水産庁は、平成23年度から、水産関係資金無利子化事業実施要綱(平成23年5月2日23水漁第319号農林水産事務次官依命通知。23年11月20日までは漁業関係資金無利子化事業実施要綱。以下「実施要綱」という。)等に基づき、全国漁業協同組合連合会(以下「全漁連」という。)が実施する水産関係資金無利子化事業(23年11月20日までは漁業関係資金無利子化事業。以下「無利子化事業」という。)について、水産関係資金無利子化事業費補助金(23年11月20日までは漁業関係資金無利子化事業費補助金)を交付している。
無利子化事業は、23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の被災漁業者等が漁船の復旧等に必要な資金を借り入れる際に、その負担を軽減させることを目的として、借受者である被災漁業者等が支払った利子について、利子助成金を交付するものである。
実施要綱等によると、無利子化事業の対象となる資金は、株式会社日本政策金融公庫(以下「公庫」という。)が貸し付ける各種の資金(注)(以下「公庫資金」という。)等とされていて、全漁連は、これらの資金の償還終了時までの最長18年間、利率2%に相当する利子の額を上限として借受者に利子助成金を交付することとされている。
23、24両年度の公庫資金等の貸付け計2,384件に対する利子助成金の交付実績は、23年度3734万余円(国庫補助金同額)、24年度計2億8339万余円(同)、計3億2074万余円(同)となっている。
公庫資金の貸付けには、公庫が借受者に対して直接に資金を貸し付ける場合(以下「直接貸付」という。)及び公庫が貸付事務を他の融資機関(以下「受託金融機関」という。)に委託して資金を貸し付ける場合(以下「委託貸付」という。)の二つがあり、いずれにおいても、資金の払出しは原則として全額一括して行うこととされている。ただし、直接貸付においては、漁船の建造等の設備購入等を対象とする設備資金について、貸付対象事業の完成予定日が貸付実行日から6か月を超える場合であって、特に必要と認められるときは、資金を80%と20%に分割して払い出すことができるとされている。また、委託貸付においては、貸付対象事業の完成予定日が貸付実行日から6か月を超える場合には、資金を80%と20%に分割して払い出すことができるとされており、さらに、受託金融機関が特に必要と認める場合に限り、貸付対象事業の完成予定時期にかかわらず、必要と認められる割合及び回数により資金を分割して払い出すことができるとされている。
本院は、経済性等の観点から、資金の払出し方法が適切なものとなっていて利子助成金の交付額が経済的なものになっているかなどに着眼し、水産本庁及び全漁連において、23、24両年度に交付された利子助成金のうち、1件当たりの貸付額が多額となる公庫資金による漁船の建造等に係る設備資金の貸付け35件(貸付額計120億8870万余円)に対する利子助成金(利子助成金交付額計1億0949万余円)を対象として、交付申請書、実績報告書等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
すなわち、上記35件のうち25件は、前記の資金を分割して払い出すことができるとされる場合に該当するものであった。そして、この25件のうち、造船代金等(以下「代金」という。)の支払回数が1回であって分割払出しになじまないなどの8件を除いた17件について、借入申込書の添付書類である事業費支払予定表により、代金の支払時期を確認したところ、資金の払出日から初回の代金支払までに2日から132日までとなっていた。また、代金の支払回数は3回から12回までとなっていたが、初回の支払額が支払総額の80%を下回る9%から50%までとなっていたり、初回の支払から最終回の支払までに3か月から12か月までと比較的長期間を要することとなっていたりしていた。
したがって、上記17件の貸付けに当たって、代金の支払時期に応じて資金を払い出すこととすれば、借受者が支払う利子の額が節減され、利子助成金交付額を節減できたと認められた。
このように、利子助成金交付額を節減できたのに、これを考慮した払出しが行われていない資金に係る利子助成金が交付されている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
前記の17件について、事業費支払予定表により把握した代金の支払時期等を基に、直接貸付13件については、初回支払日の前日に資金の80%を払い出し、残りの20%は、80%を超える資金が必要になる日の前日に払い出すこととし、また、委託貸付4件については、代金の支払時期に応じて、必要の都度必要な額を払い出すこととして利子助成金を算定すると、23、24両年度に交付した利子助成金6656万余円は5464万余円となり、利子助成金を1191万余円節減でき、これに係る国庫補助金同額を節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、全漁連、公庫及び受託金融機関において、借受者への資金の払出しに当たり、借受者による代金の支払時期に応じた払出しを行うことにより利子助成金交付額ひいては国庫補助金交付額を節減させることに対する理解が十分でなかったことにもよるが、水産庁において、全漁連に対する指導が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、水産庁は、25年7月に、全漁連に対して通知を発し、融資機関が借受者の支払時期に応じて資金を適切に払い出すことにより利子助成金交付額及びこれに係る国庫補助金交付額を節減することとなるよう、全漁連を通じて融資機関に周知する処置を講じた。