ページトップ
  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第2節 団体別の検査結果 |
  • 第81 郵便局株式会社 |
  • 不当事項 |
  • 予算経理

物品及び役務の調達に係る契約の締結に当たり、特定の入札参加希望者に対してだけ提示した金額を予定価格として入札を実施し、当該入札参加希望者が予定価格と同額で落札するなどしていて、予定価格が他に漏れることのないように定めた規定に反し、公正な競争の執行を妨げていたもの[郵便局株式会社東海支社](469)


科目
営業原価、販売費及び一般管理費
部局等
郵便局株式会社東海支社(平成24年10月1日以降は日本郵便株式会社東海支社)
契約名
小規模局の巡回警備委託(愛知県(名古屋市内を除く))等9契約
契約の概要
特定地域に所在する小規模の郵便局を巡回警備する業務等
契約
平成20年3月〜23年9月 一般競争契約
特定の入札参加希望者に対してだけ金額を提示し、その金額を予定価格としていた契約の件数及び契約額
9件 239,173,977円(平成19、20、23各年度)

1 契約手続等の概要

(1) 契約手続等の概要

郵便局株式会社(平成24年10月1日以降は日本郵便株式会社)東海支社(以下「支社」という。)は、19年10月の民営・分社化以降毎年度、物品及び役務の調達に係る契約を多数締結している。そして、これらの調達は、同会社の本社制定の経理規程(規程第19—96号)、郵便局株式会社契約手続(手続第19—70号。以下「契約手続」という。)、物品等契約要領(手続第19—72号)等(以下、これらを合わせて「経理規程等」という。)により実施することとされている。

これらのうち経理規程は、経理の適正を期することなどを目的としていて、契約責任者が、売買、請負等の契約を締結する場合は、契約の性質、目的等に応じて、最も有利な方法を選択することとしている。

また、契約手続は、経理規程に基づき、契約事務の正確かつ効率的及び公平かつ公正な運用を図ることを目的としている。そして、契約責任者が一定額以上の売買、請負等の契約を締結する際は、契約の性質又は目的が競争を許さないなどの場合以外は、契約に関する公告をし、一定の資格を有する不特定多数の者を競争に参加させ、参加者の中から最も有利な条件をもって申込みを行った者と契約する一般競争によることとされている。

(2) 予定価格の算出方法等

契約を担当する社員は、予定価格の算出に当たり、経理規程等に基づき、取引の実例価格、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮することとされている。そして、特注品のように市場価格がない物品等の予定価格については、原則として、入札に参加を希望する事業者(以下「入札参加希望者」という。)の全てから提出された下見積書のうち、最も安価な見積額を基準とし、当該下見積書に記載されている材料費、加工費、管理費等の積算項目について、積算参考資料の掲載値や類似の契約の数値との比較及び検討を行うなどして算出することとされている(以下、この場合の予定価格の算出方式を「下見積書チェック方式」という。)。

そして、下見積書チェック方式により行う一般競争は、経理規程等に基づき、次の手順で行うこととしている。

下見積書チェック方式により行う一般競争の手順

(3) 予定価格の取扱い

契約手続によると、契約責任者は、入札の前に、予定価格を定めた上でこれを書面(以下、この書面を「予定価格調書」という。)に記載し、作成した予定価格調書を封印の上、開札するときまで金庫等に保管して、他に漏れることのないようにするとともに、開札後においても予定価格を公表してはならないこととされている。これは、入札における公正な競争の執行を確保するために定められたものである。そして、公正な競争の執行を妨げた者又は公正な価格を害し若しくは不正な利益を得るために連合した者について、2年間競争に加えないことができることとされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、経理規程等を遵守して契約事務が実施されているかなどに着眼して、支社において、19年10月から24年3月までの間に一般競争により締結した契約のうち、下見積書チェック方式により予定価格を算出した契約を対象として、契約書、仕様書、予定価格調書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

検査したところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。

支社は、「小規模局の巡回警備委託(愛知県(名古屋市内を除く))」等9件の契約(契約額計239,173,977円)を締結するに当たって、下見積書の積算項目について比較及び検討を行うとして、複数の入札参加希望者のうち、特定の入札参加希望者とだけ、下見積書の内容の確認ではなく価格交渉を行っていた。そして、支社は、その交渉の過程で前年度の契約額と同額で応札してほしい旨を伝えるなどして当該入札参加希望者の同意を得た上で、同者に伝えた金額をそのまま予定価格として入札を実施していた。

その結果、支社が価格交渉を行った入札参加希望者は、いずれも1回の入札で予定価格と同額又は端数を処理した額で応札し、落札していた。

したがって、上記9件の契約の締結については、予定価格が他に漏れることのないように定めた経理規程等の規定に反し、公正な競争の執行を妨げていることなどから適切ではなく、9件の契約に係る契約額計239,173,977円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、支社において、経理規程等を遵守することの重要性に対する認識が著しく欠けていたことなどによると認められる。