(平成25年10月31日付け 独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構理事長宛て)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
貴機構は、日本道路公団等民営化関係法施行法(平成16年法律第102号。以下「施行法」という。)等の規定により、平成17年10月に、高速道路に係る資産の保有、貸付け、債務の早期の確実な返済等を行うことにより、高速道路に係る国民負担の軽減を図るとともに、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社、本州四国連絡高速道路株式会社、首都高速道路株式会社及び阪神高速道路株式会社(以下、これらの会社を総称して「道路会社」という。)による高速道路に関する事業の円滑な実施を支援することを目的として設立された。また、道路会社は、施行法等の規定により、17年10月に高速道路の新設、改築、維持、修繕、その他の管理を効率的に行うことなどを目的として設立された。そして、貴機構及び道路会社は、解散した旧日本道路公団、旧本州四国連絡橋公団、旧首都高速道路公団及び旧阪神高速道路公団(以下、これらの公団を総称して「公団」という。)の一切の権利及び義務を承継している。
貴機構及び道路会社が公団から承継する資産に関する基本的な事項については、施行法第13条第1項の規定により国土交通大臣が定めた「日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団及び本州四国連絡橋公団の業務の引継ぎ並びに権利及び義務の承継に関する基本方針」(平成17年国土交通省告示第712号)に定められている。この基本方針では、固定資産の承継について、原則として、高速道路に係る固定資産は貴機構が承継し、その管理は道路会社において実施することとされた。このため、貴機構が承継した固定資産である高速道路区域内の事業用地(以下「高速道路事業用地」という。)の中には、17年9月末までに、公団がサービスエリア、インターチェンジ等の施設を整備するために取得した用地並びに用途を廃止した高速道路本線(以下「本線」という。)及びサービスエリア等の施設の用地も含まれている。
また、貴機構は、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法(平成16年法律第100号。以下「機構法」という。)第12条の規定により、道路会社が高速道路の新設、改築、維持、修繕その他の管理を行う場合において、道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号)に基づき当該高速道路の道路管理者(国又は地方公共団体)の権限を代行し、高速道路区域の決定又は変更についての権限も代行することとされている。
道路会社が高速道路の新設又は改築を行う場合には、高速道路株式会社法(平成16年法律第99号)第6条の規定により、機構法第13条第1項に規定する協定を貴機構と締結しなければならないこととされている。
国土交通省は、貴機構に対して、21年1月に「高架の道路の路面下及び道路予定区域の有効活用の推進について」を発して、高速道路事業用地であっても、高架の道路の路面下及び道路予定区域は、直接には通行の用に供していない道路空間であることから、これらの道路空間について、まちづくりやにぎわい創出等の点から、暫定利用も含めて計画的に有効活用が図られるように通知している。そして、貴機構もこれを受けて、同様の通知を道路会社に発している。
また、19年12月に閣議決定された「独立行政法人整理合理化計画」(以下「合理化計画」という。)において、独立行政法人の見直しに関して講ずべき横断的措置として、①保有する合理的理由が認められない土地・建物等の実物資産の売却等を着実に推進して、適切な形で財政貢献を行うこと、②上記①の売却等対象資産以外の実物資産についても、引き続き、資産の利用度等のほか、本来業務に支障のない範囲での有効利用の可能性、効果的な処分、経済合理性といった点に沿って、その保有の必要性について不断に見直しを実施することなどが定められている。
さらに、22年12月に閣議決定された「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(以下「基本方針」という。)において、独立行政法人の保有する施設等については、そもそも当該独立行政法人が保有する必要があるか、必要な場合でも最小限のものとなっているかについて厳しく検証すること、貸付資産等も含めた幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行うことなどの取組を進めることとされている。
