東日本大震災では、13道県(注1)239市町村において総量約1931万tの災害廃棄物に加えて、沿岸部において津波による土砂及び泥状物(以下、これらを「津波堆積物」という。)総量約1028万tが発生したと推計され、これらの災害廃棄物及び津波堆積物(以下「災害廃棄物等」という。)の推計量(注2)の合計約2960万tについて処理が必要となっている。特に、岩手、宮城及び福島の3県での津波による被害は大きく、3県の災害廃棄物等の推計量の合計約2811万tは、13道県全体の95%と膨大な量となった。
従来、災害により発生した廃棄物の処理の主体は市町村とされているが、東日本大震災により発生した膨大な量の災害廃棄物等の処理に当たって、環境省は、国、県及び市町村の連携が必要であるとして、平成23年5月に、「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針(マスタープラン)」(以下「マスタープラン」という。)を策定し、国、県及び市町村の役割や、財政措置、中間処理・最終処分を25年度末を目途に行うなどの方針を示している。その後、23年8月施行の「東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法」(平成23年法律第99号。以下「災害廃棄物処理特措法」という。)では、国が処理に関する基本的な方針や工程表を定めること、国が被害を受けた市町村に代わって災害廃棄物を処理(以下「国の代行処理」という。)できること、市町村負担の軽減を図ることなどが規定された。
東日本大震災では、東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)において甚大な被害が生じて、大規模な放射能漏れ事故が発生した。そして、環境省は、23年5月に当面の措置として、福島県内の災害廃棄物については警戒区域(注3)及び計画的避難区域(注4)に係るものは移動及び処分を行わないこととし、その他の地域についても、会津地方に係るものを除き処分を行わないこととした。その後、「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」を同年6月に策定し、災害廃棄物の処理に当たり、放射性物質による汚染の程度が高いものがある場合等においては、適切な方法で一時保管を行いつつ、国において処理方法を検討することや、汚染の程度が著しく低いものでない限り、基本的に当面の間、福島県内で処理を行うなどの方針を示した。
同年8月には「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成23年法律第110号。24年1月1日全面施行。以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)が成立して、放射性物質により汚染された廃棄物の処理について国等が講ずべき措置等が定められた。その中で、国は、汚染廃棄物対策地域(以下「対策地域」という。)を指定し、対策地域内廃棄物処理計画を定めた上で、この計画に従って、対策地域内の廃棄物の収集、運搬、保管及び処分を行わなければならないこととされた。そして、国は、福島県内の特定の区域を対策地域に指定し、対策地域内の廃棄物を国が処理(以下「国の直轄処理」という。)することとしている。
岩手、宮城両県内での処理が困難とされた災害廃棄物は県外で処理を行う広域処理の対象とされていて、国は、マスタープラン等において広域処理の支援を行うこととされている。そして、環境省は、震災後の早い段階で広域処理の実施を検討していたが、災害廃棄物の放射性物質による汚染を危惧する意見があったことなどから、23年8月に災害廃棄物の広域処理における安全性の考え方等を示すガイドラインを策定した。その後、広域処理推進会議の開催や受入れの調査等の取組を経て、24年3月には災害廃棄物処理特措法に基づき、内閣総理大臣及び環境大臣から都道府県知事等に対して、文書により広域処理についての具体的な協力を要請した。
災害廃棄物等の処理事業に係る予算は、23年度については、一般会計第1次補正予算及び第3次補正予算により計7778億余円が措置されたが、その55.2%に当たる4293億余円が翌年度に繰り越された。24年度については、東日本大震災復興特別会計(以下「復興特別会計」という。)により計4156億余円が措置されており、上記の23年度からの繰越額と合計すると8450億余円となる(以下、23年度一般会計第1次補正予算、同第3次補正予算及び復興特別会計により措置された予算を「復旧・復興予算」といい、それ以外を「通常予算」という。)。
東日本大震災で発生した災害廃棄物等の処理事業について、24年次は、環境省、岩手、宮城両県において処理の計画や進捗状況を中心に会計実地検査を行い、平成23年度決算検査報告において、処理の進捗状況や国庫補助金の執行状況等について掲記したところである。
25年次は、24年次に引き続き、合規性、有効性等の観点から、災害廃棄物等の処理は計画どおり進捗しているか、処理事業に係る予算の執行は適切に行われているか、広域処理及び広域処理の受入れに関連する廃棄物処理施設の整備等の状況はどのようになっているかなどに着眼して検査を行った。
本院は、23、24両年度に実施された災害廃棄物等の処理事業を対象に、環境本省、福島県等10道県(注5)及び10道県管内の44市町村等並びに広域処理の受入れに関連する廃棄物処理施設に係る循環型社会形成推進交付金が交付された市町等のうち10市町等(注6)において会計実地検査を行った。なお、岩手、宮城両県については、処理の進捗状況等に関して環境本省において検査を行った。
