独立行政法人国立印刷局(以下「印刷局」という。)は、独立行政法人国立印刷局法(平成14年法律第41号)に基づき、一般旅券冊子の製造を行っている。そして、印刷局は、この旅券冊子の表紙として使用する旅券冊子用カーフ(1枚当たり420㎜×600㎜。以下「カーフ」という。)を調達するため、一般競争契約により平成24年5月に株式会社三新と単価契約を締結しており、24年度に計125,127,450円を支払っている。
カーフは、紙に石油系の薬品を塗布して製造されるものであり、5年間有効の一般旅券冊子に使用されるものは紺色に、10年間有効の一般旅券冊子に使用されるものはえんじ色に、それぞれ着色される。
印刷局は、本件契約の予定価格の基礎となるカーフ1枚当たりの単価について、主原料費(紙に係る費用)、副原料費(石油系の薬品に係る費用)、加工費、経費及び管理費の各費用を合計するなどして、紺色のカーフについては235.86円、えんじ色のカーフについては285.14円と算定して、これらの単価にそれぞれの年間発注予定数量を乗ずるなどして予定価格を積算している。
上記の費用のうち、副原料費については、本件契約の予定価格の積算時の市場価格を23年5月に締結した前年度のカーフ購入契約(以下「前年度契約」という。)時の市場価格で除することとして変動率を求め、これを前年度契約の副原料費相当額に乗じて算定している。
この変動率の算定に当たっては、副原料が石油系の薬品であることから、石油製品であるナフサの市場価格を用いている。
本院は、経済性等の観点から、予定価格の積算が適切に行われているかなどに着眼して、印刷局本局において、本件契約を対象として、契約関係書類等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。
印刷局は、前記の副原料費の算定に用いる変動率について、ナフサ1キロリットル当たりの市場価格を本件契約の予定価格の積算時は53,000円、前年度契約時は50,000円であるとして、106%と算定していた。
しかし、上記の50,000円は前年度契約時の市場価格ではなく、誤って22年5月の市場価格を適用したものであり、正しくは23年5月の市場価格である61,000円を適用すべきであった。
したがって、適正なナフサの市場価格により変動率を求めると87%となり、これにより予定価格の基礎となるカーフ1枚当たりの単価を修正計算すると、紺色のカーフは217.21円、えんじ色のカーフは258.73円となる。そして、これらの単価にそれぞれの納入実績数量19万枚、27万5000枚を乗ずるなどして計算すると118,041,682円となり、前記の支払額125,127,450円は、これに比べて約700万円過大となっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、印刷局において、予定価格の積算に当たり、ナフサの市場価格の適用年月についての確認が十分でなかったことによると認められる。