地方公共団体等の公共建築物における耐震化対策等の状況を、教育施設、医療施設及び庁舎施設等の各施設別並びに構造体、建築非構造部材及び建築設備の別にみると、図表5-1のとおりとなっている。
図表5-1 施設別並びに構造体、建築非構造部材及び建築設備の別にみた耐震化対策等
(単位:%(棟数ベース))
区分 | 棟数 | 構造体 | 建築非構造部材 | 建築設備 | |||||
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診断率 | 耐震化率 | 診断率 | 耐震化率 | 診断率 | 耐震化率 | ||||
教育施設 | 対象建築物 | 136,538 棟 | 95.1 | 84.3 | 13.9 | 45.8 | 13 | 46.1 | |
うち多数の者が 利用する建築物 |
129,390 棟 | 95.2 | 84.5 | 14.1 | 45.7 | 13.2 | 45.9 | ||
医療施設 | 対象建築物 | 10,234 棟 | 48.1 | 76.1 | 10.5 | 70.2 | 10.1 | 69.8 | |
うち多数の者が 利用する建築物 |
6,576 棟 | 55.4 | 77.2 | 12.5 | 71.6 | 12 | 71.2 | ||
庁舎施設等 | 対象建築物 | 9,493 棟 | 68.5 | 70.4 | 15.5 | 54.4 | 11 | 52.3 | |
うち多数の者が 利用する建築物 |
4,677 棟 | 82.1 | 71.6 | 15.4 | 53.4 | 12.5 | 52.3 |
各施設の分析の対象とした建築物は、教育施設については公立の小学校等のうち延床面積が200㎡を超える(木造については500㎡を超える)建築物、医療施設については災害拠点病院、救命救急センター及び第二次救急医療機関の建築物、庁舎施設等については都道府県庁、市役所、町村役場等の庁舎施設、地方公共団体が所有する警察施設及び消防施設の建築物となっており、単純にこれらの施設を比較することは困難であるが、教育施設、医療施設及び庁舎施設等の各施設別に構造体の耐震化対策等の状況をみると、次のとおりとなっている。
ア 診断率及び耐震化率とも教育施設が医療施設及び庁舎施設等よりも高くなっているのは、子どもの安全を守るという観点や、避難所として地域住民のために活用される場合が多いことから教育施設の耐震化を優先的に進めている地方公共団体が多いためと考えられる。また、教育施設は、他の施設に比べて棟数が多いため、教育施設の耐震化を進めることで、当該地方公共団体の公共建築物全体の耐震化率の底上げが図られている地方公共団体も多く見受けられる。
イ 医療施設の診断率が教育施設及び庁舎施設等に比べて低くなっているのは、医療機関としての性質上、改修工事を実施するよりも建替えなどにより耐震化を図っている事例が多く、この場合は耐震診断を実施せずに建替えなどを実施することによると考えられる。
ウ 庁舎施設等の耐震化率が教育施設及び医療施設に比べて低くなっているのは、一部の地方公共団体を除き、災害時には情報収集や応急対策の指示を発するなど防災拠点となるべき施設であるにもかかわらず、耐震化の優先度が低くなっている地方公共団体が多いことによると考えられる。
また、構造体、建築非構造部材及び建築設備の別に耐震化対策等の状況をみると、次のとおりとなっている。
ア いずれの施設においても建築非構造部材及び建築設備の耐震化率が、構造体と比較して相当程度低くなっているのは、構造体の耐震化を優先し、これが図られるまでは建築非構造部材や建築設備の耐震化に着手できない地方公共団体等が多いことによると考えられる。
イ 構造体の耐震化率が最も高い教育施設において、建築非構造部材及び建築設備の耐震化率が最も低くなっているのは、教育施設には旧耐震基準に基づいて建設されている建築物が多く、これらの建築物について、構造体の耐震改修を優先して実施しているため構造体の耐震化は進捗しているが、建築非構造部材及び建築設備の耐震改修の実施には至っていない建築物が多いことによると考えられる。
ウ 医療施設において、建築非構造部材及び建築設備の耐震化率が最も高くなっているのは、建替えなどにより新耐震基準に基づいて建設されている建築物が多いことによると考えられる。