環境省は、事務、事業等の効率的な執行等のために、調査、測定、試験、研究等に係る実証事業を他の機関等に委託して実施している。このうち、チャレンジ25地域づくり事業は、公募により地域の二酸化炭素排出量の25%削減に効果的な取組を推進して、地域の活性化を図るとともに、環境負荷の小さい地域づくりを実現するため、建物に太陽光発電設備等の整備を行うなどの実証事業を地方公共団体等に委託するものである。
国の物品については、物品管理法(昭和31年法律第113号)等に基づき、各省各庁の長が物品の取得、保管、供用及び処分(以下、これらを合わせて「管理」という。)を行い、各省各庁の長からその管理に関する事務の委任を受けた職員が物品管理官として管理事務を行うこととされており、環境本省においては大臣官房会計課長が物品管理官に指定されている。
物品管理官は、物品管理簿を備えて、その管理する物品の分類、品目ごとに、物品の増減等の異動数量、現在高その他物品の異動に関する事項等を記録することとされており、取得価格が50万円以上の機械及び器具(以下「重要物品」という。)については、その価格についても記録しなければならないこととされている。
そして、各省各庁の長は、毎会計年度1回及び物品管理官が交替するときはその都度、検査員を任命して、物品管理官の管理に係る物品及び物品管理簿を検査させることとなっている。
また、各省各庁の長は、重要物品について、毎会計年度末の物品管理簿の記録内容に基づいて、物品増減及び現在額報告書(以下「物品報告書」という。)を作成することとされており、物品報告書に基づいた物品の現在額等は内閣から国会に報告されている。
環境省は、委託契約において受託者が実証事業を実施した際に物品を取得した場合の物品の取扱いについて、「環境省委託業務取得物品取扱要領」(平成17年環境省訓令第31号)を定めている。同要領によると、委託契約を締結した支出負担行為担当官は、委託契約の業務が完了したときなどに、受託者が取得した物品のうち「環境省物品管理取扱規則」(平成13年環境省訓令第28号)における環境省所管物品分類表の物品で備品に該当するものを受託者から返還させなければならない(以下、受託者から返還を受けた物品を「返還物品」という。)とされており、返還物品を取得したときは物品管理官に対して通知を行い、また、当該年度における返還物品について毎年度末までに物品管理官に報告しなければならないこととされている。
検査したところ、上記6契約の受託者が、委託業務完了後の23年3月31日に環境本省に報告した返還物品は、重要物品293個(取得価格7億4663万余円)、重要物品以外の物品1,455個(同1億9331万余円)、計1,748個(同9億3995万余円)となっていたが、これらは、全く物品管理簿に記録されていなかった。また、このため、これらの返還物品のうち重要物品については22、23両年度の物品報告書に全く計上されていなかった。そして、これらの事態は、検査員の検査においても看過されていた。
上記の事態について事例を示すと次のとおりである。
環境省は、平成22年6月に、「平成21年度チャレンジ25地域づくり事業委託業務」を契約金額6億円で京都府に委託した。
京都府は、温室効果ガス25%削減に向けた効果的な対策を実証し、その成果を全国に波及させるため、大学、コンビニエンスストア及び交流施設の建物に太陽光発電設備等の整備を行い、委託業務の完了後に委託業務精算報告書及び太陽光発電設備等60個、1億1919万余円に係る物品返還報告書を提出していた。
そして、物品返還報告書を受領した支出負担行為担当官は、物品管理官に対して本件返還物品を取得した旨の報告を行っていたが、物品管理官は物品管理簿に取得に係る記録を行っていなかった。
このように、返還物品について、物品管理官が物品管理簿への記録を行っていなかったことにより、物品管理簿、ひいては物品報告書が国の物品の現況を反映した正確なものとなっていない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、環境本省において、返還物品の物品管理簿への記録を確実に行うためのマニュアル等を整備していなかったこと、返還物品の取扱いについての物品管理法等に対する物品管理官及び検査員の理解が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、環境本省は、25年3月に、本件6契約に係る返還物品について物品管理簿に記録するなどの処置を講じた。
また、25年8月に、返還物品の物品管理簿への記録を確実に行うため、委託事業における既存のマニュアルに、委託事業により取得した物品の管理に関する項目を加えてマニュアルの整備を行うとともに、物品管理官及び検査員に対して、物品管理法等に基づく物品の管理及び検査について十分な理解を持つように指導を行うなどの処置を講じた。