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  • 第3章 個別の検査結果|第3節 不当事項に係る是正措置等の検査の結果

第1 検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置の状況について


検査対象
65省庁等
是正措置の概要
本院が不当事項として検査報告に掲記したものについて、国損を回復するなどのために省庁等が債権等を管理して債務者等から返還させるなどの是正措置を講ずるもの
是正措置が未済となっている省庁等、件数及び金額
42省庁等、476件 19,028,529,879円
(検査報告 昭和21年度〜平成23年度)
上記のうち金銭を返還させる是正措置が未済となっている省庁等、件数及び金額
40省庁等、460件 16,794,138,227円

1 不当事項に係る是正措置の概要

本院は、会計検査院法第29条第3号の規定に基づき、検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項を不当事項として検査報告に掲記している。

省庁及び団体(以下「省庁等」という。)は、検査報告に掲記された不当事項に対して、省庁等が講じた又は講ずる予定の是正措置について説明する書類を作成しており、この書類は「検査報告に関し国会に対する説明書」として毎年度国会に提出されている。

検査報告に掲記された不当事項に係る是正措置には次の方法がある。

  • ① 補助金、保険給付金等の過大交付、租税、保険料等の徴収不足及び不正行為に係る不当事項に対して、省庁等が指摘に係る返還額等を債権として管理して、返還させたり徴収したりなどすることによる是正措置(以下「金銭を返還させる是正措置」という。)
  • ② 租税及び保険料の徴収過大等に係る不当事項に対して、省庁等が指摘に係る還付額を還付等することによる是正措置(以下「金銭を還付する是正措置」という。)
  • ③ 構造物の設計及び施工が不適切となっている事態等に係る不当事項に対して、省庁等が手直し工事、体制整備等を行うことによる是正措置(以下「手直し工事等による是正措置」という。)
  • ④ 会計経理の手続が法令等に違反しているが省庁等に実質的な損害が生じているとは認められないなどの不当事項に対して、同様の事態が生じないよう指導の強化を図るなどの再発防止策を実施することによる是正措置(以下「再発防止策による是正措置」という。)

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

検査報告に掲記した不当事項については、省庁等において速やかに不当な事態の是正が図られるべきであるが、特に金銭を返還させる是正措置を必要とするものについては、金銭債権としての性格上、管理が長期間にわたるものがあることも想定される。

そこで、本院は、合規性等の観点から、適切な債権管理が行われることなどにより、是正措置が適正に講じられているかに着眼して検査した。そして、昭和21年度から平成23年度までの検査報告に掲記した不当事項について、関係する65省庁等における25年7月末現在の是正措置の状況を対象として、37省庁等において会計実地検査を行うとともに、残りの28省等については、報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(検査の結果)

昭和21年度から平成23年度までの検査報告に掲記した不当事項についてみると、是正措置が未済となっているものは42省庁等における476件19,028,529,879円(注1)である。このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものは40省庁等における460件16,794,138,227円、金銭を還付する是正措置を必要とするものは5省等(注2)における11件4,374,153円、手直し工事等による是正措置を必要とするものは4府省(注3)における10件2,230,017,499円となっている。これを、平成23年度決算検査報告に掲記した不当事項に係る状況と、平成22年度以前の検査報告に掲記した不当事項に係る状況とに分けて記述すると、次のとおりである。

注(1)
476件19,028,529,879円  1件について複数の方法による是正措置が必要なものがあるため、それぞれの是正措置の件数を合計しても476件とは一致しない。また、指摘金額の一部でも是正措置が講じられた場合は、当該金額を是正措置が完了した金額として計上しているが、是正措置が全て講じられるまでは是正措置が完了した件数として計上していない。上記件数及び金額の記載方法は、本文及び表(それぞれの注を含む。)において同じ。
注(2)
5省等  厚生労働省、独立行政法人国立病院機構、独立行政法人国立がん研究センター、独立行政法人国立国際医療研究センター、独立行政法人国立成育医療研究センター
注(3)
4府省  内閣府(内閣府本府)、総務省、農林水産省、国土交通省

(1) 平成23年度決算検査報告に掲記した不当事項の是正措置の状況

検査の結果、平成23年度決算検査報告に掲記した不当事項357件(指摘金額の合計19,133,839,013円)のうち、317件10,680,433,865円(注4)については25年7月末までに是正措置が完了している。

