ページトップ
  • 平成24年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第15 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1) 改修した魚雷の性能向上の効果を十分に発現させるために、向上した性能について関係部隊に周知したり、改修していない魚雷と区別して補給業務を行わせたりするよう改善させたもの


所管、会計名及び科目
防衛省所管 一般会計 (組織)防衛本省 (項)武器車両等購入費(項)武器車両等整備費
(平成17年度は、内閣府所管 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)武器車両等購入費)
部局等
海上自衛隊補給本部
改修契約の概要
運用期間の長期化が可能となるように魚雷の内部部品の交換等を行うもの
改修に係る契約件数及び契約金額
8件 31億8778万余円(平成16年度〜23年度)
上記のうち改修に係る効果が十分に発現しないと認められる契約金額
31億8778万円

1 魚雷の改修の概要等

(1) 魚雷の改修の概要

海上自衛隊は、我が国に対する本格的な侵略事態が発生した場合、敵の戦力に対処するために、各種の魚雷を多数保有している。そして、このうち一種類の魚雷(以下「A魚雷」という。)について、保有数の約半数を対象として、平成16年度以降、装備施設本部(18年7月31日から19年8月31日までは装備本部。18年7月30日以前は契約本部)が製造会社との間で改修契約を締結して、順次改修を実施している。

この改修は、内部部品の交換等を行うことによってA魚雷の運用期間の長期化を可能とするとともに、処理能力等が向上した内部部品の導入等に伴って性能も向上させるものであり、A魚雷は運用に際してより高い効果が期待できるものとなる。

(2) 改修に関する周知等の手続の概要

海上自衛隊補給本部(以下「補給本部」という。)は、内部規程に基づき、魚雷等の改修を実施する場合は、改修指示書等に、改修の目的、改修による変更点、改修のための作業内容等について記載して、当該魚雷等を保有する各地方隊弾薬整備補給所及び航空集団の各整備補給隊(以下、これらを「整備補給部隊」という。)に対して通知することとなっている。また、補給本部は、内部規程に基づき、艦船等の運用部隊(以下「運用部隊」という。)に対して上記の改修指示書等を配布することとなっている。

そして、補給本部は、改修指示書等により物品の性能等が変化した場合に、海上自衛隊補給実施要領(平成18年補本装補第2072号。以下「要領」という。)等に基づき、改修された物品に対して、必要に応じて新たに物品管理のための番号を付与するなどしている。

(3) 魚雷の補給業務の概要

運用部隊がA魚雷を搭載して行動する際には、運用部隊からの請求に基づき、整備補給部隊が弾薬庫からA魚雷の払出しを行っている(以下、請求及び払出しに係る業務を「補給業務」という。)。そして、運用部隊が整備補給部隊に対して払出しを請求する際には、要領に基づき、運用部隊が物品管理のための番号、数量等を記載した請求票を整備補給部隊に提出することとなっている。これを受けた整備補給部隊は上記の請求票に基づき払出しを行い、運用部隊は払い出されたA魚雷を受領した上で搭載している。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

海上自衛隊は、A魚雷について、運用期間の長期化が可能となるように順次改修を実施している。

そこで、本院は、有効性等の観点から、運用期間の長期化を目的として実施された改修により性能も向上したA魚雷について、性能向上の効果を十分に発現させるために、適切な管理等が行われているかに着眼して検査を行った。検査に当たっては、海上幕僚監部、補給本部、地方総監部、装備施設本部等において、装備施設本部が16年度から23年度までの間に、A魚雷の改修のために製造会社と締結した契約8件、契約金額計31億8778万余円を対象として、関係書類、A魚雷の管理等の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、補給本部は、A魚雷の改修について、運用期間の長期化を目的として実施していたため、改修により性能が向上することには着目していなかったことなどを理由に、改修指示書等に海上自衛隊が把握している性能向上の内容について記載することなく、整備補給部隊及び運用部隊(以下「関係部隊」という。)に対して通知等を行うなどしていた。このため、関係部隊は、保有するA魚雷について、改修により性能が向上したこと及び向上した性能について把握していない状況となっていた。

また、補給本部は、上記のとおり、A魚雷の改修により性能が向上することには着目していなかったことなどを理由に、改修済みのA魚雷に対して新たな物品管理のための番号を付与するなどの処置を執っていなかった。

このため、関係部隊は、改修により性能が向上したA魚雷と改修していないA魚雷とを区別して補給業務を行うことができない状況となっており、改修済みのA魚雷を使用した方が運用上より高い効果が見込まれる場合においても、運用部隊が改修済みのA魚雷を区別して選定できない状況となっていた。

このように、改修によりA魚雷の性能が向上していることを関係部隊が把握していなかったり、改修済みのA魚雷と改修していないA魚雷とを区別して補給業務を行うことができなかったりしていて、改修済み(改修に係る契約金額計31億8778万余円)のA魚雷の性能向上の効果を十分に発現させられないおそれがある事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、補給本部において、関係部隊に対して、改修によりA魚雷の性能が向上したこと及び向上した性能について通知等を行い、その周知を図ることの重要性について理解が十分でなかったこと、改修済みのA魚雷と改修していないA魚雷とを区別して補給業務を行わせることの重要性について理解が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、補給本部は、25年8月に通知を発して、改修によりA魚雷の性能が向上していること及び向上した性能について、関係部隊に周知した。また、関係部隊が改修済みのA魚雷と改修していないA魚雷とを区別して補給業務を行うことができるよう、改修済みのA魚雷に対して新たに物品管理のための番号を付与して、関係部隊に周知するなどの処置を講じた。