経済産業本省(以下「本省」という。)は、平成21、22両年度に、産業人材裾野拡大支援事業(以下「支援事業」という。)を財団法人海外貿易開発協会(24年3月30日から25年3月31日までは財団法人海外産業人材育成協会、25年4月1日以降は一般財団法人海外産業人材育成協会。以下「協会」という。)に委託して実施し、委託費21年度138,038,018円、22年度109,188,725円、計247,226,743円を支払っている。
支援事業は、日系企業の東アジア展開が加速する中で、現地学生等の日系企業への関心を高めることにより、現地日系企業の人材確保の円滑化等を図ることを目的として、タイ王国及びベトナム社会主義共和国の現地高等教育機関における日本企業文化紹介講座の開設等を実施したものである。
経済産業省が作成した委託事業事務処理マニュアルによると、委託事業の経費項目は、人件費、事業費、再委託費及び一般管理費となっている。一般管理費は、委託事業を行うために必要な経費ではあるが当該委託事業に要した経費としての特定が困難なもの(家賃、光熱水料、消耗品費等)について、一定の割合で支払うことを認められた経費であり、具体的な算定は委託事業の経費項目の人件費及び事業費の額に受託事業者の決算書を用いて算出した一般管理費率を乗ずるなどしている。一方で、委託事業に要した経費として特定が可能なものは、一般管理費以外の該当する経費項目に計上することとされている。
そして、協会は、上記のマニュアルに基づき委託費を算定するために、21、22両年度の支援事業の一般管理費率の算定に当たっては、協会の他の事業を含めた全ての事業に直接要した経費(以下「協会総事業費」という。)に対する協会の全ての事業に要した一般管理費(以下「協会総一般管理費」という。)の割合を用いることにしていた。
本院は、合規性等の観点から、支援事業に要した経費は適正に精算されているかなどに着眼して、協会が実施した支援事業を対象として、本省及び協会において、実績報告書等の書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。
すなわち、協会は、21、22両年度に実施した支援事業の実績報告の際に、事務所家賃、光熱水料、コピー機使用料、通信運搬費等(以下、これらを合わせて「事務所家賃等」という。)の一部を支援事業に要した経費として特定して、支援事業の事業費に計上していた。そして、支援事業における人件費及び事業費の総額に一般管理費率7.0%を乗ずるなどして算出した額を支援事業の一般管理費として計上していた。
しかし、協会は、上記のとおり事務所家賃等の一部を支援事業に要した費用として特定して事業費に計上しているのに、上記の一般管理費率7.0%の算定に当たり、誤って、事務所家賃等を協会総事業費から控除して協会総一般管理費に加算していた。
したがって、適正な協会総事業費及び協会総一般管理費を用いて一般管理費率を算定すると21年度4.3%、22年度5.7%となり、これを用いて支援事業の適正な委託費を算定すると21、22両年度で計242,740,625円となることから、前記委託費計247,226,743円との差額計4,486,118円が過大となっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、協会において委託事業を実施する際の一般管理費の算定方法についての理解が十分でなかったこと、本省において実績報告書等の内容の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。