一方、残りの40件8,453,405,148円については25年7月末現在で是正措置が未済となっていて、このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが31件6,536,875,989円あり、その状況は表1のとおりとなっている。そして、手直し工事等による是正措置を必要とするものが3省(注5)における9件1,916,529,159円ある。

注(4)
317件10,680,433,865円  金銭を返還させる是正措置が完了したものが271件6,864,018,717円あり、このうち、不納欠損として整理したものが64,214円ある。このほか、金銭を還付する是正措置が完了したものが4件65,490,371円、手直し工事等による是正措置が完了したものが41件2,603,254,275円、再発防止策による是正措置が講じられたものが41件1,147,670,502円となっている。
注(5)
3省  総務省、農林水産省、国土交通省

表1 平成23年度決算検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置の状況

(単位:件、円)
省庁等名 金銭を返還させる是正措置を必要とするもの 是正措置が完了しているもの 是正措置が未済となっているもの
返還させる必要があるもの 徴収不足のため徴収すべきもの(租税、保険料等)
不正行為 左以外のもの(補助金、保険給付金等)
件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
総務省 11 443,070,000 11 443,070,000
法務省 6 115,115,728 4 51,386,573 2 63,729,155 2 63,729,155
外務省 1 10,929,550 1 10,929,550 1 10,929,550
財務省 1 233,611,585 229,833,856 1 3,777,729 1 3,777,729
文部科学省 17 155,309,688 17 155,309,688
厚生労働省 150 4,517,998,242 137 3,973,582,567 13 544,415,675 9 485,661,723 4 58,753,952
農林水産省 36 879,984,234 33 718,347,740 3 161,636,494 3 161,636,494
経済産業省 12 5,614,771,676 10 159,947,563 2 5,454,824,113 2 5,454,824,113
国土交通省 26 254,074,766 25 231,421,036 1 22,653,730 1 22,653,730
環境省 15 194,086,036 13 176,409,382 2 17,676,654 2 17,676,654
防衛省 2 28,617,260 1 26,131,080 1 2,486,180 1 2,486,180
省庁計 277 12,447,568,765 251 6,165,439,485 26 6,282,129,280 4 88,869,065 17 6,130,728,534 5 62,531,681
日本私立学校振興・共済事業団 10 59,505,000 10 59,505,000
中日本高速道路株式会社 3 247,068,601 1,580,646 3 245,487,955 1 15,206,491 2 230,281,464
日本年金機構 1 1,140,000 1 1,140,000
独立行政法人農畜産業振興機構 1 2,167,000 1 2,167,000
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 1 4,322,978 1 4,322,978
独立行政法人科学技術振興機構 1 10,562,319 1 10,562,319
独立行政法人日本学術振興会 3 6,666,786 3 6,666,786
独立行政法人日本スポーツ振興センター 1 11,905,000 1 11,905,000
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 1 4,861,853 1 4,861,853
独立行政法人自動車事故対策機構 1 4,798,754 1 4,798,754 1 4,798,754
株式会社商工組合中央金庫 1 22,300,000 17,840,000 1 4,460,000 1 4,460,000
日本郵便株式会社 1 578,027,650 1 578,027,650
団体計 25 953,325,941 20 698,579,232 5 254,746,709 2 20,005,245 3 234,741,464
総合計 302 13,400,894,706 271 6,864,018,717 31 6,536,875,989 6 108,874,310 20 6,365,469,998 5 62,531,681
(注)
平成25年7月31日までの是正措置の状況を記載しており、省庁等名は、同日現在の名称としている。

(2) 平成22年度以前の検査報告に掲記した不当事項の是正措置等の状況

ア 是正措置の状況

検査の結果、昭和21年度から平成22年度までの検査報告に掲記した不当事項において、24年7月末現在で是正措置が未済となっていた472件12,426,646,067円のうち、36件1,851,521,336円(注6)については25年7月末までに是正措置が完了している。

一方、残りの436件10,575,124,731円については25年7月末現在で是正措置が未済となっていて、このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが429件10,257,262,238円あり、その状況は表2のとおりとなっている。そして、金銭を還付する是正措置を必要とするものが5省等(注7)における11件4,374,153円、手直し工事等による是正措置を必要とするものが1府(注8)における1件313,488,340円ある。

