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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第13 国土交通省 |
  • 不当事項 |
  • 補助金 |
  • 補助事業 の実施及び経理が不当と認められるもの |
  • (2) 工事の設計が適切でなかったもの

樋管の設計が適切でなかったもの[島根県](403)


(1件 不当と認める国庫補助金 4,800,000円)

部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助
対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
千円 千円 千円 千円
(403) 島根県 島根県 河川改修、社会資本整備総合交付金 22〜24 209,775
(186,655)
93,327 9,600
(9,600)
4,800

この補助事業等は、島根県が、河川改修事業等の一環として、出雲市大社町の一級河川午頭川において、樋管工(3基)、盛土工等を実施したものである。このうち樋管工は、堤内地(注1)から河川への通水を確保するために堤防を横断して設置するものであり、樋管のゲートには、河川の水位や流量に応じて水圧で自動開閉するフラップゲートを採用していた。

樋管の設計については、「河川管理施設等構造令及び同令施行規則の運用について」(昭和52年建設省河政発第5号建設省河川局水政課長、建設省河治発第6号建設省河川局治水課長通達。以下「課長通達」という。)等において、樋管のゲートをフラップゲートとする場合には、河川又は堤内地の状況等を勘案して、必要に応じて角落し(注2)を設けること、角落しを設ける場合には、函渠端部等に角落しのための戸溝を設けることなどとされている(参考図参照)。そして、課長通達においては、角落しは必要に応じて設けることとされていることなどから、同県は、本件樋管工について、仮に、河川から堤内地へ外水が浸入した場合でも著しい支障がないと判断して、角落しのための戸溝を設けないこととして設計し、これにより施工していた。

しかし、フラップゲートの採用に当たり、角落しのための戸溝を設けないこととした同県の判断は、次のとおり適切でなかった。

  • ア 河川管理施設又は許可工作物の構造や設置位置等に係る基準書等である「改定解説・河川管理施設等構造令」(財団法人国土技術研究センター編。以下「解説構造令」という。)によれば、フラップゲートは、僅かなごみなどの障害物が挟まることなどによって不完全閉塞が起こりやすい特徴を有しており、フラップゲートを採用するのは、樋門の構造が角落し等によって容易かつ確実に外水を遮断できる構造であることなどの条件を満足する場合に限定すべきであるとされていた。
  • イ 現地を確認するなどしたところ、計画高水位(注3)との高低差が3㎝程度しかない堤内地の宅地等もあり、今後計画高水位を超えて水位が上昇した場合には、浸水による被害を受けるおそれがあるなどの状況となっていた。

したがって、本件樋管工(工事費相当額計9,600,000円)については、角落しのための戸溝を設ける必要性についての判断を誤り設計が適切でなかったため、洪水時等において外水の浸入を確実に遮断できない構造となっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金等相当額計4,800,000円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、解説構造令等についての理解が十分でなかったこと、角落しを設ける必要性についての検討が十分でなかったことなどによると認められる。

注(1)
 堤内地  堤防によって洪水から守られている宅地や農地等がある区域
注(2)
 角落し  函渠端部等に設けた戸溝に角材等を積み重ねて外水を遮断するもの
注(3)
 計画高水位  流域の人口、資産の集積等を勘案して定められた河川整備を行う際の基本となる水位

(参考図)

フラップゲート式樋管工の概念図