会計検査院は、平成24年8月27日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月28日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。
国会、裁判所、内閣、内閣府、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省
東日本大震災からの復興等に対する事業に関する次の各事項
参議院決算委員会は、24年8月27日に検査を要請する旨の上記決議を行っているが、同日に「平成22年度決算審査措置要求決議」を行っている。
このうち、上記検査の要請に関する項目の内容は、次のとおりである。
平成23年度の東日本大震災復旧・復興関係経費の執行状況については、全体予算14兆9243億円のうち、翌年度繰越額が4兆7694億円、不用額が1兆1034億円と多額に上っており、予算の執行率は約6割にとどまった。特に、復興庁所管の経費1兆3141億円のうち1兆3101億円は執行されずに繰り越され、23年度における執行率は0.02%となっており、また、国土交通省所管の経費では、災害公営住宅等整備事業費1115億円のうち、執行額等はわずか3億円であり、残り1112億円が不用額として処理されるなど、復旧・復興関係予算の執行が当初の予定どおり進んでいない事態が明らかとなっている。
政府は、これらの事態が被災地における早期の復旧・復興や住民の生活再建の支障となることを認識し、事業の着手に必要な復興計画との調整等を速やかに実施した上で、迅速かつ円滑な予算執行に努めるべきである。また、予算の執行率が極端に低かった事業については、事業費の見積りが適切であったか検証するなどして必要な見直しを行い、多額の国民負担によって賄われている復旧・復興予算が適正、有効かつ効率的に活用されるよう、最善を尽くすべきである。
参議院は、25年5月20日に決算委員会において、平成22年度決算に関して内閣に対し警告すべきものと議決し、同月22日に本会議において内閣に対し警告することに決している。
この警告決議は、前記の検査を要請する旨の決議の翌年に行われたものであり、この警告決議のうち、前記検査の要請に関する項目の内容は、次のとおりである。
政府は、同経費の財源が増税による国民負担で賄われていることを強く認識して、その使途が被災地域それぞれの需要や期待に応えるものとなるよう的確に予算を措置し、これまでの支出の精査による見直し作業を更に進めるとともに、今後とも、住まいとなりわい再建を最優先に、予算の査定、事業実施箇所の選定等を厳格に行うべきである。
前記の要請により、本院は、東日本大震災からの復興等に対する事業に関して、効率性、有効性等の観点から、23年度に東日本大震災復興関係経費の予算が措置されている16府省庁等(注)を対象として、①東日本大震災に伴う被災等の状況、②復興等の各種施策及び支援事業の実施状況等について検査を実施し、24年10月25日に、会計検査院長から参議院議長に対して報告した(以下、この報告を「24年報告」という。)。
24年報告の検査の結果に対する所見において、本院としては、今後、各種事業が、円滑かつ迅速に実施されているか、東日本大震災からの復興の基本方針(以下「復興基本方針」という。)や復興計画に掲げられた施策に沿ったものとなっているか引き続き検査を実施するとともに、原子力災害からの復興再生についても着眼して検査を実施することとし、検査の結果については、取りまとめが出来次第報告することとした。
本院は、東日本大震災からの復旧・復興事業に関する各事項について、効率性、有効性等の観点から、①被災及び被災に対する復旧の状況はどのようなものとなっているか、また、被災者等に対する支援等はどのようになっているか、②東日本大震災復興特別会計(以下「復興特会」という。)において措置された復旧・復興予算はどのような経費に配分されているか、また、復興基本方針における復興施策等はどのような事業により実施されているか、③復旧・復興に係る各種事業は、支出等の執行状況や執行により生じた繰越しなどの状況からみて、円滑かつ迅速に実施されているか、繰越しとなっている事業の状況はどのようなものとなっているか、また、各種事業は復興基本方針等に掲げられた施策に沿ったものとなっているか、復旧・復興との関連性はどのようなものとなっているか、④被災した地方公共団体において、復興特別区域制度の復興推進計画、復興整備計画及び復興交付金事業計画の作成状況はどのようになっているか、また、これらの計画に基づく特例等はどのように活用されているか、⑤被災した地方公共団体において実施されている基金事業、復興交付金事業等の状況はどのようなものとなっているか、⑥原子力災害からの復興再生について、各府省庁等及び福島県が実施する各種施策の実施状況はどのようなものとなっているかなどに着眼して検査を行った。