検査に当たっては、災害廃棄物等の処理に係る契約の状況等について作成を依頼して提出を受けた調書や決算関係の書類によるなどした。また、福島県管内の17市町村等及び上記10市町等のほかに広域処理に係る循環型社会形成推進交付金の交付を受けた5市等(注7)からも調書等の提出を受けて検査を行った。
13道県における25年6月末時点の災害廃棄物等の処理の進捗状況は、表1のとおり、岩手、宮城及び福島の3県を除いてほぼ処理が完了している。
表1 13道県に係る災害廃棄物等の処理状況(平成25年6月末現在)
道県名 | 災害廃棄物等(全体) | 災害廃棄物 | 津波堆積物 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
推計量(千t ) | 処理量(千t ) | 処理割合(%) | 市町村数 | 災害廃棄物推計量(千t ) | 処理済市町村数 | 災害廃棄物処理計(千t ) | 処理割合(%) | 市町村数 | 津波堆積物推計量(千t ) | 処理済市町村数 | 津波堆積物処理計(千t ) | 処理割合(%) | |
北海道 | 8 | 8 | 100 | 20 | 8 | 20 | 8 | 100 | 0 | — | 0 | — | — |
青森県 | 179 | 179 | 100 | 6 | 124 | 6 | 124 | 100 | 2 | 55 | 2 | 55 | 100 |
岩手県 | 5,324 | 2,939 | 55 | 19 | 3,836 | 6 | 2,419 | 63 | 11 | 1,488 | 2 | 520 | 35 |
宮城県 | 17,965 | 13,252 | 74 | 34 | 11,079 | 17 | 9,170 | 83 | 14 | 6,886 | 2 | 4,082 | 59 |
福島県 | 4,829 | 2,129 | 44 | 39 | 2,985 | 15 | 1,703 | 57 | 5 | 1,845 | 1 | 426 | 23 |
茨城県 | 870 | 805 | 93 | 44 | 868 | 34 | 803 | 92 | 3 | 2 | 3 | 2 | 100 |
栃木県 | 221 | 220 | 99 | 26 | 221 | 23 | 220 | 99 | 0 | — | 0 | — | — |
群馬県 | 4 | 4 | 100 | 6 | 4 | 6 | 4 | 100 | 0 | — | 0 | — | — |
埼玉県 | 7 | 7 | 100 | 9 | 7 | 9 | 7 | 100 | 0 | — | 0 | — | — |
千葉県 | 138 | 136 | 98 | 31 | 127 | 26 | 125 | 98 | 1 | 11 | 1 | 11 | 100 |
新潟県 | 35 | 35 | 100 | 3 | 35 | 3 | 35 | 100 | 0 | — | 0 | — | — |
静岡県 | 1 | 1 | 100 | 1 | 1 | 1 | 1 | 100 | 0 | — | 0 | — | — |
長野県 | 22 | 22 | 100 | 1 | 22 | 1 | 22 | 100 | 0 | — | 0 | — | — |
計 | 29,603 | 19,735 | 67 | 239 | 19,316 | 167 | 14,639 | 76 | 36 | 10,287 | 11 | 5,096 | 50 |
環境省は、岩手、宮城両県については、24年7月末の処理割合が14%及び20%であったものが、55%及び74%と増加しており、目標である25年度末での処理の完了が可能であるとしている。しかし、福島県については、対策地域を除いても処理割合がいまだ44%となっており、25年度末までに処理を完了させることは困難な状況であるとしている。
災害廃棄物等の処理事業に係る23、24両年度の予算は、表2のとおり、23年度措置分7778億余円(うち4293億余円は24年度へ繰越し)及び24年度措置分の4156億余円の計1兆1934億余円であり、これに対する支出済額は6916億余円(上記予算の58.0%)となっている。
表2 災害廃棄物等の処理事業に係る予算
区分 | 平成23年度一般会計 | 平成24年度復興特別会計 |
---|---|---|
放射性物質汚染廃棄物処理事業費 | 26,882,405 | 52,826,160 |
災害等廃棄物処理事業費 | 4,769,000 | 16,068,039 |
災害等廃棄物処理事業費補助金 | 664,903,695 | 295,842,497 |
災害廃棄物処理促進費補助金 | 67,963,526 | 32,137,009 |
循環型社会形成推進交付金 | 13,041,000 | 18,614,000 |
災害廃棄物広域処理等支援事業 | 250,161 | 197,933 |
計 | 777,809,787 | 415,685,638 |
そして、主な予算の執行状況は次のとおりとなっている。
国の直轄処理に係る放射性物質汚染廃棄物処理事業費については、表3のとおり、23年度一般会計の歳出予算現額268億8240万余円の99.9%に当たる268億6262万余円が24年度に繰り越されており、このうち246億余円(繰越額全体の91.8%)が24年度において不用額となっている。また、24年度復興特別会計についても、歳出予算現額528億余円の97.6%に当たる515億余円が25年度に繰り越されている。
表3 放射性物質汚染廃棄物処理事業費の予算の執行状況
