ページトップ
  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第2節 団体別の検査結果 |
  • 第36 独立行政法人労働者健康福祉機構 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

赴任旅費の支給に当たり、着後手当を赴任の際の宿泊及び宿泊費用の発生の実態に即した適切なものとするよう改善させたもの


科目
旅費交通費
部局等
独立行政法人労働者健康福祉機構本部、75施設
着後手当の概要
新在勤地に到着後、新住居に入居するまでの間のホテル等の宿泊料等に充てるための旅費
赴任旅費の支給額
2億2434万余円(平成23、24両年度)
上記のうち着後手当の支給額
5556万余円
節減できた着後手当の支給額
3310万円(平成23、24両年度)

1 着後手当の概要等

独立行政法人労働者健康福祉機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人労働者健康福祉機構法(平成14年法律第171号)に基づき、労働者の福祉の増進に寄与することを目的として、療養施設、健康診断施設等の設置及び運営等に係る業務を実施している。

機構は、これらの業務を実施するため、平成24年4月1日現在で15,246人の職員を有し、本部のほか全国に労災病院、看護専門学校、勤労者予防医療センター等計105施設を設置しており、毎年度、多数の職員を本部及び各施設間で転任させるなどしている。そして、本部及び施設に勤務する職員のために、24年4月1日現在で計4,926戸の職員宿舎を整備するなどしている。

機構は、転任により旧在勤地から新在勤地に旅行したり新たに採用されて居住地から在勤地に旅行したりする職員に対して、機構が定めた内国旅費規程(平成16年規程第19号。以下「旅費規程」という。)等に基づき、赴任旅費として、23年度は計1億0753万余円、24年度は計1億1681万余円、合計2億2434万余円を支給している。

この赴任旅費には、交通費、日当、宿泊料等のほかに着後手当(扶養親族分を含む。以下同じ。)があり、この着後手当は、転居を伴う人事異動において、新在勤地に到着後、新住居に入居するまでの間に必要となるホテル等の宿泊料や挨拶に要する費用等の諸雑費に充てるために支給するものとされている。そして、その支給額は、旅費規程第19条により、日当定額の5日分及び宿泊料定額の5夜分に相当する額(以下、日当定額及び宿泊料定額の一定日数分に相当する額を「5日5夜分」等という。)とするなどと定められている。

また、旅費の調整について定めた旅費規程第24条では、機構の理事長は、当該旅行の性質その他特別な事由により、旅費規程による旅費を支給することが適当でないと認めたときは、その支給について別に定めることができるとしている。そして、これを受けて定められた「内国旅費規程の運用について」(平成20年労健福発第693号)において、宿泊施設等を無料で利用したり、用務先の近郊に自宅等があって宿泊費を要しなかったりなど、正規の旅費を支給することが旅費計算の建前に照らして適当でない場合においては、旅費の調整を行うこととされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

前記のとおり、機構が職員に支給する赴任旅費は、毎年度多額に上っている。一方、機構は、本部及び施設に勤務する職員のために職員宿舎を整備しており、また、赴任に伴う転居の準備に必要な期間を配慮して、職員に人事異動の通知をするなどしている。

そこで、本院は、経済性等の観点から、着後手当の支給が赴任の際の宿泊及び宿泊費用の発生の実態を踏まえて適切に行われているかなどに着眼して、機構本部及び75施設(注)が23、24両年度に職員に支給した着後手当、23年度計370件(支給額計2545万余円)、24年度計420件(同計3011万余円)、合計790件(同合計5556万余円)を対象として検査を実施した。検査に当たっては、施設において、旅費の請求書等を基に旅費の請求、審査、支払事務等について説明を聴取するとともに、本部において、着後手当の趣旨について説明を聴取するなどして会計実地検査を行った。また、着後手当が支給された職員(以下「支給対象職員」という。)及びその扶養親族(以下、これらの者を合わせて「支給対象職員等」という。)の赴任に伴う宿泊の状況等についての調書を徴して、その内容を分析するなどして検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、機構は、着後手当の支給に当たり、赴任に伴う宿泊及び宿泊費用の発生の状況について確認を行っておらず、支給対象職員全員に対して、一律に5日5夜分を支給していた。

しかし、機構においては、本部及び施設に勤務する職員のために職員宿舎を整備しており、支給対象職員等が赴任後速やかに入居できるようにしていることなどから、支給対象職員等が赴任に伴って一時的にホテル等に宿泊する必要性は低い状況になっていると考えられた。

そこで、赴任に伴う一時的な宿泊及び宿泊費用の発生の状況について更に検査したところ、23、24両年度の支給対象職員延べ790人及び当該支給対象職員の赴任に伴い転居した扶養親族延べ228人、計延べ1,018人のうち、新在勤地に到着後直ちに職員宿舎や自宅等に入居した者や、一時的な宿泊をした場合でも実家等に宿泊して有料の宿泊施設を利用しなかった者が計延べ999人あり、全体の98.1%を占めていた。

このように、機構においては、ほとんどの支給対象職員等は、ホテル代等の宿泊費用を要していない状況となっていた。したがって、上記のとおり着後手当が実態とかい離した支給となっている事態は、実費弁償を旨とする旅費計算の建前に照らして適切でなく、旅費規程第24条に基づき減額の調整を行うなどして、赴任する支給対象職員等の宿泊及び宿泊費用の発生の実態に即した適切な支給とする必要があると認められた。

(節減できた着後手当支給額)

機構の着後手当の支給において、前記の事態を踏まえるとともに、国や他の独立行政法人における支給例を参考にして、新在勤地に到着後直ちに入居した場合は2日2夜分に減額するなどして支給したとすれば、前記の着後手当の支給額23年度計2545万余円、24年度計3011万余円、合計5556万余円は、23年度計1039万余円、24年度計1206万余円、合計2245万余円となり、支給額をそれぞれ1505万余円、1804万余円、計3310万余円節減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、機構において、着後手当の支給に当たり、赴任に伴う宿泊及び宿泊費用の発生の実態の把握が十分でなく、着後手当の調整を行う必要性についての認識が欠けていたことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、機構は、25年8月に通達を発して、着後手当については、支給対象職員が新在勤地に到着後直ちに職員宿舎又は自宅に入る場合には5日5夜分を2日2夜分に減額するなど、宿泊及び宿泊費用の発生の実態に即した支給とすることとし、同年9月から適用する処置を講じた。

(注)
75施設  北海道中央労災病院、北海道中央労災病院せき損センター、釧路、青森、東北、秋田、福島、鹿島、千葉、東京、関東、横浜、燕、新潟、富山、浜松、中部、旭、大阪、関西、神戸、和歌山、山陰、岡山、中国、山口、香川、愛媛、九州各労災病院、九州労災病院門司メディカルセンター、長崎、熊本両労災病院、吉備高原医療リハビリテーションセンター、総合せき損センター、東北、千葉、横浜、岡山、熊本各労災看護専門学校、北海道中央、関東、中部各労災病院勤労者予防医療センター、労災リハビリテーション宮城、労災リハビリテーション千葉、労災リハビリテーション福井、労災リハビリテーション長野、労災リハビリテーション福岡各作業所、青森、岩手、宮城、山形、福島、茨城、埼玉、東京、神奈川、石川、長野、岐阜、静岡、愛知、滋賀、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡、長崎、熊本、鹿児島各産業保健推進センター