本院は、25年次においては、23、24両年度に東日本大震災復興関係経費の予算が措置されている16府省庁等を24年報告に引き続き対象として検査するとともに、東日本大震災による被害を受けた地方公共団体については、「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」(平成23年法律第40号)等の規定に基づき青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県、新潟県及び長野県の計9県並びに東日本大震災による被害を受けた市町村で政令で定めるもの(以下「特定被災地方公共団体」という。)又は東日本大震災に際し災害救助法(昭和22年法律第118号)が適用された市町村のうち政令で定めるものなどの区域(以下「特定被災区域」という。)として指定された227市町村に、特定被災区域に指定された市町が所在しているが特定被災地方公共団体として指定されていない北海道及び埼玉県を加えた11道県及び227市町村(以下「特定被災自治体」という。)を対象として検査した。
特定被災自治体の検査に当たっては、被災等の状況や復旧・復興事業を実施している特定被災自治体の状況、検査の実効性等を総合的に考慮して、特定被災自治体のうち岩手県、宮城県及び福島県(以下「東北3県」という。)並びに東北3県の管内127市町村を除く、8道県及び100市町村を対象として会計実地検査を行った。また、福島県については、原子力災害による影響が甚大で、復興の妨げともなっていることから、除染、放射性物質汚染廃棄物の処理、健康管理等の事業の実施状況について、同県より説明を受けるなどの実態調査を実施した。
検査に当たっては、16府省庁等の内部部局等と上記の8道県及び100市町村に対して337人日を要して会計実地検査を行い、調書及び関係資料を徴したり担当者等から説明を聴取したりするとともに、公表されている資料等を基に調査分析を行った。
死者、行方不明者等の人的被害は、いまだ全容の把握に至っていないが、死者15,883人、行方不明者2,656人(25年8月9日現在)等となっていて、このほか、震災関連死の死者数が2,688人(25年3月31日現在)となっている。
避難所は23年12月末までにほぼ解消されているが、25年6月末現在、親族・知人宅や応急仮設住宅等において生活している避難者は、全国で約29万8000人に上ることが把握されている。このうち、東北3県の避難者数の割合は78.5%とその大多数を占め、特に福島県では、原子力発電所の事故等により、約5万3000人もの住民が他県等における長期の避難を余儀なくされている。
建物への被害は、全容の把握には至っていないが、全壊126,483戸、半壊272,287戸等(25年8月9日現在)となっている。
災害廃棄物等の量は、25年6月末現在、岩手県532万t、宮城県1796万t、福島県482万t、東北3県以外の10道県148万t、計2960万tとなっており、その大多数を東北3県が占めている。2960万tの処理・処分状況についてみると、岩手県293万t、宮城県1325万t、福島県212万t、東北3県以外の10道県141万t、計1973万tが処理・処分済みとなっている。
応急仮設住宅は、東北3県において53,312戸、その他の4県を合わせて計53,627戸の設置が必要とされており、25年4月1日現在、必要戸数の99.8%が完成したとしている。会計実地検査を行った100市町村においては、必要戸数315戸の全てが完成し、入居戸数は167戸、空き戸数は148戸、空き戸数のうち59戸は閉所となっていた。