年度 | 会計 | 歳出予算現額(A) | 支出済額(B) (B/A) |
翌年度繰越額(C) (C/A) |
不用額(D) (D/A) |
---|---|---|---|---|---|
平成23 | 一般会計 | 26,882,405 | 18,842 (0.1%) |
26,862,628 (99.9%) |
934 (0.0%) |
24 | 一般会計 (平成23年度予算繰越額) |
26,862,628 | 2,142,278 (8.0%) |
50,283 (0.2%) |
24,670,065 (91.8%) |
復興特別会計 | 52,826,160 | 604,024 (1.1%) |
51,563,199 (97.6%) |
658,936 (1.2%) |
|
計 | 79,688,788 | 2,746,303 (3.4%) |
51,613,482 (64.8%) |
25,329,002 (31.8%) |
国の代行処理に係る災害等廃棄物処理事業費については、表4のとおり、23年度一般会計の歳出予算現額47億余円の全額が24年度に繰り越されている。また、24年度復興特別会計についても歳出予算現額160億余円の88.9%に当たる142億余円が25年度に繰り越されている。
表4 災害等廃棄物処理事業費の予算の執行状況
年度 | 会計 | 歳出予算現額(A) | 支出済額(B) (B/A) |
翌年度繰越額(C) (C/A) |
不用額(D) (D/A) |
---|---|---|---|---|---|
平成23 | 一般会計 | 4,769,000 | — (—) |
4,769,000 (100.0%) |
— (—) |
24 | 一般会計 (平成23年度予算繰越額) |
4,769,000 | 4,371,796 (91.7%) |
— (—) |
397,203 (8.3%) |
復興特別会計 | 16,068,039 | 1,612,006 (10.0%) |
14,289,543 (88.9%) |
166,489 (1.0%) |
|
計 | 20,837,039 | 5,983,803 (28.7%) |
14,289,543 (68.6%) |
563,692 (2.7%) |
環境省は、市町村等が行う災害廃棄物等の処理事業に対して災害等廃棄物処理事業費補助金(以下「事業費補助金」という。)を交付している。また、事業費補助金の上乗せ分として基金制度を用いて災害廃棄物処理促進費補助金(以下「促進費補助金」という。)を特定被災地方公共団体(注8)に該当する市町村(以下「特定被災市町村」という。)が所在する道県に交付している。
国庫補助事業に係る23、24両年度の予算の執行状況は、表5及び表6のとおりとなっている。このうち、事業費補助金についてみると、表5のとおり、交付決定額は23、24両年度でほぼ同程度であり、また、交付決定額に対する支出済額も23、24両年度でほぼ同程度となっている。23年度の地方繰越額982億余円のうち981億余円は、岩手、宮城及び福島の3県に係るものとなっており、当該繰越額については24年度において執行後、更に304億余円が事故繰越しとして25年度へ繰り越されている。3県を除く10道県においては、23、24両年度においてほぼ交付決定どおりに支出されている。
表5 事業費補助金の予算の執行状況
年度 | 会計 | 歳出予算現額 | 交付決定額(A) | 支出済額(B) (B/A) |
地方度繰越額(C) (C/A) |
不用額(D) (D/A) |
---|---|---|---|---|---|---|
平成23 | 一般会計 | 664,903,695 | 365,936,662 | 267,649,529 (73.1%) |
98,272,728 (26.9%) |
14,405 |
24 | 一般会計 (平成23年度予算繰越額) |
372,337,919 | 273,808,419 | 214,557,645 | 57,957,023 | 1,293,751 |
復興特別会計 | 295,842,497 | 54,781,287 | 44,619,567 | 9,647,092 | 514,628 | |
計 | 668,180,416 | 328,589,706 | 259,177,212 (78.9%) |
67,604,115 (20.6%) |
1,808,379 |
表6 促進費補助金の予算の執行状況
年度 | 会計 | 歳出予算現額(A) | 交付決定額(B) (B/A) |
支出済額(C) (=基金造成額) (C/B) |
基金から市町村へ 交付された額(D) (D/C) |
---|---|---|---|---|---|
平成23 | 一般会計 | 67,963,526 | 50,886,965 (74.9%) | 50,886,965 (100.0%) | 36,413,027 (71.6%) |
24 | 一般会計 (平成23年度予算繰越額) |
17,076,561 | 21,106,622 (42.9%) |
21,106,622 (100.0%) |
15,792,052 (74.8%) |
復興特別会計 | 32,137,009 | ||||
計 | 49,213,570 |
復旧・復興予算の循環型社会形成推進交付金は、特定被災市町村等が行う廃棄物処理施設の整備と広域処理に関連して市町村等が整備する災害廃棄物の受入可能施設等の整備の両方に対して交付されており、同交付金の執行状況は表7のとおりとなっている。
表7 循環型社会形成推進交付金の予算の執行状況
