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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第11 農林水産省 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(7) 政府所有米穀の保管経費について、買入れに係る引渡日を各期の初日に設定することにより、支払額に見合った保管日数が確保されるよう改善させたもの


会計名及び科目
食料安定供給特別会計(米管理勘定) (項)米管理費
部局等
農林水産本省
契約名
政府所有米穀の販売等業務委託
契約の概要
政府所有米穀の販売、保管、運送等の業務を行わせるもの
契約の相手方
4民間会社等
契約
平成22年7月、23年8月、24年8月 計3件(一般競争契約2件、随意契約1件)
上記契約により買入れを行った政府所有米穀に係る保管経費
27億3372万余円(平成23、24両年度)
上記のうち支払額に見合った保管日数が確保されていなかった保管経費
5708万円(平成23、24両年度)

1 政府所有米穀等の概要

(1) 備蓄制度等の概要

農林水産省は、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成6年法律第113号)第2条の規定等に基づき、米穀の生産量の減少によりその供給が不足する事態に備えるために、100万t程度の国内産米穀を所有しており、毎年20万t程度の国内産米穀の買入れを行って、原則として、5年間程度備蓄した後、飼料用等の非主食用として販売することとしている(以下、これらの国内産米穀を「政府所有米穀」という。)。

同省は、政府所有米穀の販売、保管、運送等の業務(以下「販売等業務」という。)について、平成22年10月以降、包括的に民間会社等に委託することにより実施している。そして、同省は、23、24両年度に、それぞれ3民間会社等と政府所有米穀の販売等業務に係る委託契約(以下「委託契約」という。)を締結し、民間会社等は、政府所有米穀の保管業務を倉庫業者に再委託するなどして、販売等業務を実施している。

委託契約によると、政府所有米穀の保管業務の開始時期は、米穀が同省に引き渡された日(以下「引渡日」という。)とされている。そして、同省は、1か月を1日から10日まで、11日から20日まで、21日から月末までの3期に区分して期ごとに保管経費を計算することになっている倉庫業者の商慣行を踏まえ、各期における政府所有米穀の期末在庫数量に、1期分の保管単価(100㎏当たり22.48円から28.77円まで)を乗ずるなどして保管経費を算定し、毎月民間会社等に支払っている。

(2) 政府所有米穀の買入れ

同省は、「米穀の買入れ・販売等に関する基本要領」(平成21年21総食第113号総合食料局長通知)等に基づき、政府所有米穀の買入れに係る契約(以下「買入契約」という。)における、売渡人から同省の委託を受けた民間会社等への米穀の引渡しについて、以下の手順で行うこととしている。

  • ① 売渡人は、米穀の引渡しを行おうとするときは、買入契約で定められた買入予定数量及び引渡期間の範囲内で、引渡数量、引渡予定日等を記載した国内産米穀引渡申込書及び売渡人から委託を受けた第三者が数量等について確認した旨の引渡米穀数量等確認書(以下、これらを「引渡申込書等」という。)を、買入契約で定められた期日(23、24両年度の場合、引渡予定日の5日前等)までに同省に提出する。
  • ② 同省の検収官は、引渡申込書等に記載された引渡予定日までに、会計法(昭和22年法律第35号)第29条の11第2項の規定による検査(以下「買入検収」という。)を行う。
  • ③ 買入検収の結果、検収官が合格と判断した後、売渡人から同省への米穀の引渡しが行われる。
  • ④ 引渡しをもって、米穀の所有権が売渡人から同省に移転して政府所有米穀となり、引渡日から、委託を受けた民間会社等による保管業務が開始される。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、効率性等の観点から、委託契約に基づく政府所有米穀の保管について、備蓄の目的が達成されるように、保管経費の支払額に見合った保管日数が確保されているかなどに着眼して、農林水産本省、4民間会社等において、23、24両年度に同省が買入れを行った政府所有米穀の保管経費の支払額23年度6億3066万余円、24年度21億0305万余円、計27億3372万余円を対象として、支払証拠書類等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

すなわち、同省は、全国農業協同組合連合会等の売渡人と買入契約を締結し、売渡人に対して引渡予定日の5日前までに引渡申込書等を提出させ、売渡人が引渡しを希望する引渡予定日に間に合うように買入検収の日を決定するなどして、引渡しを受けていた。

そして、各期の何日目に引渡しが行われたかについて、引渡日ごとの引渡数量等を集計すると、表のとおり、23年度に買い入れた207,450t全量の引渡日が、各期の初日以外となっていた。特に、9日目(41,798t)、10日目(102,817t)及び11日目(注)(42,778t)が引渡日となっているものが、全量のうち187,394t(90.3%)となっていた。また、24年度に買い入れた85,383tのうち、77,223t(90.4%)の引渡日が、各期の初日以外となっていた。そして、6日目(2,345t)、7日目(549t)、8日目(15,734t)、9日目(300t)、10日目(6,548t)及び11日目(注)(10,047t)が引渡日となっているものが、全量のうち35,525t(41.6%)となっていた。

(注)
 11日目 一月が31日間である場合における21日目から月末までの期の末日

一方、保管経費は、期末在庫数量に1期分の保管単価を乗じて算定するため、上記のように各期の初日以外が引渡日になっている場合には、売渡人が所有し保管している日を含めて同省が保管経費を支払っていることになり、保管経費の支払額に見合った保管日数が確保されていなかった。

表 政府所有米穀の買入れに係る引渡日ごとの引渡数量

(平成23年度)(単位:t、%)
引渡日 初日 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 9日目 10日目 11日目
数量 7,086 12,969 41,798 102,817 42,778 207,450
割合 3.4 6.3 20.1 49.6 20.6 100
(平成24年度)(単位:t、%)
引渡日 初日 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 9日目 10日目 11日目
数量 8,159 12,897 28,800 2,345 549 15,734 300 6,548 10,047 85,383
割合 9.6 15.1 33.7 2.7 0.6 18.4 0.4 7.7 11.8 100
(注)
単位未満を切り捨てているため、引渡日ごとの数量を集計しても計欄の数量とは一致しない。
<事例>

農林水産省は、平成24年3月9日に売渡人である新潟市農業協同組合(以下「農協」という。)等から米穀14,105.3tの引渡しを受け、期末在庫数量である14,105.3tに23年度委託契約の保管単価100㎏当たり25円を乗ずるなどして、24年3月の1期分の保管経費を3,702,636円と算定していた。しかし、この保管経費には、同省に所有権が移転しておらず、農協等が所有し保管している3月1日から8日までの8日間の保管経費が含まれており、保管経費に見合った保管日数が確保されていなかった。そして、同省に所有権が移転した後の2日間に見合った保管経費を算出すると740,520円となる。

このように、政府所有米穀の保管経費について、米穀の引渡日が各期の初日でない場合に、支払額に見合った保管日数が確保されておらず、その日数において、備蓄を目的とする米穀の所有権を同省が有していない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(支払額に見合った保管日数が確保されていなかった保管経費)

同省に米穀の所有権が移転しておらず、支払額に見合った保管日数が確保されていなかった保管経費を算出すると、23年度4542万余円、24年度1165万余円、計5708万余円となっていた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、同省において、保管経費の支払額に見合った保管日数が確保されるように米穀の引渡日を設定することについての検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省は、26年産米穀の買入れの入札から、引渡日を各期の初日に設定することなどとし、25年8月に各地方農政局等に通知を発してその旨を周知する処置を講じた。