独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター(以下「センター」という。)は、独立行政法人国立病院機構(以下「機構」という。)が設置している病院の一つであり、胸部疾患の高度専門医療施設として患者の診療、看護等を行っている。そして、センターの病棟等に勤務する看護師又は准看護師(以下「看護師等」という。)は、入院患者の看護等のため、交代制勤務により正規の勤務時間が深夜(午後10時から翌日の午前5時までの間をいう。以下同じ。)となる業務に従事している。
センターは、各部門に所属する職員に対して、独立行政法人国立病院機構職員給与規程(平成16年規程第20号)等に基づき、給与として基本給、年俸及び特殊勤務手当、夜勤手当等の手当を支給している。
特殊勤務手当のうちの夜間看護等手当については、正規の勤務時間による勤務の全部又は一部が深夜となる業務に従事した看護師等に支給されている。そして、看護師等に対する夜間看護等手当については、表の勤務時間の区分に応じて、勤務時間が深夜の全部又は一部を含む場合(一部を含む場合は更に深夜における勤務時間数に応じて三つに区分されている。)、勤務1回当たり2,200円から7,600円が支給されている。
表 看護師等に対する夜間看護等手当
勤務時間の区分 | 勤務1回当たりの支給額 | |
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勤務時間が深夜の全部を含む勤務である場合 | 7,600円 | |
勤務時間が深夜の一部を含む勤務である場合 | 深夜における勤務時間が4時間以上 | 3,700円 |
深夜における勤務時間が2時間以上4時間未満 | 3,200円 | |
深夜における勤務時間が2時間未満 | 2,200円 |
また、夜勤手当については、正規の勤務時間として深夜に勤務することを命ぜられた看護師等に対して、その間に勤務した実労働時間に対して、勤務1時間につき、勤務1時間当たりの給与額の100分の25が支給されている。
機構の職員の勤務時間及び休憩時間については、独立行政法人国立病院機構職員就業規則(平成16年規程第14号。以下「就業規則」という。)に定められている。就業規則においては、①夜勤、深夜勤等の勤務区分、始業時刻、終業時刻、休憩時間の時間帯等は、所属長があらかじめ勤務表において指定すること、②休憩時間は勤務時間の途中に設定すること、③休憩時間は勤務時間に含まないことなどが定められている。
センターにおいて職員の業務の管理・監督を行う監督者(以下「業務監督者」という。)は、上記の勤務表に基づき、各職員の日別の始業時刻、終業時刻、深夜勤務時間数等の必要事項を記載した勤務時間管理簿を作成している。この勤務時間管理簿に基づき、勤務時間管理員が、職員の勤務時間の管理を行うほか、給与事務担当者が、勤務時間管理簿に記載された深夜勤務時間数等に基づき、夜間看護等手当及び夜勤手当の額を算定している。
本院は、合規性等の観点から、深夜における業務に従事した職員に対する給与は適正に算定されているかなどに着眼して、センターにおいて、勤務時間管理簿が保存されている平成21年4月から25年1月までの間の勤務実績に対して21年5月から25年2月までの間に269人に支給された夜間看護等手当計200,460,600円、夜勤手当計77,655,180円、合計278,115,780円を対象として会計実地検査を行った。検査に当たっては、センターにおける勤務表、勤務時間管理簿等の関係書類を確認するなどして検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
機構は、21年4月に就業規則を改正して、職員の休憩時間について、勤務時間が6時間を超える場合は45分から1時間に、12時間を超える場合は1時間30分から1時間45分にそれぞれ変更するなどしており、これに伴い、センターは勤務表を改正して、勤務区分ごとの休憩時間を増やすとともに、その時間帯を変更するなどしていた。
しかし、業務監督者は、勤務時間管理簿を作成するに当たり、21年4月以降も、勤務時間管理簿には改正前の休憩時間に基づく深夜勤務時間数を記載しており、給与事務担当者は、これに基づき夜間看護等手当及び夜勤手当を算定していたことから、次のような状況となっていた。
以上のとおり、センターは、夜間看護等手当及び夜勤手当の額の算定に当たり、誤って深夜勤務時間数を過大に計上しており、適正な深夜勤務時間数を基に夜間看護等手当及び夜勤手当の額を修正計算すると、夜間看護等手当計196,293,600円、夜勤手当計74,106,021円、合計270,399,621円となることから、前記の支給額との差額、103人に係る夜間看護等手当計4,167,000円、259人に係る夜勤手当計3,549,159円、合計7,716,159円が過大に支給されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、センターにおいて、職員の休憩時間の変更に伴い勤務表が改正されているのに、勤務時間管理簿に記載する深夜勤務時間数を変更する必要性についての認識が欠けていたこと、業務監督者、勤務時間管理員及び給与事務担当者において、勤務時間管理簿に記載された深夜勤務時間数を十分確認していなかったことなどによると認められる。