年度 | 会計 | 歳出予算現額(A) | 支出済額(B) (B/A) |
翌年度繰越額(C) (C/A) |
不用額(D) (D/A) |
---|---|---|---|---|---|
平成23 | 一般会計 | 13,041,000 | 4,757,138 (36.5%) | 8,277,306 (63.5%) | 6,556 (0.1%) |
24 | 一般会計 (平成23年度予算繰越額) |
8,277,306 | 1,485,010 (17.9%) |
— (—) |
6,792,296 (82.1%) |
復興特別会計 | 18,614,000 | 15,119,942 (81.2%) |
137,965 (0.7%) |
3,356,093 (18.0%) |
|
計 | 26,891,306 | 16,604,952 (61.7%) |
137,965 (0.5%) |
10,148,389 (37.7%) |
福島県内については、図のとおり、国の直轄処理及び代行処理が行われている区域と、そのほか市町村等による処理が行われている区域があり、いずれもマスタープラン等では25年度末までを目途に処理を行うこととされていた。なお、環境省は25年9月に福島県内全体の処理の見通しを明らかにしており、25年度末までに処理を完了させるとした従来の目標を見直すこととしている。
図 国の直轄処理及び代行処理が行われている区域を含む市町村
国の直轄処理の対象は、対策地域に指定されている楢葉、富岡、大熊、双葉、浪江各町及び葛尾、飯舘両村の全域並びに田村、南相馬両市、川俣町及び川内村の区域のうち23年12月28日時点で警戒区域又は計画的避難区域であった区域とされており、環境省は、直ちに廃棄物を処理する予定がないとしている双葉町を除く10市町村を対象として、24年6月に対策地域内廃棄物処理計画を策定した。この計画では、対策地域内の災害廃棄物の推計量は、主に沿岸部の市町に係る約47万tとされており、当該災害廃棄物について、空間線量率(注9)が特に高い地域を除き、沿岸部の各市町に仮置場を確保することを前提として、24年度内を目途に仮置場へ搬入して、25年度末までの処理を目指すなどとされていた。
環境省が国の直轄処理として24年度末までに締結して実施した契約は、計84件、支払金額計21億4204万余円であり、その主な対象市町村別、業務内容別の内訳は表8のとおりとなっている。金額と処理の進捗が必ずしも相関するものではないが、災害廃棄物の発生量が多い沿岸部の比較的空間線量率が低い地域について契約件数及び金額が多くなっている。
表8 国の直轄処理に係る契約
業務
内容 \
市町村
|
①仮置場の設置等に係る業務 | ②災害廃棄物の収集・運搬等に係る業務 | ③災害廃棄物の選別等に係る業務 | ④中間処理に係る業務 | ⑤中間処理後の処分に係る業務 | その他 | 計 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
調査業務 測量業務 整備工事 等 |
調査業務 建物解体工事 収集・運搬業務 等 |
選別業務 仮置場管理業務 等 |
焼却業務 調査業務 等 |
埋立処分業務 等 |
調査・設計業務 物品購入 その他分類し難 い業務 |
|||||||||
件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | |
南相馬市 | 9 | 702,328 | 11 | 301,708 | 3 | 259,295 | 1 | 975 | — | — | 2 | 16,878 | 26 | 1,281,187 |
浪江町 | 1 | 777 | 1 | 945 | — | — | — | — | — | — | — | — | 2 | 1,722 |
富岡町 | 1 | 897 | 2 | 1,354 | — | — | — | — | — | — | — | — | 3 | 2,252 |
楢葉町 | 4 | 328,769 | 7 | 69,160 | 2 | 134,925 | 1 | 11,387 | — | — | 1 | 110 | 15 | 544,353 |
川俣町 | — | — | 1 | 2,488 | — | — | — | — | — | — | — | — | 1 | 2,488 |
田村市 | — | — | 1 | 843 | — | — | — | — | — | — | — | — | 1 | 843 |
川内村 | 2 | 33,029 | 1 | 262 | — | — | — | — | — | — | 2 | 609 | 5 | 33,901 |
全域等 | 1 | 925 | 1 | 315 | — | — | — | — | — | — | 29 | 274,053 | 31 | 275,293 |
計 | 18 | 1,066,727 | 25 | 377,077 | 5 | 394,220 | 2 | 12,363 | — | — | 34 | 291,651 | 84 | 2,142,040 |
この業務内容についてみると、その多くは仮置場の設置や災害廃棄物の収集及び運搬といった初期工程にとどまっていた。これは、仮置場、仮設処理施設等の設置に係る関係市町村との調整に時間を要しているなどのためである。
そして、24年度末時点の仮置場の状況については、3市町村の3か所が供用されているのみで、仮置場に搬入された災害廃棄物の量は、前記の推計量約47万tの0.5%に当たる約2,200tにとどまっており、25年度末までに処理を完了させることは困難な状況となっている。
