独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター(以下「センター」という。)は、熊本県との間で、毎年度、試験研究用地及び庁舎用地として同県合志市に所在する県有地(平成22年9月までは面積1,196,682.5㎡、同年10月以降は同1,212,580.5㎡。以下「本件土地」という。)を借り受ける契約を締結している。
契約書によると、センターは熊本県において毎年度算定した本件土地の貸付料を支払わなければならないなどとされている。そして、同県の「県有普通財産貸付事務処理要領」(平成6年6月)等によると、県有地の貸付料は、貸付対象となる土地の貸付料算定標準額(注)に100分の4の割合を乗じて算定することとされている。
センターが熊本県に支払った本件土地の借料は、22年度2億0013万余円、23年度1億9594万余円、24年度1億9215万余円、計5億8823万余円となっている。
本院は、経済性等の観点から、本件土地の借料の算定及び支払は適切に行われているかなどに着眼して、上記の借料計5億8823万余円を対象として、センターにおいて、本件契約書等の関係書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、センターは、本件土地について、熊本県が次のように算定した借料を支払っていた。
すなわち、本件土地は熊本県の県有地であり、固定資産税評価額が算定されないことから、同県は、本件土地の現況に応じて算出した地目単価に面積を乗じて貸付料算定標準額を算定することとしていた。そして、本件土地のうち現況が宅地及び雑種地となっている部分の地目単価の算出方法は、次のとおりとなっていた。
しかし、熊本県において、従来、イのように、宅地に区分される土地の地目単価に7割を乗じた額を雑種地に区分される土地の地目単価としている取扱いの明確な根拠は確認できなかった。また、センターは、毎年度、同県から合志市の回答書を入手しており、この回答書には、アの2か所の土地を雑種地として評価した場合における固定資産税評価相当額も記載されていた。そして、雑種地に区分される土地についても、当該2か所の土地を雑種地として評価した場合における固定資産税評価相当額を平均した価額により地目単価を算出すると、より低額(22年度10,990円/㎡、23年度13,095円/㎡、24年度12,960円/㎡)となる。
このように、センターにおいて、雑種地に区分される土地について、より合理的で経済的に算出される地目単価に基づき借料を算定するよう熊本県と協議することなく、従来の算出方法による地目単価に基づき算定された借料を支払っている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
本件土地の借受けに当たり、雑種地に区分される土地についても宅地に区分される土地と同様の方法により算出された地目単価に基づき借料を支払うこととして、熊本県との間で契約を締結したとすれば、22年度から24年度までの間の本件土地の借料は計5億6338万余円となり、計2484万余円が節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、センターにおいて、本件土地の借料の算定をより合理的で経済的に行うことについての検討が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、センターは、熊本県と協議して、本件土地に係る25年度の契約から、雑種地に区分される土地の地目単価についても宅地に区分される土地と同様の方法により算出することとして、本件土地の借料の節減を図る処置を講じた。