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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第13 国土交通省 |
  • 不当事項 |
  • 補助金 |
  • 補助事業 の実施及び経理が不当と認められるもの |
  • (2) 工事の設計が適切でなかったもの

ボックスカルバートの設計が適切でなかったもの[石川県](402)


(1件 不当と認める国庫補助金 14,631,650円)

部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助
対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
千円 千円 千円 千円
(402) 石川県 石川県 地域活力基盤創造交付金等 21〜24 334,798
(334,798)
184,139 26,603
(26,603)
14,631

この交付金事業は、石川県が、白山市中新保町及び金沢市福増町において、北陸自動車道にインターチェンジを整備することにより遮断される既存の市道及び農道の機能を維持するために、ボックスカルバート(以下「カルバート」という。)3か所(延長計68.1m)の築造、盛土等の工事を中日本高速道路株式会社金沢支社(以下「金沢支社」という。)に委託して実施したものである。

上記のうち2か所のカルバートは、高速道路本線(以下「本線」という。)への流入路と市道とが交差する箇所に築造するもの(延長22.4m、内空断面の幅8m、高さ4.1m。以下、このうち出入口から延長11.2mの部分を「市道カルバート」という。)と、本線からの流出路と農道とが交差する箇所に築造するもの(延長18.0m、内空断面の幅5.5m、高さ4.2m。以下「農道カルバート」という。)で、いずれも現場打ち鉄筋コンクリート構造となっている(参考図参照)。

同県は、本件工事の設計を設計コンサルタントに委託しており、本件カルバートの設計の基礎となっている設計計算書によると、市道カルバートの頂版等に配置する主鉄筋については、次のとおりに配置すれば主鉄筋に生ずる引張応力度(注1)(常時(注2))が許容引張応力度(注1)(常時)を下回ることなどから、応力計算上安全であるとしていた。

  • ① 市道カルバートの頂版下面側及び底版上面側には径32㎜の鉄筋を、左翼壁及び右翼壁の隅角部には径19㎜の鉄筋を、それぞれ15㎝間隔に配置する。
  • ② 農道カルバートの左翼壁隅角部には径22㎜の鉄筋を15㎝間隔に配置する。

しかし、設計コンサルタントは、配筋図を作成する際に、設計計算書どおりの径及び間隔とすべきところ、誤って、市道カルバートの頂版下面側及び底版上面側の主鉄筋の間隔を30㎝としたり、市道カルバートの左翼壁及び右翼壁並びに農道カルバートの左翼壁の隅角部の主鉄筋の径を16㎜としたりしていた。そして、本件工事を受託した金沢支社はこの配筋図により施工していた。

そこで、市道カルバート及び農道カルバートについて改めて応力計算を行ったところ、上記の各箇所に配置した主鉄筋に生ずる引張応力度(常時)は、市道カルバートの頂版下面側で253.29N/、底版上面側で251.52N/、左翼壁隅角部で207.45N/、右翼壁隅角部で197.86N/、農道カルバートの左翼壁隅角部で214.41N/となり、許容引張応力度180N/(常時)を大幅に上回っていて、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。

したがって、本件市道カルバート、農道カルバートの左翼壁等(これらの工事費相当額計26,603,000円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額計14,631,650円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。

注(1)
 引張応力度・許容引張応力度  「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいい、その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。
注(2)
 常時  地震時等に対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。

(参考図)

カルバート断面概念図,市道カルバート平面概念図