25年6月末時点で環境省に対して国の代行処理の要請を行っている市町は、相馬市、新地町(いずれも24年3月に要請)及び広野町(25年1月に要請)の3市町となっていて、このほか、南相馬市については、仮設処理施設の設置場所等について調整中であり、調整後に要請が行われる見込みとなっている。
3市町に係る要請の内容は、焼却から最終処分までとなっており、事業工程によれば、相馬市及び新地町については、25年度に焼却処理を完了して26年度に仮設処理施設の解体撤去及び原状回復を行うこととされている。また、広野町については、仮設処理施設の設置工事を経て27年度から処理を開始することとされている。
環境省が国の代行処理として24年度末までに締結して実施した契約は、相馬市及び新地町の処理に係る仮設焼却炉3基の建築工事に係る契約1件(支払金額43億6980万余円)とこれに付随する少額の契約2件の合計3件のみとなっていた。
25年6月末までに、上記の仮設焼却炉において焼却処理が行われていたのは相馬市に係る可燃物等の一部のみとなっているが、相馬市及び新地町については、前記の事業工程のとおり完了する予定となっている。そして、仮設焼却炉で発生する焼却灰については、環境省が対策地域内の富岡町との間で、同町内所在の最終処分場の利用に向けて調整を行っているところである。なお、広野町については、処理の開始が27年度とされていること、南相馬市については、25年6月末時点で代行処理の要請を行っていないことから、広野町及び南相馬市では、25年度末までに処理を完了させることは困難な状況となっている。
福島県内においては、国の直轄処理や代行処理を除き、各市町村等が、自ら策定した計画に基づき処理を進めている。そして、25年6月末時点の災害廃棄物等の処理の進捗状況についてみたところ、災害廃棄物等の発生量は、沿岸部のいわき市、南相馬市及び相馬市や、内陸部の郡山市及び福島市で多くなっており、主にこれらの市において処理が遅れている状況となっている。
環境省は、事業費補助金等の補助の対象となる経費について、損壊家屋等の解体工事費、仮置場等に係る仮設工事費、収集・運搬費、処理・処分費等と定めている。このうち損壊家屋等の解体工事費については、東日本大震災の発生後に、各事業主体による災害廃棄物等処理事業が迅速に実施されるよう特例として認めた経費である。福島県管内の24市町村等に係る補助事業の実施状況について、23年度の事業費補助金(24年度への繰越分も含む。)の実績報告書等を基に、事業の内容別に事業費を集計すると表9のとおりである。
表9 福島県管内の24市町村等に係る補助事業の実施状況
事業主体/事業の内容 | 総事業費 | 解体工事、解体工事に伴う運搬、処理等に係る事業 | 収集・運搬に係る事業 | 仮置場の維持管理、仮置場等における分別作業等に係る事業 | 処理、処分、リサイクル等に係る事業 | 分類し難い事業、複数の業務にまたがる事業等 |
---|---|---|---|---|---|---|
福島県の沿岸部 (5事業主体) (総事業費に占める割合) |
19,396,267 (100.0%) |
7,592,535 (39.1%) |
6,233,504 (32.1%) |
2,022,463 (10.4%) |
3,373,094 (17.4%) |
174,669 (0.9%) |
福島県の内陸部 (19事業主体) (総事業費に占める割合) |
15,395,679 (100.0%) |
12,211,061 (79.3%) |
552,599 (3.6%) |
713,361 (4.6%) |
1,903,075 (12.4%) |
15,580 (0.1%) |
計 (総事業費に占める割合) |
34,791,946 (100.0%) |
19,803,597 (56.9%) |
6,786,103 (19.5%) |
2,735,825 (7.9%) |
5,276,170 (15.2%) |
190,249 (0.5%) |
事業の内容をみると、特例として補助対象とされた損壊家屋等の「解体工事、解体工事に伴う運搬、処理等に係る事業」の割合が最も高く、全体の56.9%を占めている状況となっている。また、事業主体を沿岸部と内陸部に分けて事業の内容をみると、内陸部では沿岸部に比べると津波による影響が少ないため、損壊家屋等の解体に係る事業の割合が高くなっているなど、地域により災害廃棄物等の内容等が大きく異なることがうかがえる。さらに、表10の北海道等7道県と比べた場合には、「処理、処分、リサイクル等に係る事業」の割合が低くなっており、処理が遅れていることがうかがえる。
表10 7道県管内の27市町村に係る補助事業の実施状況
事業主体/事業の内容 | 総事業費 | 解体工事、解体工事に伴う運搬、処理等に係る事業 | 収集・運搬に係る事業 | 仮置場の維持管理、仮置場等における分別作業等に係る事業 | 処理、処分、リサイクル等に係る事業 | 分類し難い事業、複数の業務にまたがる事業等 |
---|---|---|---|---|---|---|
北海道( 1 事業主体) (総事業費に占める割合) |
189,832 (100.0%) |
— (—) |
107,382 (56.6%) |
— (—) |
82,449 (43.4%) |
— (—) |
青森県( 3 事業主体) (総事業費に占める割合) |
3,134,915 (100.0%) |
344,233 (11.0%) |
796,264 (25.4%) |
723,058 (23.1%) |
1,271,359 (40.6%) |
— (—) |
