ページトップ
  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第2節 団体別の検査結果 |
  • 第26 独立行政法人理化学研究所 |
  • 平成23年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

研究に用いる物品の購入に当たり、要求元から契約部門に対して材料の提供及び装置等の貸与に係る情報を確実に伝えることなどにより、予定価格の算定等を適切なものとするよう改善させたもの


科目
経常費用
部局等
独立行政法人理化学研究所本所(平成25年4月1日以降は同研究所本部)、横浜研究所(25年4月1日以降は横浜事業所)
契約名
HeliScopeCAGEライブラリー等4契約
契約の概要
生命活動を遺伝子レベルで解明するための各種の研究に使用するCAGEライブラリーを購入するもの
契約の相手方
株式会社ダナフォーム
契約
平成22年3月~24年1月 一般競争契約、随意契約
契約金額
5億9409万円(平成21年度~23年度)
節減できた調達額
4401万円(平成21年度~23年度)

1 CAGEライブラリーの購入の概要

独立行政法人理化学研究所(以下「研究所」という。)は、独立行政法人理化学研究所法(平成14年法律第160号)に基づいて科学技術に関する研究を行うため、多数の物品を購入している。そして、研究所は、生命活動を遺伝子レベルで解明するため、細胞や組織における遺伝子の働きの解析に使用するCAGEライブラリー(注)を購入している。

研究所は、①平成22年3月にCAGEライブラリー58個を9135万円で、②23年2月に同240個を3億0240万円で、③同年10月に同23個を2898万円で、④24年1月に同136個を1億7136万円で、計457個を計5億9409万円で、①、②及び④については本所(25年4月1日以降は本部)において、③については横浜研究所(25年4月1日以降は横浜事業所)において、一般競争契約又は随意契約により、それぞれ株式会社ダナフォーム(以下「ダナ社」という。)との間で契約を締結して購入している。

(注)
CAGEライブラリー  研究の対象となる細胞や組織から抽出したRNAを特許技術により加工して作製されたDNA溶液

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性等の観点から、CAGEライブラリーの予定価格の算定は適切かなどに着眼して、上記の4契約、契約金額計5億9409万円を対象として、本所及び横浜研究所において、契約書、予定価格調書等の関係書類を確認するとともに、ダナ社に赴いて見積価格の内訳を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

研究所は、本所及び横浜研究所の契約の担当課において、調達の要求元(以下「要求元」という。)である横浜研究所のオミックス基盤研究領域(以下「研究室」という。)からCAGEライブラリーの購入依頼を受けて、ダナ社に対して見積書の提出を要求し、ダナ社からCAGEライブラリー1個当たりの見積価格を、①については1,500,000円に消費税相当額を加算した1,575,000円、②、③及び④については1,500,000円から300,000円値引いた1,200,000円に消費税相当額を加算した1,260,000円とする見積書の提出を受けて、これらの額をそのまま用いて予定価格を算定し、いずれも予定価格と同額で契約を締結して購入していた。

研究室は、①から④までについて、研究所が所有している材料、作業室を用いることによりCAGEライブラリーの品質が高くなるなどとして、ダナ社に対して、試薬等の材料の全てを無償で提供したり、作製に用いる作業室を無償で貸与したりしていた。さらに、②、③及び④については、手作業でCAGEライブラリーを作製した①の場合に比べて作業の効率化が図られるなどとして、研究所所有の、構成の組替えによりCAGEライブラリーを作製することが可能となる装置(23年度末台帳価格8,803,354円。以下「作製装置」という。)を無償で貸与していた。

しかし、研究室は、契約の担当課に対してこれらの情報を伝えておらず、また、作製装置等の貸与について、横浜研究所の財産管理の担当課に対して物品管理事務取扱細則(平成15年細則第80号)及び不動産等管理事務取扱細則(平成15年細則第79号)に定める手続(以下「所定の手続」という。)をとっておらず、無断で貸与していた。

そして、契約の担当課は、ダナ社から提出を受けた見積書の価格には試薬等の材料の無償提供及び作製装置等の無償貸与の実態が反映されていなかったのに、前記の情報が伝えられていなかったため、見積書の価格をそのまま用いて予定価格を算定しており、契約書等においても材料の無償提供及び作製装置等の無償貸与について明示していなかった。また、財産管理の担当課は、所定の手続がとられないまま作製装置等が無断で貸与されていたため、その貸与の状況について把握していなかった。

このように、研究所において、研究に用いる物品の購入に当たり、契約の相手方に材料を提供したり装置等を貸与したりしているのに、これらの情報が予定価格の算定等の契約事務を所掌する部門(以下「契約部門」という。)に伝えられておらず、予定価格が適切に算定されていないなどの事態や、装置等を貸与しているのに所定の手続がとられておらず、財産の管理事務を所掌する部門(以下「管理部門」という。)において財産貸与の状況が適切に把握されていない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(節減できた調達額)

CAGEライブラリーの予定価格について、材料の無償提供による費用の削減、作製装置の無償貸与による作製の効率化等の実態を踏まえて修正計算すると、1個当たりの価格は①については1,249,500円、②、③及び④については1,197,000円となり、これらにそれぞれの契約の購入個数を乗ずると計5億5007万余円となり、前記の契約金額計5億9409万円と比べて調達額が計4401万余円節減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、研究所において、研究に用いる物品の購入に当たり、要求元が契約の相手方に材料を提供したり装置等を貸与したりする場合には、これらの情報を契約部門に確実に伝えること、要求元が契約の相手方に装置等を貸与する場合には、所定の手続を適切にとることについての認識が欠けていたことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、研究所は、25年8月に、契約金額と本件4契約に係る材料の無償提供及び作製装置等の無償貸与の実態を反映した額との差額4401万余円をダナ社から返還させるとともに、関係部署に通知文書を発して、次のような処置を講じた。

  • ア 要求元が契約の相手方に材料を提供したり装置等を貸与したりする場合には、予定価格を適切に算定したり契約書等に明示したりできるように、契約部門に対してこれらの情報を確実に伝えることを周知した。
  • イ 要求元が契約の相手方に装置等を貸与する場合には、財産貸与の状況を適切に把握できるように、管理部門に対して所定の手続をとることを周知した。