災害弔慰金等の支給等の件数及び金額は、25年3月末現在、災害弔慰金19,257件、支給額573億余円、災害障害見舞金72件、支給額1億余円、災害援護資金26,833件、貸付額461億余円となっている。また、被災者生活再建支援金の支給世帯数及び支給額は、基礎支援金186,491世帯、1480億余円(国庫補助金相当額1184億余円)、加算支援金98,319世帯、1163億余円(同930億余円)、延べ284,810世帯、計2643億余円(同2115億余円)となっている。
国は、復興事業に関する経理を明確にすることを目的として、24年度に復興特会を設置し、当初予算3兆7753億余円、補正予算1兆1952億余円をそれぞれ措置するとともに、財源については、これまで確保されている19兆円程度に加えて、日本郵政株式会社の株式の売却収入として見込まれる4兆円程度等を確保することにより、計25兆円程度を確保することとしている。
また、福島対応体制の抜本的な強化策として、復興庁は、福島復興再生総局を福島現地に設置するとともに、福島復興再生総括本部を同庁に設置した。
国は、警戒区域を解除するとともに、放射線量の水準に応じて新たな避難指示区域への見直しを進め、2市6町3村の一部を避難指示解除準備区域に、1市4町3村の一部を居住制限区域に、1市4町2村の一部を帰還困難区域にそれぞれ再編している。
そして、除染は直ちに取り組む必要のある喫緊の課題であることから、国は、23年8月26日に除染に関する緊急実施基本方針を策定するとともに、同年8月30日に「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成23年法律第110号。以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)を公布し、計画的かつ抜本的に除染等を推進することとした。
また、原子力災害の被災者に対する支援として、国は、避難住民に係る事務を避難先の地方公共団体において処理することができる特例を設けるなどの法制度を整備するほか、復興基本方針や福島復興再生基本方針を踏まえて、災害公営住宅の入居資格の特例措置による居住の安定確保、健康不安対策等の各種の取組を実施している。
国は、東日本大震災からの復旧・復興に係る経費として、平成23年度一般会計第1次補正予算で4兆0153億余円、平成23年度一般会計第2次補正予算(以下「23年度2次補正」という。)で1兆9106億余円、平成23年度一般会計第3次補正予算(以下「23年度3次補正」という。)で9兆2438億余円を措置し、さらに、平成24年度東日本大震災復興特別会計当初予算(以下「24年度当初予算」という。)で3兆7753億余円、平成24年度東日本大震災復興特別会計補正予算(以下「24年度1次補正」という。)で1兆1952億余円を措置した(以下、24年度当初予算と24年度1次補正を合わせたものを「24年度復興特会」という。)。
24年度復興特会の財源についてみると、「復興公債金」2兆4033億余円、子ども手当等の歳出削減見合いなどの「一般会計より受入」1兆9999億余円、「復興特別法人税」5062億余円等が充てられている。
23年度一般会計の予備費及び23年度補正予算、24年度復興特会の歳出予算現額(歳出予算額(当初予算額、補正予算額及び予算移替額の合計)に、前年度繰越額、予備費使用額及び流用等増減額を加減したもの。以下「予算現額」という。)合計19兆8949億余円の24年度末時点における執行状況についてみると、支出済歳出額(以下「支出済額」という。)は15兆3644億余円、翌年度繰越額(以下「繰越額」という。)は2兆2030億余円、不用額は2兆3274億余円、また、支出済額の予算現額に対する割合(以下「執行率」という。)は77.2%、繰越額の予算現額に対する割合(以下「繰越率」という。)は11.0%、不用額の予算現額に対する割合(以下「不用率」という。)は11.6%となっている。
23年度一般会計の予算現額14兆9243億余円の24年度末時点における執行状況についてみると、支出済額は12兆2122億余円、23年度補正予算のうち翌年度繰越分(以下「23年度繰越分」という。)で、避け難い事故により24年度内に支出が終わらなかったため、25年度へ再度繰り越した額(以下「事故繰越額」という。)は5702億余円、不用額は2兆1417億余円、また、予算措置年度から現年度末までの累計の支出済額の予算現額に対する割合(以下「累計執行率」という。)は81.8%、事故繰越額の予算現額に対する割合は3.8%、予算措置年度から現年度末までの累計の不用額の予算現額に対する割合は14.3%となっている。