茨城県(12 事業主体) (総事業費に占める割合) |
6,547,458 (100.0%) |
1,160,651 (17.7%) |
826,410 (12.6%) |
627,918 (9.6%) |
3,919,403 (59.9%) |
13,074 (0.2%) |
栃木県( 4 事業主体) (総事業費に占める割合) |
667,909 (100.0%) |
— (—) |
138,045 (20.7%) |
142,317 (21.3%) |
379,462 (56.8%) |
8,084 (1.2%) |
千葉県( 4 事業主体) (総事業費に占める割合) |
2,383,793 (100.0%) |
— (—) |
514,730 (21.6%) |
1,069,420 (44.9%) |
794,688 (33.3%) |
4,954 (0.2%) |
新潟県( 2 事業主体) (総事業費に占める割合) |
402,789 (100.0%) |
234,255 (58.2%) |
2,579 (0.6%) |
29,922 (7.4%) |
133,496 (33.1%) |
2,535 (0.6%) |
長野県( 1 事業主体) (総事業費に占める割合) |
648,089 (100.0%) |
310,051 (47.8%) |
157,134 (24.2%) |
22,087 (3.4%) |
158,533 (24.5%) |
283 (0.0%) |
計 (総事業費に占める割合) |
13,974,789 (100.0%) |
2,049,190 (14.7%) |
2,542,547 (18.2%) |
2,614,724 (18.7%) |
6,739,394 (48.2%) |
28,931 (0.2%) |
福島第一原発の事故の影響について、福島県等から状況を聴取するなどしたところ、次のとおりとなっていた。
仮置場の確保については、放射性物質で汚染された災害廃棄物等が住宅近くに搬入され、保管されることへの住民の不安が根強く、仮置場用地を確保することが困難であり、また、確保できた仮置場でも、限られた地区の災害廃棄物等しか搬入できないなどの制約があり、集約的な処理のための適切な場所が確保できない状況となっている。
再生利用を含む廃棄物の中間処理や最終処分を行う廃棄物処理業者への災害廃棄物等の引渡しについては、放射性物質による汚染の状況が指定廃棄物(注10)に該当しない8,000Bq(注11)/㎏以下である廃棄物であっても、廃棄物処理業者が独自の基準を採用するなどして受入れを拒否する場合もあるため、災害廃棄物の種類によっては引渡しが難しい状況となっている。
指定廃棄物に該当する焼却灰については、国の処理のめどが立っていないため、事業主体が最終処分場等で焼却灰を保管している状況となっていた。また、国の方針では、8,000Bq/㎏以下の場合には埋立処分が可能とされているが、埋立てについて周辺住民の理解が得られず、焼却施設の敷地内等に一時保管を行っている事業主体も見受けられた。
災害廃棄物等の推計量と広域処理を必要とする量(以下「広域処理必要量」という。)は、随時見直しが行われてきている。岩手、宮城両県の広域処理必要量は、当初、それぞれ約57万t、約344万tの計約401万tであったものが、解体家屋数の精査、県内処理の拡大等により、表11のとおり、25年7月の環境省の公表によればそれぞれ約29万t、約31万tの計約61万tとなっており、大幅に減少している。
この広域処理必要量約61万tに対して、同時点において環境省が把握している広域処理調整済み(実施済み、実施中又は受入量決定済み)に係る都府県は、24年3月時点の1都3県から1都1府15県へと拡大しており、その受入見込量は約61万tとなっていて、全て受入れ済み又は受入れが見込まれる状況となっている。なお、広域処理必要量が全て処理された場合でも、災害廃棄物における広域処理の割合は岩手、宮城両県で2.6%となり、阪神・淡路大震災時の10.1%を下回ることになる。
表11 広域処理必要量の推計量に占める割合
岩手県 | 宮城県 | 計 | 阪神・淡路大震災(参考)(注) | |
---|---|---|---|---|
推計量全体(a) | 532 | 1,796 | 2,328 | 1,429 |
広域処理必要量(b) | 29 | 31 | 61 | 143 |
推計量全体に占める割合(b/a) | 5.5% | 1.8% | 2.6% | 10.1% |
なお、このような広域処理必要量の見直しの過程で、24年8月には環境省から関係都道府県等に対して、可燃物等については新たな受入先の調整は行わないなどの方針が明らかにされ、災害廃棄物処理特措法に基づく要請から約4か月という短期間で、可燃物等の処理については一応のめどが立ったとされた。
広域処理は搬出側市町村の災害廃棄物処理事業として実施されるため、その費用は搬出側市町村が支出するが、前記の国庫補助等により、実質的には国が負担することとなっている。一方、広域処理に関連して受入側市町村等が整備する災害廃棄物の受入可能施設等に対して、復旧・復興予算から循環型社会形成推進交付金が交付されている。
循環型社会形成推進交付金は、市町村等が事業主体となり、循環型社会形成の推進に必要な焼却施設や最終処分場等の廃棄物処理施設の整備事業を実施する経費に充てるために国から交付されるものであり、交付率は交付対象事業費の3分の1(一部の事業については2分の1)とされている。そして、同交付金が通常予算から交付される場合、事業主体は、自己負担分を起債等により確保することになるが、復旧・復興予算から交付される場合は、自己負担分に対して、地方交付税法(昭和25年法律第211号)、「東日本大震災に対処する等のための平成二十三年度分の地方交付税の総額の特例等に関する法律」(平成23年法律第41号)等に基づき、震災復興特別交付税が交付されて、国が実質的に全額を負担することとなっている。
