東日本高速道路株式会社(以下「東会社」という。)、中日本高速道路株式会社(以下「中会社」という。)及び西日本高速道路株式会社(以下「西会社」という。また、以下、これらの会社を総称して「3会社」という。)は、管理する高速道路において、通行車両から通行料金を収受するため、インターチェンジの出入口等に料金所を設置している。3会社は、料金所に、①現金等を取り扱う料金収受機械を備えた従来車線、②料金収受機械とETC(有料道路自動料金収受システム)路側機械の両方を備えたETC混在車線、③ETC路側機械を備えたETC専用車線(以下、②と③を合わせて「ETC車線」という。)を設置している。
そして、3会社は、「設計要領第4集幾何構造編」(3会社制定。以下「設計要領」という。)において、新設料金所にETC車線及び従来車線を設置する場合の車線数を、原則として、計算式を用いて、計画交通量、ETC利用率、各車線の処理能力等に応じて算定することとしている。また、供用中の料金所にETC車線を設置する場合の従来車線数は、料金所の総車線数を変えずに、まず、上記と同様に設計要領に定められた計算式を用いるなどしてETC車線数を算定し、次に、総車線数から先に算定したETC車線数を減算した残りの車線の全てを従来車線とすることとしている。
料金所の従来車線には、通行券自動発行機、通行券処理機、車種判別装置等の種々の料金収受機械等が、入口、出口の違いなどにより、様々な組合せで設置されている。
3会社は、これらの料金収受機械等の定期的な保守整備、故障の修理、部品の交換等の保守管理を3会社が制定した料金収受機械等保守整備業務共通仕様書に基づいて実施することとし、このうち定期的な保守整備は、3会社が制定した料金収受機械等保守整備業務定期点検整備基準に基づいて実施することとしている。
そして、3会社の各支社は、毎年度、関連会社であるハイウェイ・トール・システム株式会社と業務委託契約を締結して、料金収受機械等保守整備業務(以下「整備業務」という。)を実施しており、平成24年度の契約金額は東会社が23億5914万余円、中会社が10億9180万余円、西会社が15億8571万余円となっている。
13年に旧日本道路公団がETCの一般利用を開始して以降、ETC利用率は年々上昇しており、24年12月の3会社管内の料金所におけるETC利用率は約87%に達し、これに伴い、従来車線を利用する通行車両の台数は大幅に減少している。また、ETC車線は従来車線と比べて同じ時間で多くの通行車両を処理できることから、料金所での一時停止を原因とする交通渋滞の発生回数が大幅に減少している。
そこで、本院は、経済性、効率性等の観点から、従来車線数は近年の従来車線を利用する通行車両の台数の減少を考慮した適切なものとなっているか、整備業務が従来車線の運用状況等を考慮した適切なものとなっているかなどに着眼して、3会社の管内の全料金所(注)である東会社の912か所、中会社の460か所、西会社の823か所、計2,195か所のうち、料金収受機械等の設置車線を3車線以上有する東会社の250か所、中会社の152か所、西会社の247か所、計649か所の料金所(以下「3車線以上の料金所」という。)を対象として、各料金所の車線配置図、整備業務の契約関係書類、設計書等を検査するとともに、現地を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
3会社は、3車線以上の料金所の全ての従来車線である東会社の729車線、中会社の374車線、西会社の680車線、計1,783車線に料金収受機械等を設置して、その全てを対象に定期的な保守整備を実施していた。
そこで、本院が、3車線以上の料金所において25年時点で必要となる従来車線数について、24年のETC利用率や24年12月末時点の従来車線数等を基に、設計要領に定められた新設料金所に従来車線を設置する場合の車線数の計算式を準用して試算すると、東会社は401車線、中会社は199車線、西会社は364車線、計964車線と算定された。また、これらの料金所は、新設料金所と異なり、これまでに料金所で発生した事故や渋滞の状況等が判明しており、安全な交通の運用を確保するためには、交通管理者である警察からの要請及び従来車線の運用実績を考慮する必要があることから、予備の車線として、東会社の187か所の料金所で217車線、中会社の97か所の料金所で120車線、西会社の187か所の料金所で211車線、計471か所の料金所で548車線が必要と認められた。
したがって、従来車線は、計算式を準用して試算した964車線に、上記548の予備車線を考慮しても東会社は618車線、中会社は319車線、西会社は575車線、計1,512車線で足り、前記の1,783車線との差である東会社の111車線、中会社の55車線、西会社の105車線、計271車線は、運用する必要がないと認められた。
このため、上記271の従来車線に設置された料金収受機械等は設置しておく必要がなく、定期的な保守整備を実施する必要はないと認められた。
このように、供用中の料金所における従来車線数が、従来車線を利用する通行車両の台数の減少を考慮した適切なものとなっていないことにより、設置しておく必要がない料金収受機械等が多数設置され、これらの定期的な保守整備が継続して実施されている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
設置しておく必要がない料金収受機械等の24年12月末の帳簿価額は、表のとおり、東会社で1億7185万余円、中会社で1億0343万余円、西会社で1億7126万余円となっていた。
表 運用する必要がない従来車線数及び設置しておく必要がない料金収受機械等の平成24年12月末の帳簿価額
会社 | 3 車線以上有する料金所数 | 左に設置された従来車線数(a) | 計算式を準用して試算した必要な従来車線数(b) | 運用実績等に基づく必要な予備車線数(c) | 必要な従来車線数(d)=(b)+(c) | 運用する必要がない従来車線数(a)−(d) | 設置しておく必要がない料金収受機械等の帳簿価額計 |
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東会社 | 250 | 729 | 401 | 217 | 618 | 111 | 1億7185万余円 |
中会社 | 152 | 374 | 199 | 120 | 319 | 55 | 1億0343万余円 |
西会社 | 247 | 680 | 364 | 211 | 575 | 105 | 1億7126万余円 |
計 | 649 | 1,783 | 964 | 548 | 1,512 | 271 | 4億4654万余円 |
また、設置しておく必要がない料金収受機械等について、定期的な保守整備を実施しないこととすると、3会社における24年度の整備業務の契約金額は東会社が23億0709万余円、中会社が10億7046万余円、西会社が15億3887万余円となり、前記の東会社の契約金額23億5914万余円、中会社の契約金額10億9180万余円、西会社の契約金額15億8571万余円を東会社で5204万余円、中会社で2134万余円、西会社で4683万余円それぞれ節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、3会社において、供用中の料金所における従来車線数の算定が従来車線を利用する通行車両の台数の減少を考慮した適切なものとなっていなかったこと、従来車線の運用実態を考慮して料金収受機械等の定期的な保守整備を実施することについての検討が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、3会社は、25年8月に、料金収受機械等の効率的な配置及び維持管理のために必要な従来車線数を毎年度算定して検証すること、設置しておく必要がない料金収受機械等が転用可能な場合には転用計画を定めて転用を図ること、転用を見込めない場合には原則として撤去することなどとする指針を各支社へ通知した。また、25年度の整備業務において、設置しておく必要がない料金収受機械等に係る定期的な保守整備を実施しないこととする変更契約を同年9月から10月までの間に締結する処置を講じた。