24年度復興特会の予算現額4兆9706億余円の24年度末時点における執行状況についてみると、支出済額は3兆1522億余円、繰越額は1兆6327億余円、不用額は1857億余円、また、執行率は63.4%、繰越率は32.8%、不用率は3.7%となっている。
23年度繰越分及び24年度復興特会による事業の実施方法別の予算現額、支出済額及び執行率についてみると、直轄は8194億余円、5098億余円及び62.2%、補助は3兆6643億余円、1兆6566億余円及び45.2%、直轄、補助等は1兆6361億余円、6049億余円及び36.9%となっている。また、補助(基金)、補助(運営費交付金)、出資等の執行率は、23年度繰越分及び24年度復興特会は共にほぼ100%となっている。
地方公共団体、公益法人及びその他団体が、国庫補助金等を既存の基金に積み増ししたり、新規に基金を設置造成したりして実施する各種復旧・復興事業(以下「復興関連基金事業」という。)100事業に対する国庫補助金等交付額は3兆1370億余円であり、既存の基金と復興関連基金事業とを区分して経理していない8事業及び25年8月末時点において国庫補助金等の交付を受けた地方公共団体、公益法人及びその他団体(以下「基金団体」という。)から国庫補助金等交付額の全額が国庫に返納された2事業の計10事業を除いた90事業についてみると、国庫補助金等交付額は計2兆8674億余円、24年度末時点における取崩額は計8244億余円、国庫補助金等交付額に対する取崩額の割合(以下「基金事業執行率」という。)は平均で28.7%となっている。また、90事業の基金事業執行率別の事業数をみると、90%以上となっているものが3事業ある一方、10%未満となっているものが40事業あった。
23年度3次補正繰越分の基金等を除いた復興施策等の執行状況についてみると、復興基本方針の「5 復興施策」の予算現額は2兆2490億余円、支出済額は1兆5741億余円、執行率は69.9%となっている。なお、「6 原子力災害からの復興」は基金等の事業はなく、予算現額は1822億余円、支出済額は324億余円、執行率は17.8%となっている。
そして、24年度復興特会の基金等を除いた復興施策等の執行状況についてみると、「5 復興施策」の予算現額は2兆4968億余円、支出済額は9912億余円、執行率は39.6%となっている。「6 原子力災害からの復興」の予算現額は500億余円、支出済額は152億余円、執行率は30.5%となっていた。
24年11月に、復興推進会議において「今後の復興関連予算に関する基本的な考え方」(以下「基本的な考え方」という。)が決定され、23年度3次補正及び24年度当初予算において各府省庁等が計上した事業のうち、35事業(168億余円)の執行を停止することとした。
執行を停止した35事業を年度別、復興施策等の事業別にみると、23年度3次補正14件、24年度当初予算31件となり、23年度3次補正の14件は不用額として計上し、24年度当初予算の31件は、24年度1次補正において、執行停止額を減額補正することにより執行を停止している。なお、これら45件の事業は、従来、一般会計予算により支出されていたものが多く含まれているため、45件のうち39件の事業に係る経費は、各府省において、改めて復興特会以外の一般会計等に計上して、実施されている。また、45件の事業のほかにも3件の事業が執行を停止している。
復興庁及び財務省から各府省庁等に発出された「復興関連予算で造成された全国向け事業に係る基金への対応について」(平成25年7月復本第957号・財計第1690号)により、基金の使途についても被災地又は被災者に対する事業に限定することとされたことから、25年8月末時点では、経済産業省において3基金の10事業に係る564億余円を基金団体から返還させて、これを国庫に返還している。
