ページトップ
  • 平成24年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第40 独立行政法人中小企業基盤整備機構|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

地域ファンド融資事業等で貸し付けた資金等により、都道府県が運営管理法人に造成させている基金について、必要とされる基金の規模を把握するための指標を都道府県に示すなどして、都道府県が適時適切に基金の見直しを行えるよう改善の処置を要求したもの


科目
(一般勘定) 事業貸付金
部局等
独立行政法人中小企業基盤整備機構本部
融資事業の概要
地域資源等を活用した地域における中小企業の新事業展開を支援するため、創業又は中小企業の経営の革新を支援する助成事業等の財源となる基金を造成する都道府県に対して、その資金の一部を貸し付けるもの
貸付先
44都道府県
上記に対する貸付金総額
2448億6000万円(平成19年度〜22年度)
上記のうち適時適切に基金の規模の見直しが行われていなかった額
2448億6000万円(背景金額)
【改善の処置を要求したものの全文】 独立行政法人中小企業基盤整備機構による地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)融資事業等で造成された基金の見直しについて

(平成25年10月31日付け 独立行政法人中小企業基盤整備機構理事長宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 事業の概要等

(1) 地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)融資事業等の概要

貴機構は、平成19年度から、地域資源等を活用した地域における中小企業の新事業展開を支援するために、同一都道府県内を原則とする一定の地域内において創業又は中小企業の経営の革新を支援する助成事業(以下「地域ファンド事業」という。)の財源となる基金を造成する都道府県に対して、その資金の一部を貸し付ける地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)融資事業(以下「地域ファンド融資事業」という。)を実施している。

さらに、20年度からは、地域ファンド融資事業と同様の仕組みで、地域の中小企業者と農林漁業者との連携による創業や中小企業の経営の革新を支援する助成事業(以下「農商工ファンド事業」という。)の財源となる基金を造成する都道府県に対して、その資金の一部を貸し付ける農商工連携型地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)融資事業(以下「農商工ファンド融資事業」という。)を実施している。

これらの事業は、政府出資金を主な財源とする貴機構の高度化融資制度を活用して、中小企業庁が創設したものである。

地域ファンド事業及び農商工ファンド事業(以下、両者を合わせて「ファンド事業」という。)は、貴機構が定めた「地域中小企業応援ファンド融資事業に係る都道府県に対する資金の貸付けに関する準則」(平成19年規程18第88号)及び「農商工連携型地域中小企業応援ファンド融資事業に係る都道府県に対する資金の貸付けに関する準則」(平成20年規程19第66号。以下、これらを合わせて「準則」という。)に基づいて、都道府県が公益財団法人等(以下「運営管理法人」という。)に資金を貸し付けて造成させた基金の運用益により行われている。そして、貴機構は、上記の基金を造成させた44都道府県(注1)に対して、運営管理法人に対する貸付けに必要な経費の一部(基金造成額の80%以内)を償還期限を10年以内として無利子で貸し付けている。また、準則の規定によれば、都道府県は運営管理法人への貸付けに当たって実施要領を作成することとされている。そして、貴機構が定めた「地域中小企業応援ファンド融資事業に係る都道府県に対する資金の貸付けに関する細則」(平成19年要領18第57号)及び「農商工連携型地域中小企業応援ファンド融資事業に係る都道府県に対する資金の貸付けに関する細則」(平成20年要領19第81号。以下、これらを合わせて「細則」という。)の規定によれば、都道府県はファンド事業の助成対象経費、助成率、助成限度額、助成期間等を上記の実施要領に規定することとされている。

注(1)
44都道府県  東京都、北海道、京都、大阪両府、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、千葉、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県

貴機構の44都道府県に対する24年度末現在の貸付残高は、地域ファンド事業を実施している40都道府県の全43基金(2基金を造成している県が3県ある。以下「地域43基金」という。)に対する計1961億6000万円、農商工ファンド事業を実施している26道府県の全26基金(以下「農商工26基金」という。)に対する計487億円、合計2448億6000万円となっている。また、ほとんどの基金において、基金造成額に占める貴機構の貸付金の割合はおおむね80%となっている。

