独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人日本原子力研究開発機構法(平成16年法律第155号)に基づき、原子力に関する基礎的研究、応用の研究等を行っており、その一環として、本部、5研究開発センター等(注1)において、年間を通して作業員を常駐させて、交替勤務により夜間(おおむね午後10時から午前5時まで。以下同じ。)を含めて原子炉施設等の運転、監視、放射線安全管理等の業務を定常的に実施している(以下、これらの業務を「運転等業務」という。)。そして、本部、敦賀本部、東海、大洗両研究開発センター及び人形峠環境技術センター(以下、これらのうち本部及び敦賀本部を除いて「3研究開発センター等」という。)において、運転等業務について、一般競争入札又は指名競争入札を実施して締結した契約(以下「運転等業務契約」という。なお、これらの契約には、再度の競争入札に付しても落札者がいないため随意契約としたものを含む。)は、平成22年度から24年度までの3年間に8会社との間で計38契約、契約金額計68億2612万余円となっている。
機構は、契約事務規程(平成17年17(規程)第70号)に基づき、予定価格は競争入札に付する事項の価格を総額等によって定めなければならないこととしており、運転等業務契約についても入札説明書において総額で入札を実施するなどとしている。
本院は、合規性、経済性等の観点から、契約手続は適切に行われているかなどに着眼して、前記の運転等業務契約計38契約、契約金額計68億2612万余円を対象として、本部、敦賀本部及び東海研究開発センターにおいて、契約書、予定価格書、入札説明書等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
(検査の結果)検査したところ、次のような事態が見受けられた。
機構は、前記の38契約のうち、本部、東海、大洗両研究開発センターにおいて締結した21契約については、深夜等手当相当分を含めて予定価格を算定して総額で入札を実施し契約を締結していたが、敦賀本部、3研究開発センター等において締結した17契約については、深夜等手当相当分を含めずに予定価格を算定して入札を実施し契約を締結するとともに、当該契約者と別途に協議して深夜等手当相当分の単価を決定し覚書を締結していた(以下、この方法に基づく入札方式を「覚書方式」という。)。そして、敦賀本部、3研究開発センター等は、覚書方式により入札を実施した17契約について、6会社と契約金額27億7481万余円で契約を締結して、覚書に基づく深夜等手当相当分として8036万余円を支払っていた。
機構は、運転等業務契約については、入札説明書において総額で実施するなどとしているものの、実際には上記のように覚書方式により入札を実施しているものもあり、このような場合には、入札説明書の配布時に、入札希望者に対して深夜等手当相当分を総額に含めないよう口頭で説明したとしている。しかし、運転等業務は、仕様書において、年間を通して作業員を常駐させて、交替勤務により夜間を含めて定常的に実施する業務とされていることから、上記の17契約についても、深夜等手当相当分を含めて予定価格を算定して総額で入札を実施すべきであったと認められ、覚書方式により支払っていた深夜等手当相当分8036万余円は、契約手続の適正性等が確保されていないと認められた。
このように、運転等業務契約について、深夜等手当相当分を含めずに予定価格を算定して入札を実施し契約を締結するとともに、当該契約者と別途に協議し覚書を締結して深夜等手当相当分を支払っていた事態は、契約手続の適正性及び透明性が確保されておらず競争の利益を享受できないものとなっていて適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
(発生原因)このような事態が生じていたのは、機構において、運転等業務契約の締結に当たり、契約手続の適正性及び透明性を確保することについての理解が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、機構は、25年8月に各研究開発センター等に対して業務連絡を発して、今後、運転等業務契約を締結するに当たっては、深夜等手当相当分を予定価格に含めて総額で入札を実施すること及び入札説明書においてその旨を明記することを周知徹底し、前記の17契約のうち業務が継続する契約については、本部に対して契約手続の改善状況を報告させることとする処置を講じた。