23、24両年度の復興事業計1,411件のうち、特別交付税等を除く1,401件を被災地域の復旧・復興及び被災者の暮らしの再生のための施策に関する事業等(以下「復興直結事業」という。)、被災地域と密接に関連する地域において、被災地域の復旧・復興のために一体不可分のものとして緊急に実施すべき施策に関する事業等(以下「復興関連事業」という。)又は復興直結事業及び復興関連事業と同様の施策のうち、東日本大震災を教訓として、全国的に緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災、減災等のための施策に関する事業等(以下「全国防災等事業」という。また、「復興関連事業」と「全国防災等事業」を合わせて「関連事業」という。)、復興直結事業と関連事業が混在している事業(以下「混在事業」という。)に3分類した上で、関連事業については津波対策事業等とその他事業に細分して、集計し、分析した。その結果、復興直結事業は計912件、関連事業は計353件、混在事業は計136件となっている。
東日本大震災に対する復興予算の執行状況についても検査を行ったところ、復旧・復興予算の透明性の確保や効果の発現が十分とは認められないものなどが見受けられた。
23年度一般会計予算及び24年度復興特会の執行状況について、経費項目別、事業別、実施方法別、復興施策別にみると、おおむね復旧・復興事業が進捗していることがうかがえる一方、津波によって甚大な被害を受けた沿岸地域や原子力発電所の事故に伴う除染に係る事業等、進捗していないものも見受けられる。このようなことから、国は、復旧・復興予算の執行に当たり、今後とも、関係行政機関等が実施する事業の進捗状況を的確に把握するとともに、施策の実施の推進及び総合調整を行いつつ、関係行政機関等との連絡調整を速やかに行い、復旧・復興事業が円滑かつ迅速に実施されるよう努める必要がある。
また、復興事業を実施する各府省庁等関係機関は、復興予算の計上や執行に当たり、効率性、有効性及び透明性の確保はもちろんのこと、事業の優先度等を適切に考慮するとともに当該事業に係る説明責任を果たすことが必要である。
道路事業者は、現場吹付法枠工の縦枠及び横枠(以下「枠本体」という。)に囲まれる部分(以下「枠内」という。)に、浸透水や湧水の状態、法面の勾配等を考慮し、雨水、湧水等(以下「雨水等」という。)による浸食や表層崩壊の防止、法面の緑化等の目的に応じて、植生基材、モルタル等を吹き付けるなどすることとしている(以下、枠内に吹き付けるなどする植生基材、モルタル等を総称して「中詰工」という。)。
復興推進計画66件に記載されている特例は、東日本大震災復興特別区域法(平成23年法律第122号)等において規定されている21の特例のうち14特例であり、特定被災自治体が作成して認定を受けた復興推進計画に記載された特例数は延べ75件、これらの特例の対象区域とされた市町村数は延べ817市町村となっていた。
復興整備協議会を設置した29市町村のうち、28市町村において復興整備計画が作成されていた。また、これらの復興整備計画には復興整備事業5事業に係る延べ612地区等が記載されており、これらはいずれも被害が甚大な東北3県に係るものとなっていた。また、事業別に地区等数が多い事業は、集団移転促進事業、都市施設の整備に関する事業、その他施設の整備に関する事業の順となっている。
復興庁が通知した計6回の交付可能額は、23年度2510億余円、24年度1兆3191億余円、25年度527億余円、合計1兆6228億余円と多額に上っている。また、事業別にみると、基幹事業に係る交付可能額は1兆4731億余円、効果促進事業に係る交付可能額は1497億余円となっている。
上記の交付可能額計1兆6228億余円を道県別にみると、甚大な被害があった東北3県及び東北3県内の68市町村に対する交付可能額計1兆5794億余円は、全体の97.3%を占めている。
40基幹事業について交付可能額からみると、国土交通省所管の災害公営住宅整備事業、防災集団移転促進事業及び道路事業が多額となっていて、住宅やまちづくりのための道路を整備する基幹事業が主に実施されている。
効果促進事業に係る計6回の東日本大震災復興交付金(以下「復興交付金」という。)の交付可能額は1497億余円となっている。この内訳をみると、個別の事業ごとに基幹事業との関連性の有無を判断して事業費が配分される効果促進事業に係る交付可能額は300億余円(効果促進事業に係る交付可能額全体に占める割合20.1%)、漁業集落復興効果促進事業に係る交付可能額は、市町村分57億余円(同3.8%)、道県分4億余円(同0.3%)、市街地復興効果促進事業に係る交付可能額は、市町村分1038億余円(同69.3%)、道県分95億余円(同6.3%)となっている。