注(6)
36件1,851,521,336円  金銭を返還させる是正措置が完了したものが40件1,358,487,861円あり、このうち、不納欠損等として整理したものが19件1,023,135,431円ある。このほか、金銭を還付する是正措置が完了したものが2件53,120円、手直し工事等による是正措置が完了したものが3件492,980,355円となっている。
注(7)
5省等  厚生労働省、独立行政法人国立病院機構、独立行政法人国立がん研究センター、独立行政法人国立国際医療研究センター、独立行政法人国立成育医療研究センター
注(8)
1府  内閣府(内閣府本府)

表2 平成22年度以前の検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置の状況

(単位:件、円)
省庁等名 金銭を返還させる是正措置を必要とするもの 是正措置が完了しているもの 是正措置が未済となっているもの
返還させる必要があるもの 徴収不足のため徴収すべきもの(租税、保険料等)
不正行為 左以外のもの(補助金、保険給付金等)
件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
内閣府(警察庁) 1 2,214,000 1 2,214,000 1 2,214,000
法務省 8 296,590,656 8 296,590,656 7 296,263,656 1 327,000
外務省 2 19,179,404 2 19,179,404 1 11,914,499 1 7,264,905
財務省 21 419,981,474 2 40,502,955 19 379,478,519 7 321,205,008 12 58,273,511
文部科学省 1 33,606,972 1 33,606,972 1 33,606,972
厚生労働省 125 2,091,826,829 12 464,102,578 113 1,627,724,251 13 145,986,412 80 994,993,580 20 486,744,259
農林水産省 13 118,460,839 4 35,358,971 9 83,101,868 1 47,313,172 6 29,212,823 2 6,575,873
経済産業省 11 104,528,676 207,525 11 104,321,151 1 15,647,079 9 87,217,281 1 1,456,791
国土交通省 4 67,237,612 4 67,237,612 3 63,325,302 1 3,912,310
環境省 2 240,584,000 18,556,000 2 222,028,000 2 222,028,000
防衛省 7 74,559,267 343,309 7 74,215,958 6 70,500,283 1 3,715,675
省庁計 195 3,468,769,729 18 559,071,338 177 2,909,698,391 40 974,369,411 101 1,381,951,546 36 553,377,434
株式会社日本政策金融公庫 2 52,149,571 24,000 2 52,125,571 1 47,366,571 1 4,759,000
独立行政法人国際協力機構有償資金協力部門 1 8,362,535 1 8,362,535 1 8,362,535
東日本高速道路株式会社 1 4,402,008 1 4,402,008 1 4,402,008
独立行政法人情報通信研究機構 1 12,952,955 1 12,952,955 1 12,952,955
独立行政法人農畜産業振興機構 1 3,194,264 2,170,000 1 1,024,264 1 1,024,264
独立行政法人国際交流基金 1 4,000,000 263,804 1 3,736,196 1 3,736,196
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 1 38,325,000 5,475,000 1 32,850,000 1 32,850,000
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 1 6,050,600 727,000 1 5,323,600 1 5,323,600
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 3 14,441,510 336,000 3 14,105,510 2 7,833,978 1 6,271,532
独立行政法人国立病院機構 10 33,086,708 8 6,796,871 2 26,289,837 1 865,726 1 25,424,111
独立行政法人中小企業基盤整備機構 2 79,978,464 2 79,978,464 2 79,978,464
独立行政法人国立がん研究センター 3 31,423,181 3 31,423,181 3 31,423,181
独立行政法人国立循環器病研究センター 1 649,364 220 1 649,144 1 649,144
独立行政法人国立国際医療研究センター 2 4,255,230 2 4,255,230 2 4,255,230
独立行政法人国立成育医療研究センター 1 824,170 1 824,170 1 824,170
国立大学法人筑波大学 1 14,613,197 822,118 1 13,791,079 1 13,791,079
国立大学法人京都大学 1 20,988,650 480,000 1 20,508,650 1 20,508,650
国立大学法人大阪大学 1 1,040,000 140,000 1 900,000 1 900,000
国立大学法人奈良教育大学 1 8,742,000 73,000 1 8,669,000 1 8,669,000
国立大学法人山口大学 1 120,198,228 1 120,198,228 1 120,198,228
日本放送協会 2 125,208,140 2 125,208,140 2 125,208,140
東日本電信電話株式会社 1 35,263,995 60,000 1 35,203,995 1 35,203,995
日本郵便株式会社 15 934,777,737 1 1,250,372 14 933,527,365 11 803,393,186 3 130,134,179
株式会社ゆうちょ銀行 135 4,229,396,526 11 639,385,883 124 3,590,010,643 124 3,590,010,643
株式会社かんぽ生命保険 127 2,359,493,929 7 141,212,255 120 2,218,281,674 120 2,218,281,674
独立行政法人農業者年金基金 2 3,162,408 200,000 2 2,962,408 2 2,962,408
団体計 274 8,146,980,370 22 799,416,523 252 7,347,563,847 229 6,884,797,185 12 270,056,647 11 192,710,015
総合計 469 11,615,750,099 40 1,358,487,861 429 10,257,262,238 269 7,859,166,596 113 1,652,008,193 47 746,087,449
注(1)
平成24年8月1日から25年7月31日までの是正措置の状況を記載しており、省庁等名は、25年7月31日現在の名称としている。
注(2)
日本郵便株式会社(平成24年10月1日に郵便事業株式会社を合併)、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険に係る債権は、日本郵政公社が19年10月1日に解散したことに伴い日本郵政公社が管理していた不当事項に係る債権を承継したものである。同債権については、複数の会社に承継されているものがあるため、各欄の団体の件数を合計しても、団体計には一致しない。
注(3)
是正措置が未済となっているもののうち、独立行政法人国際協力機構有償資金協力部門、独立行政法人中小企業基盤整備機構、東日本電信電話株式会社、日本郵便株式会社及び株式会社かんぽ生命保険の全件並びに株式会社日本政策金融公庫の1件47,366,571円及び株式会社ゆうちょ銀行の123件3,589,210,643円に係る債権については、償却等により資産計上から除外されているが、これらの団体は、当該債権の請求権を放棄しておらず、債権自体を引き続き管理している。