環境省は、24年3月に各都道府県宛てに「循環型社会形成推進交付金復旧・復興枠の交付方針について」(以下「交付方針」という。)を発出して、復旧・復興予算からの同交付金の交付方針を明らかにしている。
交付方針によれば、広域処理の受入側市町村等における事業のうち、交付対象となるのは、①諸条件等が整えば災害廃棄物の受入れが可能と考えられる処理施設の整備事業、②しゅん工時期等の問題で、現在整備中の処理施設では災害廃棄物を直接受け入れることは難しいものの、他の既存施設で受け入れたことにより、その既存施設で処理する予定であった廃棄物を処理することとなる可能性がある当該整備中の処理施設の整備事業とされている。あわせて、受入条件の検討や被災地とのマッチングを実施したものの、結果として災害廃棄物を受け入れることができなかった場合であっても、同交付金の返還が生ずるものではないなどとされている。
復旧・復興予算からの同交付金の交付を受けて23、24両年度で施設整備を実施した事業主体数及び同交付金の交付額は、75事業主体、213億6209万余円である。このうち、広域処理に係る災害廃棄物の受入れが可能と考えられる処理施設を整備中又は整備した事業主体数及び同交付金の交付額は、表12のとおり、15事業主体、119億9817万余円となっている。そして、15事業主体のうち5事業主体は災害廃棄物を受け入れていたが、10事業主体は、被災地側で災害廃棄物の処理が進展し広域処理必要量が減少したことなどにより、災害廃棄物の受入れに至らなかった。
表12 15事業主体の施設整備事業の概要
事業主体名 | 交付対象施設 | 交付決定年月日 | 交付金支出済額(千円) | 完了年月 | 受入実施年月 | |
---|---|---|---|---|---|---|
受入れを行っていた5事業主体 | ||||||
秋田県 | 秋田市 | エネルギー回収推進施設 | 平成24年3月15日 | 166,734 | 24年3月 | 24年9月〜25年3月 |
山形県 | 酒田地区広域行政組合 | 溶融スラグストックヤード | 24年10月19日 | 48,977 | 25年1月 | 24年8月〜12月 |
富山県 | 高岡地区広域圏事務組合 | 高効率ごみ発電施設 | 24年12月5日 | 805,552 | 26年9月 | 25年4月〜8月 |
静岡県 | 静岡市 | ストックヤード | 24年10月19日 | 37,565 | 25年2月 | 24年10月〜25年2月 |
福岡県 | 北九州市 | 既設焼却施設(改良) | 24年12月5日 | 160,373 | 29年3月 | 24年9月〜25年3月 |
受入れに至らなかった10事業主体 | ||||||
北海道 | 中・北空知廃棄物処理広域連合 | 焼却施設 | 24年2月28日 24年10月19日 |
944,313 | 25年3月 | — |
秋田県 | 鹿角広域行政組合 | 溶融スラグストックヤード | 24年10月19日 | 40,880 | 25年12月 | — |
潟上市 | 既設焼却施設(改良) | 24年10月19日 | 142,114 | 26年3月 | — | |
群馬県 | 玉村町 | 既設焼却施設(改良) | 24年12月5日 | 565,480 | 25年3月 | — |
甘楽西部環境衛生施設組合 | 既設焼却施設(改良) | 24年12月5日 | 129,598 | 24年10月 | — | |
埼玉県 | 川口市 | 既設焼却施設(改良) | 24年3月21日 | 1,819,840 | 25年2月 | — |
東京都 | ふじみ衛生組合 | 焼却施設 | 24年2月28日 24年10月19日 |
2,248,671 | 25年3月 | — |
西秋川衛生組合 | 焼却施設 | 24年12月5日 | 789,932 | 26年3月 | — | |
京都府 | 綾部市 | 最終処分場 | 24年10月19日 | 96,790 | 26年3月 | — |
大阪府 | 堺市 | 焼却施設 | 24年10月19日 | 4,001,356 | 25年3月 | — |
既設焼却施設(改良) | 26年3月 | — | ||||
計15事業主体 | 11,998,175 |
広域処理の受入れに係る検討状況について、受入れに至らなかった10事業主体に確認したところ、災害廃棄物の受入れについて、処理可能な数量を算出している事業主体は5事業主体であり、これらの中には受入見積量が少量(年間42t及び100t)なものが見受けられた。このほか、施設が稼働する時期になってから検討するとして、具体的な処理内容を決定していない事業主体が3事業主体見受けられた。なお、前記のとおり、環境省から24年8月に関係都道府県等に新たな受入先の調整は行わないなどの方針が明らかにされたことから、上記の検討状況はおおむねこの方針が示されるまでのものである。
