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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第2節 団体別の検査結果 |
  • 第22 独立行政法人農畜産業振興機構 |
  • 不当事項 |
  • 補助金

畜産経営維持緊急支援資金融通事業基金により実施した事業において、経営改善計画の検討が十分行われずに貸し付けられた緊急支援資金に係る利子補給金を交付したり、審査が十分行われずに承認された代位弁済を補填するための交付金を交付したりしていたもの[独立行政法人農畜産業振興機構本部](429)


科目
(畜産勘定) (項)畜産振興事業費
部局等
独立行政法人農畜産業振興機構本部
補助の根拠
独立行政法人農畜産業振興機構法(平成14年法律第126号)
補助事業者
一般社団法人畜産生産者団体協議会
間接補助事業者
(事業主体)
(1) 北ひびき農業協同組合
(2) 北海道農業信用基金協会
補助事業
(1) 畜産経営維持緊急支援資金事業
(2) 畜産経営維持緊急支援資金保証円滑化事業
補助事業の概要
(1) 緊急支援資金に係る利子補給金を交付するもの
(2) 緊急支援資金に係る代位弁済に伴う損失の一部を補するための交付金を交付するもの
事業費(補助金相当額)
(1) 10,890,996円(10,890,996円)(平成21年度〜23年度)
(2) 19,093,980円(19,093,980円)(平成23年度)
計 29,984,976円(29,984,976円)
上記のうち不当と認める事業費
(1)  5,376,152円
(2) 12,871,380円
不当と認める機構の補助金相当額
(1)  5,376,152円(平成21年度〜23年度)
(2) 12,871,380円(平成23年度)
計 18,247,532円

1 補助事業の概要

独立行政法人農畜産業振興機構(以下「機構」という。)は、国から交付される交付金等を財源として、独立行政法人農畜産業振興機構法(平成14年法律第126号)に基づき、畜産物の生産又は流通の合理化を図るための事業その他の畜産業の振興に資するための事業で農林水産省令で定めるものについてその経費を補助している。

畜産経営維持緊急支援資金融通事業は、償還が困難な借入金を長期・低利の資金に一括で借り換えることにより畜産農家の経営の維持と安定を図るため、機構が平成21年度に補助金99億4000万円を一般社団法人畜産生産者団体協議会(以下「協議会」という。)に交付して基金を造成させたものである。そして、協議会は、畜産経営維持緊急支援資金融通事業実施要綱(平成21年21農畜機第1115号。以下「実施要綱」という。)等に基づき、基金を取り崩して次の事業を実施している。

  • ① 畜産農家の一括借換えに要する長期・低利の資金(以下「緊急支援資金」という。)の貸付けを行った融資機関に対して利子補給金を交付する畜産経営維持緊急支援資金事業
  • ② 緊急支援資金を償還できなくなった畜産農家に代わり、債務保証契約に基づき融資機関に対して代位弁済を行う農業信用基金協会(以下「基金協会」という。)に対して、当該代位弁済に伴う損失の一部を補填するための畜産経営維持緊急支援資金保証円滑化交付金(以下「保証円滑化交付金」という。)を交付する畜産経営維持緊急支援資金保証円滑化事業(以下「保証円滑化事業」という。)

実施要綱等によれば、緊急支援資金の借入れを希望する畜産農家は、収支状況、借入金残高等を記載した経営改善計画を作成して融資機関に提出し、融資機関は、同計画に記載された当該畜産農家の収支状況、借入金残高等により同計画の妥当性及び償還可能性を検討し、都道府県知事の承認を得た上で緊急支援資金を貸し付けることとされている。そして、協議会は、融資機関の請求に基づき、利子補給金を交付することとされている。

また、基金協会は、保証円滑化交付金の交付を受ける場合には、保証円滑化事業に係る代位弁済承認申請書(以下「承認申請書」という。)等を機構理事長に提出して、緊急支援資金に係る代位弁済の承認を受けることとされている。そして、機構理事長は、承認申請書等を審査した結果、上記の経営改善計画に収支状況、借入金残高等が記載されていないなど不実の記載が認められる場合等には代位弁済を承認しないこととされている。

融資機関である北ひびき農業協同組合(北海道士別市所在。以下「北ひびき農協」という。)は、21年度から23年度までの間に、5畜産農家に緊急支援資金計252,760,000円を貸し付けて、協議会から利子補給金計10,890,996円の交付を受けており、このうちの計5,376,152円は、3畜産農家に、北海道農業信用基金協会(以下「北海道基金協会」という。)を連帯保証人として21年11月に貸し付けた緊急支援資金計150,494,000円に係るものとなっていた。また、北海道基金協会は、緊急支援資金に係る代位弁済を行い、23年度に協議会から保証円滑化交付金計19,093,980円の交付を受けており、このうちの計12,871,380円は、上記の3畜産農家が資金不足を理由として酪農経営を23年3月に中止したことにより償還できなくなった緊急支援資金について24年2月に行った代位弁済に係るものとなっていた。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、利子補給金及び保証円滑化交付金が適正に交付されているかなどに着眼して、機構本部、協議会、北ひびき農協及び北海道基金協会において、経営改善計画、承認申請書等の書類により会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

  • ア 北ひびき農協は、緊急支援資金の借入れを希望する前記の3畜産農家が貸金業者からの借入金を経営改善計画に記載していなかったのに、これを看過し、結果として、同計画の妥当性及び償還可能性について十分な検討を行うことなく緊急支援資金の貸付けを行っていた。
  • イ 機構は、前記の3畜産農家が借り入れた緊急支援資金に係る代位弁済の承認に当たり、北海道基金協会から、3畜産農家に前記の借入金があり、経営改善計画に不実の記載が認められることを把握し得る関係書類が提出されていたにもかかわらず、これらの書類による審査を十分行わないまま緊急支援資金に係る代位弁済の承認を行っていた。

したがって、3畜産農家に貸し付けられた緊急支援資金に係る利子補給金計5,376,152円及び保証円滑化交付金計12,871,380円は適正とは認められず、これらに係る機構の補助金相当額計18,247,532円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、アの事態については、北ひびき農協において貸付前の経営改善計画の検討が十分でなかったこと、イの事態については、機構において代位弁済の承認に当たっての審査が十分でなかったことなどによると認められる。