林野庁は、森林整備等のため、地方公共団体、森林組合等が行う林道、林業専用道及び作業道(以下「林道等」という。)の開設等の工事に係る経費を補助の対象として、国庫補助金を交付している。
林道等の開設等の工事に当たっては、交通荷重を安定的に支持するなどのため、一部の作業道を除き、砕石等を敷設する路盤工を施工している。そして、路面にアスファルトコンクリート等を施工せずに砂利仕上げとする林道等(以下「砂利林道等」という。)については、砕石等を敷設する上層路盤(上層路盤と下層路盤の区分のない路盤を含む。以下同じ。)が路面となっている。
路盤工に使用される砕石には、天然の原石を破砕して一定の粒径以下に製造するもの(以下「新材砕石」という。)と、コンクリート構造物の解体等により発生するコンクリート塊等の特定建設資材の廃棄物を再資源化施設において破砕し、不純物を除去することなどにより再資源化して製造するもの(以下「再生砕石」という。)がある。
「特定建設資材に係る分別解体等及び特定建設資材廃棄物の再資源化等の促進等に関する基本方針」(平成13年農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省告示第1号)によると、国の直轄事業では、道路等の舗装の路盤材等の調達に当たり、当該工事現場から40㎞の範囲内で再生砕石等を入手できる場合には、利用される用途に要求される品質等を考慮した上で、これを利用することを原則とするなどとされている。また、その他の公共事業においても、これに準じた取組を行う必要があるとされている。そして、林野庁においても、平成17年に都道府県に対して事務連絡を発し、林道等の開設等の工事においては、再生砕石等について、その経済性、品質、供給実態等にも配慮しつつ、これまで以上に積極的な活用を図るように促している。
近年、再生砕石の製造量は年間3000万t以上で安定的に推移しており、一般的には、その価格は新材砕石よりも安価となっている。林道等の開設工事等に関する技術基準について解説した林道必携(日本林道協会編)等によると、林道等の路盤工には、再生砕石を用いることができるとされている。また、「コンクリート副産物の再利用に関する用途別暫定品質基準(案)について」(平成6年建設省技調発第88号)等によると、公共工事の路盤工に使用する再生砕石には新材砕石と同等の品質基準が定められており、その製造に当たっては、鉄くず等の異物が混入しないようにすることなどとされている。そして、下層路盤工については、多くの県等の設計基準等において原則として再生砕石を使用する旨が明記されている。また、多くの林道等の路盤工については、実際の施工において再生砕石が使用されている状況となっている。
検査したところ、13府県(注2)では、計1,061件の工事のうち計905件において、上層路盤工に再生砕石が使用されており、再生砕石の積極的な活用が図られていた。これに対して、4道県(注3)では、計1,030件の工事のうち、上層路盤工に新材砕石を使用していた工事が計785件(工事費計114億7024万余円、国庫補助金相当額計77億6491万余円)見受けられた。
また、13府県の24年度の設計基準等には、砂利林道等の上層路盤工に再生砕石を使用する旨が明記されるなどしていたのに対して、4道県の設計基準等にはその旨が明記されていなかった。そして、上記の785件の工事のうち、再資源化施設における在庫不足や工事現場から40㎞の範囲内に再資源化施設がないため再生砕石を使用することができなかったもの(296件)及び新材砕石の方が安価又は同価格であったもの(50件)を除く、75事業主体が施工した439件の工事において上層路盤工に再生砕石を使用していなかった理由について、事業主体は、道県の設計基準等に再生砕石を使用する旨が明記されていないためなどとしていた。
そこで、4道県において、設計基準等にこのような規定等を設けていない理由について確認したところ、再生砕石は品質面で問題があるなどとしていた。
しかし、前記のとおり、林道等の路盤工には路盤材として再生砕石を使用できるとされており、また、再生砕石には新材砕石と同等の品質基準が定められていて、その製造に当たっては、鉄くず等の異物が混入しないようにするなどとされている。そして、会計実地検査の対象とした17道府県における上層路盤工に再生砕石を使用していた工事においては、構造や品質について特段の問題が生じているものは見受けられなかった。
このように、再生砕石の積極的な活用が求められているのに、上層路盤工に再生砕石を使用することについて十分検討しないまま新材砕石を使用していて、環境に配慮しつつ経済的な設計としていない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
前記439件の工事の上層路盤工の路盤材費計3億0018万余円について、新材砕石ではなく再生砕石を使用することとしてその積算額を修正計算すると計2億3737万余円となり、路盤材費を計約6280万円(国庫補助金相当額計約4790万円)低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、林野庁において、都道府県に対して再生砕石等の積極的な活用について事務連絡を発していたものの、砂利林道等の上層路盤工における積極的な活用については周知徹底が十分でなかったこと、4道県において、上層路盤工に再生砕石を使用する旨を設計基準等に明記しておらず、その積極的な活用についての検討が十分でなかったこと、また、事業主体に対する指導も十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、林野庁は、25年9月に都道府県に対して通知を発して、砂利林道等の路盤工等に再生砕石を使用する旨を設計基準等に明記するなどして、品質等を考慮した上で、環境、経済性等に配慮しつつ再生砕石を積極的に活用するとともに、事業主体にも周知徹底を図るなどの処置を講じた。