会計実地検査を行った8道県及び100市町村に交付決定された23、24両年度の国庫補助金等は、復興関連基金事業に充てられる国庫補助金等交付決定額1270億余円、23年度2次補正で増額された特別交付税を基に創設された「取崩し型復興基金」(以下「復興基金」という。)による事業(以下「復興基金事業」という。)についての特別交付税交付額310億円、復興交付金交付可能額429億余円、補助事業等に係る国庫補助金等交付決定額2721億余円及び震災復興特別交付税交付額2809億余円の計7540億余円となっている。これらの資金のうち、繰越額等を除いた交付額等は6971億余円と多額に上っており、交付額等が全体に占める割合は、震災復興特別交付税が40.3%、補助事業等が30.8%、復興関連基金事業が18.2%などとなっている。また、交付額等のうち基金事業に係るものについてみると、復興関連基金事業が1270億余円、復興基金事業が310億円、復興交付金事業が429億余円となり、これらの3事業を合わせた交付額等は全体の28.7%を占めている。
8道県に対する復興関連基金事業に係る国庫補助金等交付額は、14基金で計1270億余円となっており、これら14基金により30事業を実施している。このうち、復興に係る基金事業執行率等を区分して把握することが困難な基金を除いた28事業の交付額等の状況についてみると、国庫補助金等交付額は計1249億余円、24年度末時点における取崩額は計531億余円、基金事業執行率は平均で42.4%となっている。
各復興関連基金事業の24年度末時点における基金事業執行率についてみると、4事業が90%を超えている一方、6事業が10%未満となっていて、著しい開差が見受けられた。
復興基金の創設のために措置された特別交付税1960億円についてみると、東北3県が計1650億円、会計実地検査を行ったその他の6県が計310億円となっていて、東北3県に対する措置額が突出している。また、その他の6県に措置された復興基金計310億円についてみると、6県の復興基金から管内計132市町村へ計175億余円が交付されることとなっている。
上記6県及び管内の交付対象市町村である132市町村のうち、24年度末までに復興基金事業を実施しているのは、千葉県及び長野県を除く4県並びに112市町村となっており、20市町村(交付済額計12億余円)は事業が実施されていなかった。
復興基金事業に措置された計310億円の24年度末時点における取崩しの状況は、4県が実施した64事業による取崩額が19億余円、112市町村が実施した530事業による支出及び取崩額が51億余円、計71億余円となっている。
基金を造成し、復興交付金事業計画の計画期間内にこれを取り崩して復興交付金事業を実施する方法を選択した4県及び26市町村における基幹事業に係る復興交付金基金造成額393億余円のうち、23、24両年度分に係る復興交付金基金造成額は119億余円、24年度末時点における取崩額は48億余円となっていて、復興交付金基金造成額に対する取崩額の割合は40.8%となっていた。
4県及び26市町村における復興交付金基金による基幹事業の件数は146件となっており、このうち、23、24両年度分の復興交付金に係る事業は102件となっていた。これらの進捗状況についてみると、おおむね工程表どおりに進捗している事業がある一方、完了時期を7か月以上延長している事業や、完了時期が未定となっている事業も見受けられた。
都市防災推進事業(市街地液状化対策事業)を実施している12市における液状化対策事業計画案作成事業14件の24年度末時点における進捗状況についてみると、その多くが地質調査や地盤解析の実施段階にあり、液状化対策工法の選定のための調査や検討に時間を要しているなどしている。
8道県及び100市町村に対する23年度補正予算により措置された補助事業等に係る国庫補助金等交付決定額は計2202億余円となっており、23年度末までの国庫補助金等交付決定額から事業完了後に生じた過不足額等を控除した最終の交付決定額に対する国庫補助金等交付額の割合(以下「補助事業執行率」という。)は43.8%であるが、24年度末までの補助事業執行率は92.4%と高くなっていた。
また、24年度復興特会により措置された補助事業等に係る国庫補助金等の交付を受けたものは8道県及び72市町村であり、国庫補助金等交付決定額は計518億余円、24年度末までの補助事業執行率は49.5%となっており、計252億余円が25年度に繰り越されている。
