国土交通省は、港湾整備事業を実施しており、その事業評価において費用対効果分析を行っていて、効果を貨幣換算できる事業について、投資によって整備する施設等がもたらす便益と事業に投入する費用とを比較する費用便益分析を行っている。しかし、便益の算定に当たり、便益発生の前提条件の実現可能性についての検討状況が確認できる書類が残されていなかったり、便益を算定するための代替港の選定についての検討が十分に行われたのか確認できなかったり、事後評価において将来大幅な利用増が見込めるとして便益を算定して再度の事後評価を不要と判断していたり、計上する費用の範囲を限定的に捉えていたりする事態が見受けられた。
したがって、国土交通省において、便益発生の前提条件の実現可能性について十分に検討した上で便益の算定を行い書類等を保存し、代替港を選定する際には輸送コストを最小とする港を選択して理由を明確にすることをマニュアル等に明示するとともに、事後評価において将来の便益が実績を大幅に上回ると認めた場合の評価原案への記述方法や今後の事後評価の必要性の判断方法及び関連事業の費用として計上する具体的な範囲とその計上方法についてマニュアル等に明示するよう、国土交通大臣に対して平成24年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、国土交通本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、国土交通省は、本院指摘の趣旨に沿い、25年3月に地方整備局等に対して事務連絡を発するなどして、次のような処置を講じていた。