貴機構は、合理化計画等を踏まえ、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)の規定に基づき、25年3月に認可を受けた第3期中期計画(25年4月1日から30年3月31日までの期間)において、道路の計画の変更等に伴い不要財産が発生した場合には、これを売却して、債務の返済に充てることとしている。
貴機構が保有する高速道路事業用地には、サービスエリア、インターチェンジ等の施設を整備するために取得したが、施設がいまだ整備されていない用地や、高速道路の線形改良、インターチェンジの移設等により用途を廃止した本線及びサービスエリア等の施設の用地も含まれている。
そこで、本院は、有効性等の観点から、高速道路事業用地が有効利用されているか、貴機構がその利用状況を把握しているか、また、有効利用されていない用地について保有し続ける必要性の検証を行っているかなどに着眼して、25年7月末時点で保有している高速道路事業用地で、取得後3年以上経過し現在まで施設が整備されていない用地51件並びに用途廃止後3年以上経過している本線及び施設の用地26件、計77件、用地面積計1,415,421㎡(24事業年度末の資産価額計273億8757万余円)を対象として、貴機構及び道路会社において、固定資産簿、管理用図面等の関係書類及び現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)検査したところ、施設を整備するために取得した用地について、今後の施設の具体的な整備予定(以下「整備予定」という。)がなく、有効利用もされていないもの並びに用途を廃止した本線及び施設の用地について整備予定がなく、有効利用もされていないものが、次のとおり、計59件、用地面積計893,305㎡(24事業年度末の資産価額計190億3030万余円)見受けられた。
35件 用地面積計597,480㎡ 24事業年度末の資産価額計154億4813万余円
これらの用地は、公団民営化の議論等を踏まえたコスト削減の一環として、施設規模を縮小したり、施設の整備を先送りしたりしたことなどにより、25年7月末時点で予定していた施設の建設又は改築が行われておらず、かつ、新設又は改築に関する協定も締結されていないため、整備予定がなかった。また、これらの用地については、一部を冬期の雪捨場等として一時的に利用したことがある程度で、25年7月末時点で3年以上にわたり有効利用されていなかった。
そして、道路会社は、これらの35件について、将来、交通量の増加に応じて施設を整備するとしているものの、当該施設の整備を要する交通量の増加が見込まれていないことなどから、整備予定時期等については検討していなかった(表参照)。
上記について事例を示すと次のとおりである。
<事例1>中日本高速道路株式会社が管理する新名神高速道路の土山サービスエリア用地(滋賀県甲賀市。用地面積188,222㎡、平成24事業年度末の資産価額9億9268万余円)は、9年度から12年度までに取得したものである。しかし、16年度に、公団民営化の議論等を踏まえたコスト削減の一環として、サービスエリアの規模を縮小する見直しを行ったことから、取得した用地のうちの55,252㎡については、整地されているが、サービスエリアとして使用されていない状態であった。そして、このうちの1,600㎡にはヘリポートを整備して有効利用されていたが、残りの53,652㎡(24事業年度末の資産価額2億8296万余円)は、整備予定がなく、有効利用もされていなかった。
24件 用地面積計295,825㎡ 24事業年度末の資産価額計35億8217万余円
これらの用地は、かつては本線等として供用されていたが、高速道路の線形改良やインターチェンジの移設等により用途を廃止したものである。しかし、25年7月末時点で、当該用地に新たな施設等の建設又は改築が行われておらず、かつ、新設又は改築に関する協定も締結されていないため、整備予定はなかった。また、これらの用地については、一部を冬期の雪捨場等として一時的に利用したことがある程度で、25年7月末時点で3年以上にわたり有効利用されていなかった。
そして、道路会社は、これらの24件について、整備予定時期、用地の具体的な有効利用に関する計画等を検討していなかった(表参照)。
上記について事例を示すと次のとおりである。
