独立行政法人国立高等専門学校機構は、国立高等専門学校(以下「高専」という。)を設置することなどにより、職業に必要な実践的かつ専門的な知識及び技術を有する創造的な人材を育成するとともに、我が国の高等教育の水準の向上と均衡ある発展を図ることを目的として、各高専の設置運営や教育研究活動等の業務を行っている(高専における物品の購入等に係る会計経理の概要等については、後掲756ページの「国立高等専門学校における不適正経理の再発防止策への取組状況や物品管理の状況を適切に把握することなどにより、再発防止策への取組が確実に実施され、また、物品の管理が適正に行われるよう是正改善の処置を求めたもの」参照)。
本院は、合規性等の観点から、高専における物品の購入等に係る検収、支払等の経理処理が独立行政法人国立高等専門学校機構会計規則(平成16年独立行政法人国立高等専門学校機構規則第34号。以下「会計規則」という。)等に基づき適正に行われているかに着眼して、函館工業高等専門学校等18高専(注1)(以下「18高専」という。)において、平成19年度から23年度までの間に締結した物品の購入等に係る契約を対象として、支払決議書等の書類により会計実地検査を行った。そして、検査の過程において不適正な会計経理の事態が判明した場合には、可能な範囲において過去の年度まで遡って検査した。
検査したところ、18高専全てにおいて、18年度から23年度までの間に、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な会計経理を行って、物品の購入代金等を支払っていたものが、運営費交付金等を財源とする支払額151,482,936円、国庫補助金(注2)を財源とする支払額16,109,067円、計167,592,003円あった。
これらを態様別に示すと、次のとおりである(表参照)。
業者に架空取引を指示するなどして、契約した物品が納入されていないのに納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより代金を支払い、当該支払金を業者に預け金として保有させて、後日、これを利用して契約した物品とは異なる物品を納入させていたもの1高専 1,959,990円
業者に虚偽の請求書等を提出させて、契約した物品が納入されていないのに納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより代金を支払い、実際には契約した物品とは異なる物品に差し替えて納入させていたもの2高専 1,454,018円
物品が翌年度に納入されているのに、関係書類に実際の納品日より前の日付を検収日として記載することなどにより、物品が現年度に納入されたこととして代金を支払っていたもの18高専 144,580,778円
物品が前年度以前に納入されていたのに、関係書類に実際の納品日より後の日付を検収日として記載することなどにより、物品が現年度に納入されたこととして代金を支払っていたもの14高専 19,597,217円
表 不適正な会計経理により支払われた物品の購入等代金の内訳
高専名、財源の内訳 | 年度 | 預け金 | 差替え | 翌年度納入 | 前年度納入 | 計 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
函館工業高等専門学校 | 平成 19〜23 |
— | — | 16,792,320 | — | 16,792,320 | ||
苫小牧工業高等専門学校 | 19〜21 | — | — | 1,375,149 | — | 1,375,149 | ||
秋田工業高等専門学校 | 19〜23 | — | 978,402 | 9,769,295 | 341,457 | 11,089,154 | ||
茨城工業高等専門学校 | 19、20、22 | — | — | 868,817 | — | 868,817 | ||
小山工業高等専門学校 | 19〜23 | — | — | 3,265,317 | 1,461,290 | 4,726,607 | ||
東京工業高等専門学校 | 18〜22 | 1,959,990 | 475,616 | 34,732,520 | 2,581,673 | 39,749,799 | ||
富山高等専門学校 | 19〜21 | — | — | 9,129,331 | 278,098 | 9,407,429 | ||
石川工業高等専門学校 | 19〜23 | — | — | 3,904,946 | 1,496,557 | 5,401,503 | ||
福井工業高等専門学校 | 19〜23 | — | — | 27,427,184 | 6,072,037 | 33,499,221 | ||
岐阜工業高等専門学校 | 19〜23 | — | — | 3,150,924 | 1,230,040 | 4,380,964 | ||
豊田工業高等専門学校 | 19、21、22 | — | — | 77,882 | 224,810 | 302,692 | ||
鈴鹿工業高等専門学校 | 20、21、23 | — | — | 5,308,233 | 2,788,128 | 8,096,361 | ||
奈良工業高等専門学校 | 19〜21 | — | — | 558,738 | 1,049,540 | 1,608,278 | ||
津山工業高等専門学校 | 19〜22 | — | — | 2,431,650 | 218,715 | 2,650,365 | ||
呉工業高等専門学校 | 19 | — | — | 311,955 | — | 311,955 | ||
新居浜工業高等専門学校 | 19〜22 | — | — | 8,824,864 | 218,404 | 9,043,268 | ||
佐世保工業高等専門学校 | 19〜23 | — | — | 2,602,616 | 321,300 | 2,923,916 | ||
熊本高等専門学校 | 19〜23 | — | — | 14,049,037 | 1,315,168 | 15,364,205 | ||
18高専計 | 18〜23 | 1,959,990 | 1,454,018 | 144,580,778 | 19,597,217 | 167,592,003 | ||
運営費交付金等 | 18〜23 | 1,959,990 | 1,454,018 | 128,537,861 | 19,531,067 | 151,482,936 | ||
国庫補助金 | 19〜22 | — | — | 16,042,917 | 66,150 | 16,109,067 | ||
大学改革推進等補助金 | 19〜21 | — | — | 5,017,681 | 66,150 | 5,083,831 | ||
独立行政法人国立高等専門学校機構設備整備費補助金 | 21、22 | — | — | 8,126,915 | — | 8,126,915 | ||
独立行政法人国立高等専門学校機構施設整備費補助金 | 19、20 | — | — | 2,898,321 | — | 2,898,321 |
これらのアからエまでの事態は、18高専において、契約した物品が納入されていないのに納入されたこととして虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な会計経理を行って物品の購入代金計167,592,003円を支払っていたものであり、不当と認められる。また、このうち国庫補助金については当該国庫補助金が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、18高専において、公金の取扱いの重要性や会計規則の遵守に対する認識が欠けていたことなどによると認められる。