農林水産省は、家畜導入事業のうち特別導入事業の実施に必要な資金に充てるための基金を造成する事業主体に補助金を交付する都道府県に対して、国庫補助金を交付していた。そして、本事業を平成17年度に終了させたことに伴い、各事業主体は、18年度から23年度までに本事業に係る基金の国庫補助金相当額を、都道府県を経由して国庫に納付することとなった。しかし、鹿児島県は「鹿児島県家畜導入事業実施要領」等を定めて、本事業の事業主体となっていた同県下の市町村が引き続き本事業と同様の事業を実施できるようにしていた。そして、この事業の財源として、事業主体が特別導入事業により造成した基金を取り崩すことができることとしていたため、同県下の34事業主体は、18年度以降、国庫補助金相当額の納付を全く行っておらず、また、農林水産省も、国庫補助金相当額の納付の進捗に向けた具体的な措置を十分に講じていない事態が見受けられた。
したがって、農林水産省において、本事業に係る事業主体間の公平を確保するとともに、国費を効率的に使用することができるようにするため、鹿児島県下の34事業主体が納付すべきであった国庫補助金相当額を速やかに返納させるよう、農林水産大臣に対して24年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求した。
本院は、農林水産本省及び鹿児島県において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、25年3月に、鹿児島県から国庫補助金相当額の返納について詳細な返納計画を提出させた上で、34事業主体のうち9事業主体については、本院指摘の趣旨に沿い、18年度から23年度までに納付すべきであった国庫補助金相当額の全額に24年度に発生した利子を加えた額を25年4月に国庫に返納させる処置を講じていた。
そして、残る25事業主体については、上記の返納計画において、18年度から23年度までに納付すべきであった国庫補助金相当額にその後発生する利子を加えた額を24年度から29年度までに分割して返納させることとしたため、このうち24年度分の返納額についてのみ25年4月に国庫に返納させていたものの、残りの国庫補助金相当額は返納されていない。