この工事は、北陸地方整備局新潟国道事務所(以下「事務所」という。)が、平成24年度に、新潟県岩船郡関川村において、国道113号防災工事として、舗装工、法面工等を工事費126,210,000円で実施したものである。この工事のうち鷹ノ巣工区においては、上下各1車線の本線(施工延長369.5m、各車線の幅員3.25m)と下り線外側に設けた県道へ連絡するための車線(施工延長87.7m、幅員3m。以下「付加車線」という。)に、道路表面に発生している目地部の破損や既設コンクリート舗装の摩耗等を補修するために、目地破損箇所等に目地材を注入した後に、注入箇所を覆うように幅50㎝のクラック抑制シート(注)を敷設した上で、道路表面に平均厚さ5㎝の密粒度アスファルト混合物により舗装するオーバーレイ工を施工している。
このオーバーレイ工を施工する場合には、路面高が上がり路面上に高低差が生じることから、「道路維持修繕要綱」(社団法人日本道路協会編)によれば、本線部分と付加車線とのすり付け部については、一般交通に支障を及ぼさないようすり付けを行うことが望ましいとされている。
さらに、道路法(昭和27年法律第180号)の規定によれば、道路の構造は、当該道路の存する地域の地形、地質、気象その他の状況及び当該道路の交通状況を考慮し、安全かつ円滑な交通を確保することができるものでなければならず、また、道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もって一般交通に支障を及ぼさないように努めなければならないこととされている。
本院は、合規性等の観点から、本件工事を行った道路において安全かつ円滑な交通が確保されているかなどに着眼して、事務所において会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図面等の書類及び現地を確認するなどして検査したところ、オーバーレイ工等の設計が次のとおり適切でなかった。
すなわち、事務所は、オーバーレイ工等の実施に当たり、請負業者に施工範囲等を指示して施工図を作成させ、これを承諾していた。この施工図によると、本線部分は、全幅員についてオーバーレイ工を実施することとしていたが、付加車線部分は、幅員3mのうち本線側の幅1.25mについてのみ実施する設計としていた。
そして、上記の設計に基づいて施工したことから、付加車線の中央付近の幅50㎝のすり付け部において、高さ4.3㎝から5.4㎝までの高低差が延長87.7mにわたり生じていた。このような路面の状況は、当該工区が積雪寒冷の度が特に甚だしい地域内の道路に当たることを踏まえると、路面凍結時には自動車の走行時にスリップ等を誘発するなど、一般交通に支障を及ぼすおそれがある。
したがって、上記のすり付け区間87.7mに係るオーバーレイ工等は、その施工範囲に関する設計が適切でなかったため、安全かつ円滑な交通が十分確保されていない状態となっていて、これに係る工事費相当額3,000,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、事務所において、道路管理者として道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もって一般交通に支障を及ぼさないようにすることへの配慮が十分でなく、請負業者に指示したオーバーレイ工等の施工範囲が適切でなかったことなどによると認められる。
(参考図)