東日本高速道路株式会社(以下「東会社」という。)、中日本高速道路株式会社(以下「中会社」という。)及び西日本高速道路株式会社(以下「西会社」という。また、以下、これらの会社を総称して「3会社」という。)は、高速道路の建設工事、改築工事、補修工事及び維持修繕作業(以下、これらを合わせて「工事等」という。)を毎年度多数実施している。そして、3会社は、これらの工事等を実施するために交通規制を行っており、高速道路の利用者の円滑な交通と路上作業関係者の安全を確保するために一般通行車両及び工事用機械の誘導、交通規制機材の設置状況の確認等(以下「交通保安業務」という。)を行う交通保安要員を配置している。
3会社は、工事等における交通保安要員の労務費の積算については、3会社が制定した「土木工事積算要領」(以下「積算要領」という。)等に基づき、配置する交通保安要員の職種に応じた労務単価に必要人数、期間を乗ずるなどして算出している。
積算要領によると、交通保安要員の職種は、交通監視員、交通誘導員A及び交通誘導員Bに区分されている。そして、交通監視員は、供用中の高速道路の路面上における交通規制を伴う工事等において、交通誘導等に従事する者とされていることから、通行止めによる工事等には適用しないこととされている。また、交通監視員の業務内容については、3会社が制定した「維持修繕作業共通仕様書」(以下「共通仕様書」という。)によると、交通の誘導等のほか、ラバコーン、標識等の交通規制機材の設置状況を確認(以下「機材確認等」という。)することとされている。
また、交通誘導員A及び交通誘導員Bは「公共工事設計労務単価」(農林水産省及び国土交通省決定)の職種と同じであり、交通誘導員Aは、交通誘導業務に従事する交通誘導警備業務に係る一級検定合格警備員又は二級検定合格警備員(以下、これらを「有資格者」という。)、交通誘導員Bは、交通誘導員A以外の交通の誘導に従事する者とされている。
3会社は、交通監視員の労務単価については実態調査により、交通誘導員の労務単価については公共工事設計労務単価により定めていて、これらの労務単価は交通監視員が最も高く、次いで交通誘導員A、交通誘導員Bの順となっている。
そして、積算要領によると、高速道路において交通保安業務を行う場合、交通保安要員の配置については、警備業法(昭和47年法律第117号)に基づき、有資格者を1人以上配置することとされている。
本院は、経済性等の観点から、交通保安要員の労務費の積算において、職種の適用が配置箇所に応じた適切なものとなっているかなどに着眼して、平成23年度又は24年度に実施した工事等(契約を締結した年度は19年度から24年度まで)のうち、下記ア及びイを対象として、契約書、設計書等の書類を確認するとともに、工事等の現場に赴いて交通保安業務の実施状況等を把握するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
前記の閉鎖区間内工事193件の閉鎖区間内に配置した交通保安要員の職種の適用についてみると、交通監視員、交通誘導員A、交通誘導員B又は交通保安要員ではないが、交通保安要員より労務単価の高い普通作業員とするなど区々となっていた。
しかし、閉鎖区間内は一般交通の用に供していない区間であり、閉鎖区間内に配置する交通保安要員は一般通行車両の誘導を行う必要がなく、工事用機械の誘導を行うだけである。したがって、閉鎖区間内に配置する交通保安要員の職種については、原則として交通監視員又は交通誘導員Aを適用する必要はなく、また、交通保安業務であることから普通作業員を適用する必要はなく、交通誘導員Bで足りると認められた。
機材確認等を2人一組で実施することとしている工事等計195件の交通保安要員2人の職種の適用についてみると、交通監視員と普通作業員としていたり、交通監視員と運転手(一般)としていたり、2人とも交通監視員としていたりするなど区々となっていた。
しかし、前記のとおり、共通仕様書によれば、機材確認等は、交通監視員が行うこととされていることから、機材確認等を行う交通保安要員に適用する職種は2人とも交通監視員とすることが適切であると認められた。
このように、交通保安要員の労務費の積算に当たって、閉鎖区間内に配置する交通保安要員の職種を交通監視員、交通誘導員A又は交通保安要員ではない普通作業員としていたり、機材確認等を行う交通保安要員の職種を普通作業員や運転手(一般)としていたりしている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
閉鎖区間内工事193件のうち、閉鎖区間内に配置する交通保安要員の職種を交通監視員等としている工事等76件の交通保安要員の労務費の積算額等、東会社15件計3058万余円、中会社11件計3955万余円、西会社50件計1億3227万余円について、交通誘導員Bを配置することとして修正計算すると東会社が2452万余円、中会社が3065万余円、西会社が1億0675万余円となり、積算額等を東会社は約600万円、中会社は約880万円、西会社は約2550万円それぞれ低減できたと認められた。
また、機材確認等を2人一組で実施する工事等195件のうち、機材確認等を行う交通保安要員の職種を普通作業員等としている工事等18件の交通保安要員の労務費の積算額等、東会社8件計2397万余円、中会社4件計2734万余円、西会社6件計4403万余円について、交通監視員を配置することとして修正計算すると東会社が1775万余円、中会社が1923万余円、西会社が3129万余円となり、積算額等を東会社は約620万円、中会社は約810万円、西会社は約1270万円それぞれ低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、3会社において、積算要領で、配置箇所に応じて適用する交通保安要員の職種を明確にしていなかったり、交通監視員が行う業務を明記していなかったりしていたことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、3会社は、25年8月に積算要領に、原則として閉鎖区間内における交通保安要員の職種は交通誘導員Bとし、2人一組で行う機材確認等の職種は交通監視員とすることを明記する改正を行って各支社に通知し、同年9月からこれを適用することとする処置を講じた。