そして、細則によれば、都道府県は、一定事業年度ごとに事業実績を踏まえて基金の規模を見直すこととされ、必要があるときは、基金を造成している運営管理法人を指導するとともに、貸付金の一部繰上償還により適正な基金の規模に圧縮するなど必要な措置を執ることとされている。さらに、細則によれば、運営管理法人が基金の規模を圧縮して都道府県に貸付金を一部繰上償還する場合には、繰上償還額の全部又は繰上償還額に貴機構の貸付金の割合を乗じた額が都道府県から貴機構に償還されることとされている。

(2) 貴機構における各基金の収支状況等の把握

細則によれば、都道府県は、毎事業年度終了後3か月以内に、運営管理法人からファンド事業に係る事業実績報告等の報告を受け、これに事業成果の評価の結果(以下「事業評価報告書」という。)を付して、貴機構に実績報告書を提出することとされている。

そして、貴機構は、実績報告書において、①対象年度の助成金の交付決定額を前年度繰越額と当該年度の運用益等の合計額で除して得た執行率及び②次年度繰越額から次年度以降に支払が見込まれる額(次年度以降に交付決定を行うことを見込んでいる額(注2)を含む。以下「次年度以降支払見込額」という。)を差し引いた「用途未確定繰越額」を記載させるなどして、基金の収支状況を把握している(図1参照)。さらに、貴機構は、事業評価報告書に成果目標に対する見解、ファンド事業の総評等を記載させて、ファンド事業の実施状況を把握している。

注(2)
次年度以降に交付決定を行うことを見込んでいる額  複数年度にわたる事業期間を想定していて、助成金の交付決定を年度ごとに行うことにしている助成事業において、次年度以降に交付決定を行うことを見込んでいる額

図1 執行率及び用途未確定繰越額の算出方法

執行率及び用途未確定繰越額の算出方法

また、貴機構は、基金の収支状況及びファンド事業の実施状況について、都道府県及び運営管理法人に対するヒアリングを行い、基金ごとに、個別の基金の事情に合わせた情報の提示を行ったり、ファンド事業の改善点等についての助言等を行ったりしている。

(3) 補助金等の交付により造成した基金等に関する基準

中小企業庁は、地域ファンド融資事業の創設に当たり、都道府県に対して、地域ファンド事業は「補助金等の交付により造成した基金等に関する基準」(平成18年8月15日閣議決定。以下「基金基準」という。)に該当するものではないが、その趣旨を踏まえて、制度の設計と運用等を行うよう求めている。また、中小企業庁は、農商工ファンド事業の基本的な制度設計は地域ファンド事業に準ずるとしている。

基金基準によれば、補助金等の交付により造成した基金等を保有する法人(以下「基金法人」という。)は、少なくとも5年に1回は定期的に基金の見直しを行うこととされ、この定期的な基金の見直しの際に、基金の規模が過大となっていないかなどの状況を客観的に把握するため、基金法人は基金の保有割合(以下「保有割合」という。)を算出することとされている。そして、基金基準は、基金元本を費消せず基金の運用益を基金事業の財源に充てる運営形態である運用型の補助・補填事業の保有割合については、「基金の運用益見込額÷(補助・補填見込額+管理費)」を参考にして算出することとしている。さらに、基金基準は、保有割合が「1」を大幅に上回っている基金については、基金法人は基金の定期的な見直しの際に、基金の財源となっている国からの補助金等を国庫へ返納するなど基金の取扱いを検討することとしている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

貴機構が融資している都道府県は、前記のとおり、一定事業年度ごとに事業実績を踏まえて基金の規模を見直すこととされている。また、都道府県は基金基準の趣旨を踏まえてファンド事業の制度の設計と運用等を行うように求められていて、基金基準は少なくとも5年に1回は基金の見直しを行うこととしている。そして、各基金は19年度から22年度までに造成され、このうち19年度に造成した23府県(注3)23基金は24年度で事業開始から5年以上が経過している。そこで、本院は、有効性等の観点から、貴機構から44都道府県への貸付額の規模は適正か、基金基準の趣旨を踏まえた基金の見直しは適時適切に行われているかなどに着眼して検査した。検査に当たっては、貴機構本部及び中小企業庁において、地域ファンド融資事業及び農商工ファンド融資事業の実施状況、44都道府県及び運営管理法人に対する情報の提示や助言等の状況等について、実績報告書等の関係書類により会計実地検査を行うとともに、20県(注4)及び22運営管理法人に赴いて、地域ファンド事業に係る17基金及び農商工ファンド事業に係る13基金について、関係書類等の提示を求めたり、ファンド事業の実施状況等について聴取したりなどして調査した。さらに、地域43基金及び農商工26基金について、実績報告書等及び貴機構を通じて44都道府県に作成を求めた調書等を分析するなどの方法により検査を行った。

