国土交通省は、官公庁施設の建設等に関する法律(昭和26年法律第181号)等に基づき、官公庁施設の整備等の官庁営繕事業を、本省において実施するとともに地方整備局及び北海道開発局(以下「地方整備局等」という。)にその一部を分掌させて実施している。そして、本省及び地方整備局等は、官公庁施設の工事の施工に当たり、工事施工者及び工事監理者に対して設計の意図を正確に伝えるために、設計図書等に基づき、質疑応答、説明、工事材料、設備機器等の選定に関する検討、報告等を行う業務(以下「設計意図伝達業務」という。)を随意契約により当該施設の設計業者に請け負わせて実施させている。
この契約に係る国の会計経理は、財政法(昭和22年法律第34号)、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等(以下「会計法令」という。)に基づくこととされている。会計法令によると、国の会計年度は毎年4月1日から翌年3月31日までと定められており、原則として、各会計年度における経費は当該年度の歳入をもって支弁しなければならないこととされている。また、支出負担行為(国の支出の原因となる契約その他の行為)をするに当たっては、法令又は予算の定めるところに従って行うこととされており、契約を締結する場合には、原則として、契約書を作成しなければならないとされている。
本院は、合規性等の観点から、設計意図伝達業務に係る国の会計経理が会計法令に基づき適正に行われているかなどに着眼して、国土交通本省及び7地方整備局等(注1)において、平成20年度から24年度までに締結された設計意図伝達業務契約272件を対象として、契約関係書類等により会計実地検査を行った。
検査したところ、5地方整備局(注2)は、20年度から22年度までに契約を締結した設計意図伝達業務12件、契約金額計42,675,500円について、契約書を作成して契約を締結した日のおよそ1か月前から3か月前の間に、会計法令に定められた契約手続等を経ることなく、当該官公庁施設の設計業務を担当した計11会社に実施させていた。そのうち、4件、契約金額計15,750,000円については、履行期間の含まれる年度の前年度から実施させていた。
したがって、これらの設計意図伝達業務に係る契約12件、契約金額計42,675,500円は、不適正な会計経理により支払われており、会計法令に違背していて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、5地方整備局において、設計意図伝達業務に係る契約手続等の会計経理を行うに当たり、会計法令を遵守することの認識が欠けていたこと、国土交通本省において、地方整備局等に対する会計経理の適正な執行についての指導監督が十分でなかったことなどによると認められる。