<事例2>東日本高速道路株式会社が管理する旧虻田洞爺湖インターチェンジ用地(北海道虻田郡洞爺湖町。用地面積65,172㎡、平成24事業年度末の資産価額7775万余円)は、5年度に供用されたが、19年度に国道230号の新たなルート上にインターチェンジを移設し、旧インターチェンジは廃止された。その後、旧インターチェンジ用地65,172㎡は、更地の状態となっているが、資材置場や維持作業車がUターンする際に一時的に使用したことがある程度で、整備予定がなく、有効利用もされていなかった。
しかし、貴機構は、前記のとおり、基本方針等に基づき保有する資産の見直しを行うこととされているのに、保有する高速道路事業用地について、高速道路事業用地を管理している道路会社から、整備予定、利用状況等について報告を求めておらず、前記ア及びイの状況について把握していなかった。そして、整備予定がなく、有効利用もされていない用地について、保有し続ける必要性を検証するとともに有効利用することについて検討する体制を道路会社との間で整備する必要があるのにこれを行っていなかった。
表 ア及びイの事態に係る用地が所在する施設等名の一覧
検査の結果 | 箇所数 (件) |
道路会社名 | 名称(仮称を含む。) |
---|---|---|---|
ア 施設を整備するために取得した用地のうち、整備予定がなく、有効利用もされていないもの | 35 | 東日本高速道路株式会社 | 本輪西PA、夕張IC、樽前SA、駒ケ岳PA、国縫PA、由仁PA、占冠IC、むかわ穂別IC、青森東IC、仙台東IC、十和田IC、山形中央IC、酒田みなとIC、五行川PA、君津PA、佐久小諸JCT |
中日本高速道路株式会社 | 北鯖江PA、弥富IC、土山SA | ||
西日本高速道路株式会社 | 加斗PA、三刀屋木次IC、宇和PA、南国IC、大分料金所、高鍋IC、川南PA | ||
本州四国連絡高速道路株式会社 | 洲本IC、淡路島南PA、瀬戸田PA、上浦PA | ||
首都高速道路株式会社 | 浮島管理施設、大師JCT、鈴木町換気所 | ||
阪神高速道路株式会社 | 駒栄入路・本線、前田JCT | ||
イ 用途を廃止した本線及び施設の用地のうち、整備予定がなく、有効利用もされていないもの | 24 | 東日本高速道路株式会社 | 士別剣淵IC、旧虻田洞爺湖IC、東和IC、旧笹谷営業所、月山IC、旧土樽PA |
中日本高速道路株式会社 | 旧鮎沢PA、談合坂廃道敷、今須廃道敷、旧日本坂PA(上り)、旧日本坂PA(下り)、旧須走IC出路、旧須走ICチェーンバリア、旧豊橋チェックバリア、旧鈴鹿本線料金所、旧米原チェックバリア、旧甲良PA | ||
西日本高速道路株式会社 | 旧桜井PA、旧茨木本線料金所、旧海南東本線料金所、旧仁保IC、旧東城チェーンバリア、旧長崎多良見料金所、波佐見管理施設 |
以上のように、貴機構が保有する高速道路事業用地のうち、施設を整備するために取得した用地並びに用途を廃止した本線及び施設の用地について、整備予定がなく、有効利用もされていないものがある状況を把握しておらず、このため用地を保有し続ける必要性の検証や有効利用することについての検討が行われていない事態は適切でなく、改善の要があると認められる。
(発生原因)このような事態が生じているのは、貴機構において、保有する高速道路事業用地のうち、施設を整備するために取得した用地並びに用途を廃止した本線及び施設の用地について、道路会社から整備予定、利用状況等について定期的に報告を求めてこれを把握し、整備予定がなく、有効利用もされていない用地について、保有し続ける必要性を検証するとともに有効利用することについて検討する体制を道路会社との間で整備していなかったことなどによると認められる。
貴機構は、前記のとおり、高速道路に係る国民負担の軽減を図るとともに、道路会社による高速道路に関する事業の円滑な実施を支援することを目的として設立されている。また、貴機構の第3期中期計画においても、道路の計画の変更等に伴い不要財産が発生した場合には、これを売却して、債務の返済に充てることとしている。
ついては、貴機構において、第3期中期計画等を踏まえた不要財産の売却及び債務の確実な返済に資するため、保有する高速道路事業用地のうち施設を整備するために取得した用地並びに用途を廃止した本線及び施設の用地について、道路会社から整備予定、利用状況等について定期的に報告を求めてこれを把握し、整備予定がなく、有効利用もされていない用地について、今後も保有し続ける必要性の検証及び有効利用することについての検討を不断に行う体制を道路会社との間で整備するよう改善の処置を要求する。