注(3)
23府県  大阪府、青森、岩手、宮城、山形、新潟、富山、福井、長野、岐阜、静岡、三重、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、沖縄各県
注(4)
20県  岩手、山形、茨城、栃木、千葉、新潟、長野、岐阜、静岡、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、佐賀、長崎、熊本、鹿児島各県
(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 基金の収支状況

各基金は、長期の国債、地方債等により運用されていて、毎年度一定額の運用益等が発生している。そこで、23年度の収支状況を全基金についてみると、表1のとおり、前年度繰越額及び運用益等の収入は地域43基金で計82億8766万余円、農商工26基金で計17億9343万余円となっていた。一方、23年度に支出した助成金等の額は地域43基金で計35億7418万余円、農商工26基金で計4億9783万余円となっており、23年度末の次年度繰越額はそれぞれ47億1348万余円、12億9559万余円となっていた。そして、23年度以前に交付決定をして23年度末においても未払となっている助成金の交付決定額(以下「23年度末未払額」という。)が地域43基金で計21億4412万余円、農商工26基金で計5億1755万余円あることを考慮しても、23年度末において使途が決まっていない金額が、地域43基金において計25億6935万余円、農商工26基金において計7億7804万余円あった。

表1 基金の収支状況

(基金額は億円単位、その他は千円単位)
都道府県名 地域43基金 農商工26基金
基金額 23年度 基金額 23年度
うち中小機構貸付額 収入(A) 支出(B) 23年度末未払額(C) 使途が決まっていない金額(A—B—C) うち中小機構貸付額 収入(A) 支出(B) 23年度末未払額(C) 使途が決まっていない金額(A—B—C)
北海道 100.2 80.0 262,261 134,086 117,940 10,235 25.0 20.0 54,285 22,584 0 31,700
青森 50.0 40.0 202,557 67,095 110,760 24,701 28.0 20.0 63,084 24,281 0 38,803
岩手 50.0 40.0 211,516 52,420 37,600 121,495 29.1 20.0 111,579 15,945 13,389 82,244
宮城 53.5 42.8 226,236 45,900 133,744 46,591
秋田 59.4 40.0 233,970 71,874 76,809 85,286 25.3 20.0 85,549 11,009 33,442 41,097
山形 65.0 52.0 203,438 66,670 67,566 69,201 25.2 20.0 64,197 24,350 33,391 6,456
福島 50.0 40.0 146,277 56,183 70,859 19,234 25.0 20.0 72,041 21,015 26,516 24,509
茨城 75.0 60.0 291,369 76,745 149,345 65,278
栃木 25.0 20.0 56,751 15,539 0 41,211 25.0 20.0 33,022 7,487 0 25,534
千葉 80.0 64.0 207,744 127,132 48,513 32,098 25.0 20.0 55,011 35,164 6,084 13,763
東京 100.0 20.0 463,518 106,216 243,401 113,901
新潟 125.0 100.0 410,079 183,972 20,337 205,770
富山 20.0 16.0 116,724 17,483 72,611 26,628 30.0 20.0 117,426 20,633 58,354 38,438
石川 200.0 100.0 284,372 259,700 0 24,672
福井 50.0 40.0 206,769 74,863 33,188 98,717
山梨 15.0 12.0 53,616 20,956 19,571 13,089
長野 50.0 40.0 128,494 104,104 0 24,389 10.0 8.0 22,940 7,884 0 15,056
岐阜 50.0 40.0 217,096 74,146 106,116 36,833 25.0 20.0 113,757 4,204 4,490 105,063
静岡 90.0 72.0 264,030 175,266 0 88,763 10.0 8.0 23,611 11,594 0 12,016
愛知 100.0 40.0 175,634 84,200 0 91,434
三重① 10.0 8.0 41,464 2,540 31,735 7,188 25.0 20.0 78,959 6,222 38,616 34,121
三重② 40.1 32.0 163,443 28,609 62,578 72,255
滋賀 40.0 32.0 126,270 33,251 73,090 19,929
京都 50.0 40.0 81,392 74,617 0 6,774 25.2 20.0 63,641 39,671 18,717 5,253
大阪 200.0 160.0 558,751 347,854 0 210,896
兵庫 25.6 20.0 33,369 538 29,600 3,230
奈良 25.1 20.0 63,283 11,899 0 51,383
和歌山 80.0 64.0 252,863 102,099 107,062 43,701 20.0 16.0 53,008 9,047 39,305 4,655
鳥取 50.0 40.0 269,145 88,325 150,685 30,134 25.0 20.0 125,767 26,832 42,378 56,556
島根 25.0 20.0 115,135 32,492 34,497 48,145
岡山 50.0 40.0 157,177 54,219 70,426 32,531
広島 15.0 12.0 37,403 30,850 0 6,552
山口 42.5 34.0 124,451 79,781 25,282 19,388
徳島① 40.0 32.0 109,626 58,775 0 50,851 25.0 20.0 75,932 32,283 0 43,649
徳島② 60.0 48.0 175,133 109,246 0 65,886
香川 118.0 94.4 301,257 232,531 0 68,725 28.0 20.0 70,849 19,288 23,449 28,112
愛媛① 40.0 32.0 119,768 77,961 9,055 32,752 25.0 20.0 53,915 40,688 0 13,226
愛媛② 60.0 48.0 184,580 101,554 33,868 49,157
高知 100.0 80.0 328,734 146,193 0 182,541 25.0 20.0 60,143 29,883 0 30,260
福岡 20.0 15.0 45,251 7,081 15,920 22,249
佐賀 13.0 10.4 44,847 8,073 32,776 3,998 25.2 20.0 67,372 17,862 37,754 11,756
長崎 70.0 56.0 304,502 23,730 26,443 254,329 25.0 20.0 84,060 36,907 30,967 16,185
熊本 25.0 20.0 90,144 14,204 53,782 22,157
大分 50.0 40.0 119,847 38,633 87,533 −6,320
宮崎 25.2 20.0 101,372 13,476 65,178 22,717
鹿児島 25.0 20.0 98,009 22,925 0 75,083
沖縄 50.0 40.0 121,256 51,151 36,951 33,154
2,661.7 1,961.6 8,287,667 3,574,185 2,144,127 2,569,354 626.9 487.0 1,793,435 497,839 517,551 778,043
(注)
三重、徳島、愛媛各県は地域ファンドを2基金造成している。

