(平成25年9月27日付け 国土交通大臣宛て)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
貴省は、飛行中の航空機の安全かつ円滑な運航等を確保するため管制業務等を実施しており、航空機の誘導等を行うための航空路監視レーダー、航空機に対して飛行経路等の情報を提供するための航空保安無線施設、航空機と管制官との間で通信するための対空通信施設等(以下、これらを合わせて「レーダー等」という。)を全国に設置している。
貴省は、レーダー等の設置場所については、できるだけ遠距離をカバーして、安定した性能が発揮できるように、障害物のない山頂等を選定している。そして、貴省は、レーダー等の設置場所が公道に接続していない場合、レーダー等の設置と設置後の管理を行うために、レーダー等の設置場所と公道を接続する道路(以下「進入道路」という。)を整備して管理している。
貴省は、進入道路の管理を空港事務所、空港出張所等(以下「空港事務所等」という。)に行わせており、空港事務所等は進入道路の除草、除雪、補修工事等を請負業者に請け負わせたり、進入道路が借地にある場合はその所有者に借料を支払ったりしている。
空港事務所等が管理している進入道路は、平成24年度末において、61道路ある。これら61道路の中には、その付近にテレビ局、ラジオ局、電力会社、国の機関等が無線中継所等を設置等(以下、無線中継所等を設置等している者を「無線中継所設置者等」という。)している箇所があり、無線中継所設置者等は無線中継所等の管理等のために当該進入道路を利用している。
空港事務所等は、無線中継所設置者等に進入道路を利用させるに当たり、当該無線中継所等が公道に通じない土地にあるため、無線中継所設置者等は民法(明治29年法律第89号)上の通行権を有しているものとして、無線中継所設置者等との間で進入道路の利用等に係る協定書を取り交わすなどしている。
一方、民間会社が無線中継所を設置するために整備し管理している道路の付近に、貴省がレーダー等を設置している箇所が1か所あり、空港事務所は、当該レーダー等の管理のために民間会社が管理している道路を利用している。
本院は、経済性等の観点から、空港事務所等が管理している進入道路を無線中継所設置者等が利用している場合に、進入道路の維持管理費について利用状況に応じた負担となっているかなどに着眼して検査を行った。
検査に当たっては、29空港事務所等(注1)において、空港事務所等が管理している前記の61道路及び民間会社が管理している道路を利用している1か所に係る20年度から24年度までの間の維持管理費総額1億6505万余円を対象として、15空港事務所等において契約関係書類及び現地の状況を確認するなどの方法により会計実地検査を行い、残りの14空港出張所等については契約関係書類等を提出させて、これにより検査を行った。
表1 無線中継所設置者等が利用している進入道路の状況
進入道路を管理している 空港事務所等名 |
レーダー等の設置場所 | 進入道路の延長(m) | 平成20年度から24年度までの維持管理費(千円) | 無線中継所設置者等合計(者) |
---|---|---|---|---|
函館空港事務所 | 北海道亀田郡七飯町 | 4,260 | 18,525 | 13 |
福島空港出張所 | 茨城県久慈郡大子町 | 430 | 7,789 | 1 |
東京空港事務所 | 東京都大島町 | 610 | 1,218 | 1 |
福岡空港事務所 | 福岡県筑紫野市 | 6,000 | 86,242 | 14 |
鹿児島空港事務所 | 鹿児島県鹿児島市 | 960 | 1,027 | 1 |
土佐清水航空路監視レーダー事務所 | 高知県土佐清水市 | 4,400 | 6,243 | 4 |
福江空港・航空路監視レーダー事務所 | 長崎県五島市 | 453 | 893 | 3 |
計 | 17,113 | 121,940 | 37 |
そして、7空港事務所等、無線中継所設置者等における進入道路の利用状況についてみると、20年度から24年度までの間の進入道路ごとの平均年間利用回数は表2のとおり、7空港事務所等は62.2回から261.2回まで、無線中継所設置者等は7.8回から322.4回までと利用回数の約4割が無線中継所設置者等となっており、無線中継所設置者等が相当程度進入道路を利用している状況が見受けられた。
一方、維持管理費の負担状況については、前記の無線中継所設置者等と取り交わした協定書等に基づき、7空港事務所等が7道路全てにおいて維持管理費の全額を負担していて、無線中継所設置者等には負担を求めていない状況であった。
表2 空港事務所等、無線中継所設置者等の進入道路の利用状況
進入道路を管理している 空港事務所等名 |
空港事務所等の利用回数(A) (回) | 無線中継所設置者等の利用回数(B)(回) | 合計(C)(回) | ||
---|---|---|---|---|---|
比率(A/C)(%) | 比率(B/C)(%) | ||||
函館空港事務所 | 245.2 | 57.0 | 185.0 | 43.0 | 430.2 |
福島空港出張所 | 90.6 | 88.3 | 12.0 | 11.7 | 102.6 |
東京空港事務所 | 82.8 | 85.5 | 14.0 | 14.5 | 96.8 |
福岡空港事務所 | 173.0 | 53.8 | 148.8 | 46.2 | 321.8 |
鹿児島空港事務所 | 62.2 | 77.4 | 18.2 | 22.6 | 80.4 |
土佐清水航空路監視レーダー事務所 | 261.2 | 44.8 | 322.4 | 55.2 | 583.6 |
福江空港・航空路監視レーダー事務所 | 165.8 | 95.5 | 7.8 | 4.5 | 173.6 |
計 | 1080.8 | 60.4 | 708.2 | 39.6 | 1789 |
しかし、進入道路の維持管理には多額の費用が発生していることなどから、空港事務所等がその全額を負担するのではなく、相当程度進入道路を利用している無線中継所設置者等にも応分の負担を求めるべきと認められる。
現に、空港事務所が民間会社の管理している道路を利用してレーダー等の設置及び管理を行っている1か所については、当該空港事務所は、民間会社と取り交わした協定書に基づき利用状況に応じた維持管理費負担額を民間会社に対し支払っていた。
したがって、前記の7道路に係る20年度から24年度までの間の維持管理費について、貴省の空港事務所が民間会社に対して支払った維持管理費負担額の計算方法と同様に、各利用者の進入道路の年間の利用回数に進入道路の入口から各設置施設までの利用距離を乗じた値(以下「年間利用距離」という。)の全利用者の年間利用距離の合計値に対する割合に応じて、無線中継所設置者等の維持管理費負担額を計算すると、計4857万余円になり、同額の負担を無線中継所設置者等に対して求めることができたと認められる。
進入道路の維持管理費について、当該進入道路を利用している無線中継所設置者等に応分の負担を求めていない事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、進入道路を無線中継所設置者等が相当程度利用しているのに、無線中継所設置者等から維持管理費の負担を求めることについての検討が十分でなかったことなどによると認められる。
貴省の進入道路は、今後とも多額の維持管理費が発生するとともに、無線中継所設置者等が相当程度利用することが見込まれる。
ついては、貴省において、進入道路の維持管理費について、無線中継所設置者等と協議等を行い、利用状況を踏まえた応分の負担を求めるよう、改善の処置を要求する。