イ 金銭を返還させる是正措置が未済となっているものの現状

昭和21年度から平成22年度までの検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするもので25年7月末現在で是正措置が未済となっているものが、2(2)アのとおり、429件10,257,262,238円ある。これらに対する直近1年間(24年8月1日から25年7月31日まで)の是正措置の進捗状況及び債務者等の状況を態様別に示すと、次のとおりである(注9)

注(9)
債務者等が複数存在するために1件に複数の態様がある場合は、それぞれの態様に件数を計上しており、また、日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険については各社ごとに件数を計上しているため態様別の件数の計は429件と一致しない。
(ア) 債務者等が分割納付等を実施中であるもの省庁

105件 1,409,669,056円
団体 113件 2,951,257,826円

これらは分割納付等が行われているが、債務者等の資力により是正措置の進捗の度合いは区々となっている。また、これらに係る直近1年間の返還額(注10)は、省庁150,507,013円、団体25,478,027円となっている。

注(10)
直近1年間の返還額  元本に充当された額のみを含めており、延滞金等に充当された額は含めていない。
(イ) 債務者等に対する督促、資産調査等が行われているものの是正措置が進捗していないもの省庁

101件 1,105,132,846円
団体 178件 4,263,154,838円

これらは是正措置の完了に向け督促、資産調査等が行われているものの、是正措置が進捗していないものである。

このうち、団体における165件4,089,843,090円に係る債権については、償却等により資産計上から除外されているが、団体は、当該債権の請求権を放棄しておらず、債権自体を引き続き管理している。

(ウ) 債務者等が行方不明であるなどのため納付等の是正措置が進捗していないもの

省庁  18件  394,896,489円
団体  2件  133,151,183円

これらは、債務者等が行方不明又は収監中であるなどの理由により、是正措置が進捗していないものである。

3 本院の所見

2(2)イのとおり、是正措置が未済となっているものの中には、債務者等の資力が十分でなかったり、債務者等が行方不明であったりなどしているために、その回収が困難となっているものも存在するが、省庁等において、引き続き適切な債権管理を行うことなどにより、是正措置が適正かつ円滑に講じられることが肝要である。

本院は、是正措置が未済となっているものの状況について今後とも引き続き検査していくこととする。