(平成25年10月24日付け 国土交通大臣宛て)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
記
貴省は、道路交通の安全確保とその円滑化を図るため、道路整備事業を実施しており、その一環として、毎年度トンネル工事等を多数実施し、その際、これらのトンネルの利用者の安全性と快適性及び円滑な交通を確保するため、トンネル換気設備の設置工事等を国道事務所等において実施している。
国が管理する国道のトンネルの換気設備は、「道路トンネル技術基準」(平成元年建設省都街発第10号都市局長、道企発第33号道路局長通達)及びその解説書である「道路トンネル技術基準(換気編)・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「解説」という。)に基づき設置されている。換気設備については、トンネルの延長、勾配、交通条件等を考慮してトンネルの換気が自然換気で十分に対応できるかどうか検討した結果、自然換気では所定の換気量を確保できない場合には、ジェットファン(注1)等で強制的に換気を行う機械換気を行うこととされている。
そして、近年の自動車排出ガス規制等により、自動車から排出されるばい煙量等が大幅に減少したことなどから、平成20年10月に、解説が改訂され、換気設備の設計に用いる自動車から排出されるばい煙量等の設計条件の見直しが行われている(以下、改訂前の解説を「旧基準」、改訂後の解説を「新基準」という。)。
国が管理する国道のトンネルにおけるジェットファンの設置工事費は毎年度多額に上っている。そこで、本院は、経済性等の観点から、旧基準等に基づいてトンネルに設置しているジェットファンについて、新基準に基づく設置の必要性及び必要基数(以下「必要性等」という。)の検討が行われ、その結果、不要となったジェットファンを新設トンネル等に転用することにより有効活用を図っているかなどに着眼して検査した。
表1 ジェットファンの必要性等の検討状況及びその結果不要となったもの
地方整備 局等名 |
国道事務 所等名 |
必要性等の検討を行っているもの | 左のうち、不要となったもの | ||||||||||||||
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通常型 | 高風速型 | 計 | |||||||||||||||
口径(㎜) | 口径(㎜) | ||||||||||||||||
630 | 1030 | 1250 | 1530 | 1030 | 1250 | ||||||||||||
トン ネル |
基数 | トン ネル |
基数 | トン ネル |
基数 | トン ネル |
基数 | トン ネル |
基数 | トン ネル |
基数 | トン ネル |
基数 | トン ネル |
基数 | ||
東北 | 秋田 | 3 | 9 | 1 | 2 | 2 | 4 | 3 | 6 | ||||||||
関東 | 長野 | 5 | 25 | 5 | 19 | 5 | 19 | ||||||||||
中部 | 岐阜 | 3 | 12 | 1 | 1 | 1 | 4 | 2 | 5 | ||||||||
高山 | 5 | 48 | 1 | 2 | 1 | 18 | 2 | 20 | |||||||||
近畿 | 姫路 | 2 | 7 | 1 | 4 | 1 | 4 | ||||||||||
四国 | 徳島 | 3 | 15 | 1 | 2 | 2 | 4 | 3 | 6 | ||||||||
九州 | 長崎 | 1 | 5 | 1 | 2 | 1 | 2 | ||||||||||
鹿児島 | 5 | 18 | 1 | 4 | 1 | 3 | 2 | 7 | 4 | 14 | |||||||
計 | 27 | 139 | 2 | 6 | 7 | 23 | 3 | 6 | 1 | 4 | 4 | 11 | 4 | 26 | 21 | 76 |
また、残りの3国道事務所等(注5)は、8トンネルのジェットファン28基について、貴省が旧基準等に基づいて設置しているジェットファンについて必要性等の検討を行うよう周知していないこともあり、その検討を行っていなかった。
一方、8国道事務所等(注6)は、22年度から25年度までに、ジェットファン設置工事等(10件、工事費計11億9648万余円)を実施しており、12トンネルにおいてジェットファン49基を設置していた。このうち、3国道事務所(注7)は、当該国道事務所が管理する他のトンネルで不要となったジェットファン6基を撤去し、分解点検を実施するなどした後、当該国道事務所管内のトンネルに転用して有効活用を図っていたが、7国道事務所等(注8)は、新設のトンネル等10トンネルに新たにジェットファン43基を製作して設置していた(表2参照)。
表2 新たに製作したジェットファン
地方整備 局等名 |
国道事務 所等名 |
左のうち、不要となったもの | |||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通常型 | 高風速型 | 計 | |||||||||||||
口径(㎜) | 口径(㎜) | ||||||||||||||
630 | 1030 | 1250 | 1530 | 1030 | 1250 | ||||||||||
トン ネル |
基数 | トン ネル |
基数 | トン ネル |
基数 | トン ネル |
基数 | トン ネル |
基数 | トン ネル |
基数 | トン ネル |
基数 | ||
東北 | 能代 | 1 | 3 | 1 | 3 | ||||||||||
北陸 | 新潟 | 1 | 4 | 1 | 4 | ||||||||||
中部 | 高山 | 1 | 7 | 1 | 7 | ||||||||||
中国 | 三次 | 1 | 3 | 2 | 7 | 2 (注) |
10 | ||||||||
広島 | 1 | 2 | 1 | 1 | 2 | 3 | |||||||||
九州 | 鹿児島 | 2 | 12 | 2 | 12 | ||||||||||
沖縄 | 北部 | 1 | 4 | 1 | 4 | ||||||||||
計 | 1 | 3 | 3 | 13 | 7 | 27 | 10 | 43 |
表3 新たに製作する必要がなかったことになるジェットファン
\ |
通常型 | 高風速型 | 計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
口径(㎜) | 口径(㎜) | ||||||
630 | 1030 | 1250 | 1530 | 1030 | 1250 | ||
①検討の結果、不要となったジェットファンの基数 | 6 | 23 | 6 | 4 | 11 | 26 | 76 |
②新たに製作したジェットファンの基数 | 3 | 13 | 27 | 43 | |||
②のうち、①を転用できることから、新たに製作する必要がなかったことになるジェットファンの基数 | 3 | 11 | 26 | 40 |
そこで、不要となったジェットファンを転用することとして、24年度に転用した国道事務所が採用している分解点検費等の積算額を基に、ジェットファンの転用に要する費用を試算すると、40基のジェットファンの製作に係る直接工事費4億8348万余円は、2億0005万余円となり、直接工事費を約2億8340万円低減できたと認められる。
旧基準等に基づいて設置しているジェットファンについて、必要性等の検討を行っていなかったり、検討の結果、不要となったジェットファンの有効活用を検討することなく新たにジェットファンを製作したりしている事態は適切とは認められず、是正改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、次のことなどによると認められる。
貴省においては、今後も引き続き多数のトンネル工事等を実施することが見込まれている一方で、公共工事においては、コスト縮減を図ることが求められている。
ついては、貴省において、不要となっているジェットファンについて有効活用を図るよう、次のとおり是正改善の処置を求める。