災害廃棄物を受け入れた5事業主体の受入状況について各事業主体に確認したところ、受入量(試験焼却分を除く。)は計30,094t(25年7月時点における広域処理に係る全体の受入見込量613,800tの4.9%)となっており、同交付金の交付を受けて整備した施設において災害廃棄物を受け入れたのは、1事業主体(受入量5,660t)であった。そして、残り4事業主体のうち3事業主体は既存の施設において、1事業主体は同交付金の交付を受けて改良事業を実施する予定の改良前の施設等において、それぞれ災害廃棄物を受け入れていた。このように4事業主体においては、既存施設等で災害廃棄物を受け入れていたが、その上で当該既存施設等で処理する予定であった一般廃棄物についても、広域処理必要量の減少等に伴い災害廃棄物の受入量が少量となったことなどにより、同交付金の交付対象施設ではなく、当該既存施設等で処理するなどしていた。
災害廃棄物の処理の完了は、25年度末を目途に行うこととされているが、同交付金の交付対象施設の完成時期についてみたところ、災害廃棄物の受入れに至らなかった10事業主体が整備している11施設のうち3施設(最終処分場を除く。)については26年3月に、受入れを行った5事業主体が整備している5施設のうち2施設については26年度以降に、それぞれ完成予定となっていた。
事業主体は、事業実施に当たり、環境省から事前に同交付金の要望額調査及び内示があり、その後、申請手続に従い同交付金の交付申請を行うこととされている。受入れに至らなかった10事業主体のうち、23年度から同交付金の交付を受けた3事業主体及び24年度に同交付金の交付を受けた1事業主体は、23年8月の要望額調査(広域処理を促進するため、25年度までに災害廃棄物の受入れが可能となる施設に関する調査)において要望を提出していたが、他の6事業主体の中には自ら要望を行っていない事業主体もあり、環境省との間の調整や環境省からの打診の結果を受けて復旧・復興予算からの交付の内示がなされていた。なお、受入れを行った5事業主体についても、当初は通常予算からの交付を要望していた。
このように、復旧・復興予算から交付された同交付金が、広域処理の推進のために十分な効果を発揮したのかについては、客観的に確認できない状況となっていた。
旧厚生省(13年1月6日以降は環境省)は、阪神・淡路大震災の教訓から、10年10月に「震災廃棄物対策指針」を策定しているが、東日本大震災においては、想定外の量の災害廃棄物等が広範囲にわたり発生したため、現行指針に基づく災害廃棄物処理に係る計画を策定していた都道府県及び市町村においても混乱が生じて、災害廃棄物等の円滑な処理に支障を来していた。
このため、環境省は、25年3月に、東日本大震災において得られた災害廃棄物等の処理の経験、知見等を盛り込んだ新指針案を策定した。そして、環境省は、新指針案を都道府県及び市町村に周知するとともに、実用的な指針となっているかなどの観点から都道府県及び市町村にアンケート調査を行っており、その結果を反映させて、25年度中に新指針を策定するとしている。
13道県における25年6月末現在の災害廃棄物等の処理は、岩手、宮城及び福島の3県を除いてほぼ完了しており、岩手、宮城両県の災害廃棄物等の処理についても、目標である25年度末までに完了するめどが立っている。一方、福島県についてみると、25年度末までの完了が困難な状況となっていた。環境省は25年9月に福島県内全体の処理の見通しについて明らかにしていることから、今後は新しい目標により処理が進められることとなる。
福島県内の処理が遅れているのは、福島第一原発の事故により放出された放射性物質の影響によるところが大きく、特に仮置場や仮設処理施設の設置場所が確保できない状況となっていたり、廃棄物処理業者が災害廃棄物の受入れを制限していたり、焼却灰の埋立てが困難な状況が生じたりしている。放射性物質汚染対処特措法等では一定の必要な措置が示されているものの、これらの状況を打開するには、放射性物質による環境の汚染に対する除染との連携も含めた処理の加速化及び円滑化のための施策が必要であると認められる。
国の直轄処理に係る予算の執行状況は、23年度についてはほぼ全額が翌年度に繰り越され、24年度においてはその91.8%が不用額となっており、24年度についても復興特別会計に係る予算の97.6%が翌年度に繰り越されているなど、執行率は極めて低調となっている。また、国の代行処理についても、翌年度繰越額が多くなっていて、国の直轄処理及び代行処理の進捗の遅れが予算の執行状況からも確認できる。
一方、市町村等の処理に対する事業費補助金の執行状況は、岩手、宮城及び福島の3県を除く道県についてはほぼ交付決定どおりに支出されているものの、3県については23、24両年度とも交付決定額の一部を翌年度に繰り越しており、さらに23年度の繰越分については、一部を事故繰越しとして25年度へ繰り越している状況が見受けられた。
岩手、宮城両県の災害廃棄物を対象に行われている広域処理については、広域処理必要量が、25年7月時点において全て受入れ済み又は受入れが見込まれる状況となっていて、25年度末までの完了のめどが立っている状況となっている。
一方、広域処理に係る災害廃棄物の受入可能施設等に対する復旧・復興予算からの循環型社会形成推進交付金の交付は、事業主体において広域処理に係る検討が十分に行われていなかったり、同交付金の交付対象施設において災害廃棄物を受け入れていなかったり、復旧・復興予算からの交付を自ら要望していない事業主体が含まれていたりなどしていて、広域処理の推進のために十分な効果を発揮したのかについては、客観的に確認できない状況となっていた。
したがって、環境省においては、同交付金の交付が広域処理の推進のために十分な効果を発揮したのか交付方針の内容も含めて検証するとともに、その検証結果を今後の復興関連事業の実施に当たって活用する必要があると認められる。
本院としては、東日本大震災に係る災害廃棄物等の処理について、今後とも引き続き注視していくこととする。