独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(以下「機構」という。)は、日本道路公団等民営化関係法施行法(平成16年法律第102号)等の規定により、平成17年10月に、日本道路公団(以下「道路公団」という。)等の解散に伴い設立され、道路公団等から承継した高速道路に係る固定資産(以下「道路資産」という。)を保有し、これらを東日本高速道路株式会社(以下「東会社」という。)、中日本高速道路株式会社(以下「中会社」という。)、西日本高速道路株式会社(以下「西会社」という。)等(以下、これらの会社を総称して「道路会社」という。)に貸し付けることなどを業務としており、道路会社は、機構から借り受けた道路資産について維持、修繕、災害復旧その他の管理を行っている。
機構が道路公団等から承継した資産(以下「承継資産」という。)には、高速道路に係る道路区域に存する構築物(土工、トンネル、橋りょう等)、土地等のほかに、道路公団等の建設仮勘定のうち17年9月30日現在、工事等受注者又は地権者から引渡し等を受けているものがある。そして、承継資産の価額については、道路会社が、「高速道路株式会社及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構資産評価委員会」により承認された評価要領を踏まえて算定し、同委員会の評価を経た上で決定されている。
独立行政法人の会計については、「独立行政法人会計基準」(平成12年2月独立行政法人会計基準研究会策定。平成23年6月改訂。以下「会計基準」という。)に従うものとされ、また、会計基準に定められていない事項については一般に公正妥当と認められる企業会計原則に従うものとされている。そして、独立行政法人は、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)により、毎事業年度(以下、事業年度を「年度」という。)、貸借対照表、損益計算書等の財務諸表を作成し、当該年度の終了後3月以内に主務大臣に提出し、その承認を受けなければならないこととされている。
また、道路会社に貸し付ける道路資産の資産管理については、機構と道路会社との間で役割分担を明確にしており、機構は正確な財務諸表を作成する上で必要となる資産の正確な数量及び実在性の確認を行うこととしている。
本院は、正確性等の観点から、機構の財務状況及び運営状況が23年度の財務諸表に適切に反映され、財務諸表の真実性が確保されているかなどに着眼して、機構が保有する道路資産を対象として、機構、東会社、中会社及び西会社において、建設仮勘定増減明細、管理用図面等の関係書類を検査するとともに、現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、機構が道路公団から承継した道路資産のうち建設仮勘定について、次のような適切でない事態が見受けられた。
すなわち、民営化以降、東会社が管理している千葉東金道路の本郷矢部高架橋の橋脚4基(資産価額計159,641,647円)及び西会社が管理している舞鶴若狭自動車道黒谷トンネル等(資産価額計2,879,178,032円)については、道路公団が暫定2車線区間として供用した後、4車線化事業の一環として整備するなどし、それぞれ9年11月及び14年11月にしゅん功し、工事受注者から引渡しを受けて以降、供用されないままとなっているものであるが、これらの資産は本来機構の建設仮勘定において経理されるべきものであるのに、経理されていなかった。
したがって、これらの資産価額が、17年度から23年度までの機構の財務諸表に計上されていなかったため、固定資産の価額が計3,038,819,679円過小となっていて、財務諸表の表示が適正を欠いており不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、道路公団民営化時に、機構の承継資産の価額を東会社及び西会社が算定する際に、これらの資産が計上漏れとなっていたことにもよるが、機構において、承継したこれらの道路資産が財務諸表に適切に反映されているかについての確認が十分でなかったことなどによると認められる。