また、23年度の収支状況を基金ごとにみると、使途が決まっていない金額が22、23両年度の年間運用益等の額の平均の2.6倍となっている基金も見受けられた。

(2) 貴機構における収支状況の把握及び基金の見直しの状況

貴機構は、前記のとおり、毎年度提出させる実績報告書において、実績報告書の対象年度の助成金の交付決定額を前年度繰越額と当該年度の運用益等の合計額で除して、執行率を算出することとしている。しかし、運用益等の額は大きく変動しない一方で、単年度の助成金の交付決定額は年度により大きく変動する場合がある。貴機構が用いている執行率は、ファンド事業を実施した期間の収入及び支出の累計額を用いた収支状況を示しているとは認められず、必要とされる基金の規模を把握するための指標として適切なものとはなっていない。

また、貴機構は、前記のとおり、用途未確定繰越額を把握していたが、同額がどの程度になると基金の規模が過大であると判断すべきか44都道府県が検討するために参考となる情報の提示や助言等が十分でなかったため、44都道府県において、同額を用いて基金の規模の妥当性を判断することは難しい状況となっていた。

そして、細則では、一定事業年度ごとに事業実績を踏まえて基金の規模を見直すこととされているが、24年度末において基金の造成から5年以上が経過して償還期限までの期間の半分を過ぎた23基金において、これらの基金を造成した23府県は基金の規模の見直しを行っていなかった。また、それ以外の基金においても、基金の規模の見直しは行われていなかった。

(3) 各基金の収支割合

前記のとおり、貴機構が用いている執行率は、ファンド事業実施期間の累計額を用いた収支状況を示しておらず、必要とされる基金の規模を把握するための指標として適切なものとはなっていない。そこで、本院は、執行率に代えて、中小企業庁が各都道府県にその趣旨を踏まえるよう求めている基金基準において例示されている運用型の補助・補填事業の保有割合の算出方法を参考にして、各基金の基金造成時から23年度末までに生じた運用益等の累計額(以下「収入累計額」という。)を基金造成時から23年度末までに支出した助成金等の累計額と23年度末未払額の合計額(以下「支出累計額」という。)で除した割合(以下「収支割合」という。図2参照)を用いて、基金の規模の妥当性を検討した。

