当該評価額は、農林水産大臣が決定することとなっており、殺処分された疑似患畜の所有者から農林水産大臣に手当金の交付申請書が提出される際には、当該家畜の評価額に関する関係都道府県知事の意見を記載した動物評価意見具申書が添付されることとなっている。

一方、特措法等によると、都道府県知事が、殺処分されたワクチン接種家畜の評価額を決定し、当該家畜の所有者にその額を補填金として交付することとされていた。この場合、国は、都道府県知事に対し、交付した補填金の全部又は一部を口蹄疫まん延防止対策事業費負担金(以下「負担金」という。)として交付することとされていた。そして、負担金の交付を受けるに当たり、都道府県知事は、実績報告書に動物評価報告書を添付することとなっていた。

(3) 家伝法等の改正

農林水産省は、前記のとおり、特措法等に基づいて、口蹄疫に対する防疫措置として、ワクチン接種家畜の殺処分及び埋却、負担金の交付等を行うこととしていたが、23年4月に、この内容を取り込み、家伝法を改正した。

改正された家伝法等によると、農林水産大臣は、疑似患畜の殺処分等のみでは口蹄疫のまん延の防止が困難であり、疑似患畜等以外の家畜であっても殺処分することがやむを得ない場合には、当該家畜を指定家畜として指定することができることとされ、指定家畜が殺処分されたために損失を受けた当該指定家畜の所有者にその評価額を補償金として交付することとされている。そして、当該評価額は、手当金と同様、農林水産大臣が決定することとなっており、指定家畜の所有者から交付申請書が提出される際には、関係都道府県知事の意見を記載した指定家畜評価意見具申書が添付されることとなっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、家畜の評価額は適切に算定されているかなどに着眼して、農林水産本省及び宮崎県において、22年度に手当金及び負担金の交付対象となった疑似患畜の豚172,494頭、牛等37,130頭に係る評価額等計291億8274万余円(手当金計233億4611万余円)及びワクチン接種家畜の豚54,688頭、牛等32,406頭に係る補填金等計239億9409万余円(負担金計225億4742万余円)を対象に、交付申請書、動物評価意見具申書、動物評価報告書等を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

宮崎県は、「口蹄疫に伴う手当金(奨励金)に係る家畜の評価方法について」を22年6月に定めている。そして、これに基づいて、肥育豚、繁殖雌豚等(以下、これらを合わせて「肥育豚等」という。)のうち、生まれた農場でそのまま育成された肥育豚等の評価額を、次の算定式のとおり、生まれた時点の評価額である産み落とし価格(以下、単に「産み落とし価格」という。)3,600円と生産費等としての1日当たり加算額182円に飼養日数を乗じた額との合計額とするなどしていた。

生まれた農場でそのまま育成された肥育豚等の評価額

そして、上記のうち1日当たり加算額182円については、次の算定式のとおり、農林水産省の農業経営統計調査報告(平成20年度)(以下「統計報告」という。)等における全算入生産費(注)等36,170円から、統計報告における繁殖雌豚費、種雄豚費等を合計して算出した産み落とし価格884円を控除するなどして算定していた。

1日当たり加算額182円について

(注)
 全算入生産費  家畜の所有者が肥育豚等を出荷するまでに負担することとなる繁殖雌豚費、種雄豚費、飼料費等の全ての生産費の合計額

また、産み落とし価格3,600円については、生まれた農場でそのまま育成された肥育豚等が子豚の家畜市場における取引を前提とされていないのに、次の算定式のとおり、宮崎県内の家畜市場における子豚の平均取引価格17,255円、上記で算定した1日当たり加算額182円等を用いて算定していた。

産み落とし価格3,600円について

宮崎県は、前記の1日当たり加算額182円、産み落とし価格3,600円等を用いて評価額を算定し、疑似患畜の肥育豚等については動物評価意見具申書を交付申請書に、また、ワクチン接種家畜の肥育豚等については動物評価報告書を実績報告書にそれぞれ添付して農林水産省に提出していた。そして、農林水産省は、宮崎県が算定した評価額を基に手当金及び負担金の額を決定していた。

しかし、前記のとおり、宮崎県は、1日当たり加算額の算定の際に統計報告を基にした産み落とし価格884円を用いているのに、評価額の算定の際には、生まれた農場でそのまま育成された肥育豚等でありながら家畜市場における子豚の平均取引価格等を基に算定した産み落とし価格3,600円を用いていて、農林水産省は、これらの算定方法等が示されていなかったことから、宮崎県が算定した評価額が市場価格とかい離していないなどとして、十分に確認しないまま手当金及び負担金の額を決定していた。

なお、農林水産省は、23年6月、へい殺畜等手当金等交付規程(昭和32年2月農林省告示)において、動物評価意見具申書等に、家畜の評価額の算定根拠を記載した資料を添付することとしたが、どのような資料を添付するかを具体的に明示していなかった。

したがって、農林水産省において、産み落とし価格等の算定方法等を十分確認しないまま、都道府県が算定した家畜の評価額を基に手当金及び補償金の額の決定がなされる事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(統計報告に基づく産み落とし価格を用いた場合との開差額)

前記の検査の対象とした豚のうち、家畜市場において取引された子豚を育成した豚等を除き、評価額の算定に当たり、産み落とし価格3,600円が用いられた疑似患畜の肥育豚等142,410頭(評価額計52億7812万余円)及びワクチン接種家畜の肥育豚等39,437頭(評価額計17億4144万余円)について、統計報告に基づく産み落とし価格884円を用いて評価額を試算すると、疑似患畜は計48億9240万余円、ワクチン接種家畜は計16億3453万余円となり、それぞれ計3億8572万余円(手当金相当額計3億0858万余円)及び計1億0690万余円(負担金相当額計1億0046万余円)の開差が生ずることとなる。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、農林水産省において、家畜の評価額の算定根拠となる産み落とし価格等の算定方法等を確認し、評価額の妥当性を十分確認するための資料を提出させていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省は、25年8月に、産み落とし価格等の算定方法等を確認することにより、同省において都道府県が算定した家畜の評価額の妥当性を十分に確認できるよう、評価額の算定の考え方、計算方法等が分かる資料を提出させることとする関係通知の改正を実施するとともに、これを都道府県に周知する処置を講じた。