農林水産省は、独立行政法人農林漁業信用基金(以下「信用基金」という。)に出資金等を交付して、都道府県ごとに設置されている農業信用基金協会(以下「協会」という。)が農業者等の資金借入れに対して行っている保険保証に係る保証債務の額を増大するために必要な原資となるべき資金を信用基金から協会に貸し付けさせている。しかし、本件貸付金を保証債務の代位弁済に使用した実績は低い水準にとどまっていて、貸付金の一部は将来も使用することが見込まれない状況となっており、また、近年、協会の弁済能力は充実しているため、協会の資金繰りという目的のために貸付けを行う必要性は低下しているにもかかわらず、必要額を上回る貸付けが行われている事態が見受けられた。
したがって、農林水産省において、各協会の代位弁済の見込みや財務状況を踏まえて真に必要な額の貸付けを行わせることにより貸付金が有効に使用されるようにして、その結果、必要がないと認められる貸付金については、更なる支援の必要がある協会への貸付けに充てるなどしてもなお過大となる分について、相当する出資金等を信用基金から国庫に返納させて、貸付金及び出資金等が適切な規模のものとなるよう、農林水産大臣に対して平成24年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、信用基金が貸付けを行うに当たっては、各協会の代位弁済の見込みや財務状況を踏まえて真に必要な額の貸付けを行わせることとし、その結果、信用基金において、今後使用が見込まれない貸付金の額を123億8300万円と算定したことから、これと同額の出資金等を国庫に返納させることとする処置を講じていた。