図2 収支割合の算出方法

収支割合の算出方法

その結果、表2のとおり、1基金を除く全基金において収支割合が「1」を上回り、地域43基金では最大4.63、農商工26基金では最大7.52となっているなど、収入累計額が支出累計額を大きく上回る状況となっている基金が見受けられた。したがって、上記の収支割合の算出結果によれば、都道府県が造成させている基金の規模がファンド事業の実績に見合っていないものがあり、44都道府県に対する貴機構の貸付額は過大となっているものがあると認められる。

表2 各基金の収支割合

収支割合 地域43基金 農商工26基金
基金数 都道府県名 基金数 都道府県名
1.00未満 1 大分 0
1.00以上1.10未満 12 北海道、青森、福島、千葉、石川、長野、京都、鳥取、広島、山口、香川、佐賀 3 山形、京都、和歌山
1.10以上1.20未満 14 宮城、富山、山梨、岐阜、静岡、三重①、滋賀、大阪、和歌山、岡山、徳島①、愛媛①、愛媛②、沖縄 4 千葉、兵庫、佐賀、長崎
1.20以上1.30未満 5 山形、茨城、東京、徳島②、熊本 2 愛媛、宮崎
1.30以上1.40未満 6 秋田、新潟、福井、愛知、島根、高知 1 高知
1.40以上1.50未満 1 栃木 5 北海道、福島、富山、静岡、香川
1.50以上1.60未満 2 岩手、三重② 0
1.60以上1.70未満 0 2 三重、徳島
1.70以上1.80未満 0 3 青森、秋田、鳥取
1.80以上1.90未満 0 1 福岡
1.90以上2.00未満 0 1 長野
2.00以上 2 長崎、鹿児島 4 岩手、栃木、岐阜、奈良
(改善を必要とする事態)

上記のように、基金の規模が事業の実績に見合っていない基金が見受けられる状況となっているのに、貴機構において、ファンド事業実施期間の累計額を用いた収支状況を適切に把握しておらず、44都道府県が事業規模を踏まえて基金の規模を見直していない事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴機構において、基金の見直しに必要となる基金の規模を的確に把握する指標を設定していなかったこと、基金の有効活用を目的とした助言等を基金ごとに行っていたとしているものの、ファンド事業は都道府県が自ら地域の実情に合わせて都道府県の判断で行うものであるとしていて、44都道府県が適切に基金の見直しを実施するために必要な情報の提示や助言等を行うことの必要性についての認識が欠けていたことなどによると認められる。

3 本院が要求する改善の処置

地域ファンド融資事業及び農商工ファンド融資事業は、政府出資金を主な財源とする高度化融資制度を活用して創設されたものであり、同事業による融資は、地域経済の活性化に資する取組を支援するため、無利子で行われている。したがって、貴機構、44都道府県においては、同事業により造成される基金が適正な規模となるよう努めることが求められる。

ついては、貴機構において、44都道府県が適時適切に基金の見直しを行えるよう、次のとおり改善の処置を要求する。

  • ア 細則により、都道府県は一定事業年度ごとにファンド事業の実績を踏まえて基金の規模を見直すこととされ、必要があるときは、基金を造成している運営管理法人を指導するとともに、貸付金の一部繰上償還により適正な基金の規模に圧縮するなど必要な措置を執ることとされていることについて、44都道府県に対して周知徹底を図ること
  • イ 基金造成から5年以上が経過している基金は速やかに、その他の基金は基金造成から5年を目途に基金の見直しを行うよう、44都道府県に対して助言すること
  • ウ 必要とされる基金の規模を把握できるよう、ファンド事業実施期間の累計額を用いた収支状況を反映するなどした指標を設定するとともに、同指標を実績報告書の記載事項に加えるなどして、44都道府県に同指標の状況について毎年度報告させること
  • エ 44都道府県がより適切に基金の見直しを行えるよう、44都道府県が基金の規模を見直すべきかを判断するために参考となる情報を提示すること