原子力災害関係の事業に係る経費項目別の予算現額は、23年度補正予算9808億余円、24年度復興特会5319億余円、計1兆5128億余円となり、また、23年度補正予算の累計執行率は79.8%、24年度復興特会の24年度末時点における執行率は38.7%となっている。
また、原子力災害関係の事業に係る経費のうち、補助等及び基金で実施している事業に係る支出済額(23年度補正予算5829億余円、24年度復興特会1156億余円)についてみると、23年度補正予算では4725億余円(81.0%)が、24年度復興特会では1135億余円(98.1%)が、それぞれ福島県及び管内市町村に対する補助金等として交付されている。
除染等の事業の執行状況をみると、23年度補正予算では、23年度末時点における執行率が59.9%、累計執行率が67.5%となっている。また、24年度復興特会では、24年度末時点における執行率が37.0%となっている。
健康管理・調査事業等に係る23年度補正予算の累計執行率は90.8%、24年度復興特会の24年度末時点における執行率は47.8%となっている。
健康管理・調査事業等のうち、基金で実施している事業は、23年度補正予算では9事業、24年度復興特会では3事業、計12事業となっており、事業費も多額となっている。このうち、最も予算現額が多額となっている基金の分類は「健康管理」の961億余円で、次に多額となっている「施設整備」の805億余円と合わせると全体の80.9%を占めている。
そして、24年度末時点における基金の取崩しの状況等をみると、基金事業執行率は全体で30.3%となっている。
国は、原子力災害からの復興再生については、国政の最重要課題と位置付けて、被災者等に対する各種支援や放射性物質汚染対処特措法等に基づく健康管理・調査事業や除染等の様々な取組を実施している。原子力災害関係の事業に係る経費の23、24両年度の予算現額は、計1兆5128億余円と多額に上っており、国は、自ら取り組むとともに、被災した地方公共団体が行う取組を総力を挙げて支援することとしている。一方、福島県を始めとする被災した地方公共団体では、今まで経験したことのない原子力災害に対して膨大な事業及び予算を執行しており、国からの支援、特に、長期的かつ確実な財源の支援や各種制度の支援を望むとともに、人的支援を望んでいる。
本院は、24年次に引き続き、東日本大震災からの復旧・復興に対する事業について検査を行った。国及び地方公共団体は、現在全力を挙げて復旧・復興に取り組んでいるところであるが、東日本大震災から2年半以上を経過した今もなお、多くの住民は仮設住宅での不自由で困難な生活を余儀なくされており、地方公共団体は膨大な復旧・復興事業に取り組んでいる。特に、原子力災害からの復興再生については長期にわたることが予想されていて、地方公共団体は除染や健康管理等の事業を執行する一方、風評被害に苦しめられているなど、被災地の社会経済の再生や生活の再建に向けた課題は数多く、これらを解決するには多くの困難がある。
このため、復旧・復興のための施策は、被災地に暮らす国民の声に配慮して迅速に実施することが不可欠であり、復興庁及び関係府省等は連携して、国及び地方公共団体が行う施策が、基本理念に即して、更なる復旧・復興の進展につながるよう、今後、次の点に留意して、復興施策の推進及び支援に適切に取り組む必要がある。
本院としては、国会からの検査要請後、できる限り速やかに報告を行うこととして、24年10月に、被災の状況、復旧・復興事業の実施状況等について23年度予算を中心に報告を行った。本報告では、引き続き、被災の状況や、東日本大震災からの復旧・復興事業のうち23年度予算の繰越しとなっている事業及び24年度復興特会に係る事業について、その経費項目別、事業別等の実施状況や一部の特定被災自治体を除く地方公共団体における復旧・復興事業の執行状況を分析するとともに、原子力災害からの復興再生については、関係する事業の実施状況を分析して報告することとした。そして、東日本大震災関係経費により実施される復旧・復興事業は、各府省庁や特定被災自治体等において長期にわたり継続して実施されていること、復興事業の実施に係る諸制度の見直しなどが想定されることなどから、次年次以降は東北3県を含めた被災の状況及び復興事業の実施状況等について引き続き検査を実施して、その結果については取りまとめが出来次第報告することとする。