独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「機構」という。)鉄道建設本部青森新幹線建設局(平成23年5月31日以前は東北新幹線建設局。以下「建設局」という。)は、機構の全組織の間を光ファイバケーブルで結ぶなどして構築した機構情報ネットワークシステムのうち、建設局管内の機構情報ネットワークシステム(以下「ネットワーク」という。)を管理するために、23年4月に、23年度から25年度までの間のネットワークの管理等を行う業務(以下「管理等業務」という。)を随意契約により、東芝情報システム株式会社に81,900,000円で請け負わせている。
建設局は、本件管理等業務契約のうち、建設局の職員からのネットワークに関する質問に回答したり、職員のアクセス権を管理したり、ネットワークの運用に障害が発生した場合に専門業者に対応依頼を行ったりなどする作業の予定価格を、必要となる作業員の人数に、市販の積算参考資料(以下「積算参考資料」という。)に掲載されている1か月当たりの人件費単価(以下「月額単価」という。)を乗ずるなどして積算している。
本院は、経済性等の観点から、本件管理等業務契約に係る予定価格の積算が適切に行われているかなどに着眼して、建設局において会計実地検査を行った。そして、予定価格書等の書類を検査するなどしたところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。
すなわち、建設局は、建設局に常駐して前記の作業を実施する作業員(以下「常駐作業員」という。)の月額単価については、積算参考資料の情報システムの維持管理業務を行う技術者(以下「システム管理技術者」という。)の区分のうち「システム管理技術者1」(月額単価900,000円)を用いていた。しかし、積算参考資料において、「システム管理技術者1」は、システムの維持管理業務の責任者として高い技術力を有し、要求された業務に問題が発生した場合等に必要に応じて参画しその解決を図るものに用いる区分とされている一方で、要求された業務を単独で実施する場合は、「システム管理技術者2」(月額単価796,000円)を用いることとなっている。そして、常駐作業員が行う作業内容は、ネットワークに関する質問に回答するなどの要求された業務を建設局に常駐して単独で実施するものであることから、「システム管理技術者2」を用いるべきであった。
したがって、常駐作業員の月額単価に「システム管理技術者2」を用いるなどして、本件管理等業務契約に係る予定価格を修正計算すると、積算過小となっていた常駐作業員に係る超過勤務手当を考慮しても77,026,320円となり、本件契約額81,900,000円はこれに比べて約480万円割高となっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、建設局において、積算参考資料のシステム管理技術者が行う業務内容の理解が十分でなかったこと、予定価格の審査が十分でなかったことなどによると認められる。