独立行政法人都市再生機構(以下「機構」という。)の東日本賃貸住宅本部(平成23年6月30日以前は東日本支社)及び神奈川地域、埼玉地域、中部、西日本各支社(以下「支社等」という。)は、管内の賃貸住宅団地1,421団地のうちの70団地に、ごみ貯留排出装置(以下「貯留装置」という。)計180基を設置して管理している。
貯留装置は、投入された可燃ごみを圧縮してごみの収集時まで保管することにより、大量のごみが排出される集合住宅等におけるごみの保管を効率的に行う装置である。
支社等は、賃貸住宅団地の建設時に、団地が所在する地方公共団体が定めた条例等により、一定戸数以上の集合住宅等について貯留装置の設置が義務付けられていたり、地方公共団体から設置するよう指導、助言されたりしたことなどから、住宅とは別に設けられた建物等の中に貯留装置を設置している。
そして、貯留装置については、3か月ごとに定期点検を実施しており、その結果等に基づいて、東日本賃貸住宅本部、埼玉地域支社及び西日本支社(以下「3支社等」という。)は、20年度から24年度までの間に、13団地において貯留装置27基の更新工事を実施しており、その契約件数は11件で契約金額は計2億7468万余円となっている。
ごみの保管や収集については、地方公共団体の条例等に基づいて実施する必要があるが、近年、ごみの減量化や再利用等の推進により、その方法が大きく変化してきている。そこで、本院は、経済性等の観点から、貯留装置の更新工事はその必要性を十分に検討した上で実施されているかに着眼して検査した。検査に当たっては、前記貯留装置27基の更新工事の契約11件を対象として、本社、3支社等において、契約書、定期点検結果報告書等の関係書類及び現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)貯留装置27基が設置されている13団地の所在する5市区(注)において、前記の更新工事の実施時におけるごみの保管等に関する条例等の内容を確認したところ、ごみの保管方法は各市区により異なっているものの、ごみ集積所を設けてごみを積み上げるステーション方式又は貯留装置によることとされていたり、ステーション方式又はごみ集積所に設置したコンテナボックスにごみを投入するコンテナ方式(以下「ステーション方式等」という。)によることとされていたりなどしていて、5市区とも貯留装置による方法に限定されていない状況となっていた。
しかし、3支社等は、13団地の所在する5市区の条例等の内容を確認しておらず、5市区ともごみの保管方法は貯留装置による方法に限定されていないことを把握していなかったことから、貯留装置の更新工事の必要性の有無について検討していなかった。
そこで、13団地におけるごみの保管方法について、ステーション方式等に変更することが可能か現地の状況を確認したところ、東日本賃貸住宅本部及び西日本支社が管理している10団地の貯留装置15基については、貯留装置を撤去し、その場所をごみの保管場所とするなどすれば、居住者の理解を得た上で、ステーション方式等に変更することが可能であると認められた。
一方、残りの3団地の貯留装置12基については、ステーション方式等とするための場所を確保できないことなどにより、ごみの保管方法を変更することは困難であると認められた。
上記の東日本賃貸住宅本部及び西日本支社が管理している10団地の貯留装置15基について、ステーション方式等に変更したとすれば、更新工事(更新工事費相当額1億6145万余円)を実施する必要はなく、保管方法の変更に伴って必要となる既設の貯留装置の撤去費、集積所整備費等3841万余円を考慮しても、差引き1億2303万余円が節減できたと認められた。
(発生原因)このような事態が生じていたのは、東日本賃貸住宅本部及び西日本支社において、団地の所在する地方公共団体の条例等を確認した上で、貯留装置の更新工事の必要性を検討していなかったこと、本社において、更新工事の実施について指導していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、機構は、25年8月に支社等に通知を発し、貯留装置の更新工事の実施に当たっては、団地の所在する地方公共団体の条例等の内容を確認した上で、居住者の利便性にも配慮しつつ、経済性等を踏まえて更新工事の必要性を十分に検討することを周知徹底する処置を講じた。