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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成25年10月

公共建築物における耐震化対策等に関する会計検査の結果について


第3 検査の結果に対する所見

2 所見

地方公共団体等が所有するなどしている公共建築物については、災対法の定めるところにより、都道府県及び市町村が作成することとされている地域防災計画に基づくなどして従前から耐震化対策が実施されているところであるが、災害時に重要な役割を担うこととなる教育施設、医療施設及び庁舎施設等が含まれていることなどから、引き続き、耐震化対策を計画的かつ効率的に実施することが必要である。

今回、地方公共団体等が所有するなどしている公共建築物の耐震化対策等の状況について検査したところ、教育施設、医療施設、庁舎施設等のいずれの施設においても、建築非構造部材等の耐震化率は構造体の耐震化率より低くなっていた。また、いずれの施設においても構造体の耐震化率は9割に達しておらず、27年までに耐震化率を9割にするという基本方針の目標を達成するなどのため耐震化を推進する必要がある。特に、医療施設及び庁舎施設等は、一層耐震化を進める必要がある。さらに、市町村耐震改修促進計画が策定されていない市町村が見受けられたり、学校防災マニュアル等の作成に当たり、避難所の運営について市町村防災担当部局との調整が図られていない学校が見受けられたり、災害時における業務継続の観点から自家発電設備の空冷化等の対策が必要な医療施設が見受けられたり、防災拠点となる建築物が耐震性能を確保していないにもかかわらず、その代替となる施設を確保していなかったりするなどの事態が見受けられた。

したがって、地域防災計画や耐震改修促進計画等の作成並びに教育施設、医療施設及び庁舎施設等を所掌する各府省等は、以下の点に留意することなどにより、公共建築物における耐震化対策を計画的かつ効率的に実施していくこと、また、地震発災時における避難所の円滑な運営、病院機能の維持、災害応急業務に対応するための業務継続性の確保等のソフト面に関する対策についても積極的に進めていくことが重要である。

(1) 地域防災計画等の公表状況等

地域防災計画は、各都道府県又は各市町村の当該地域に係る災害対策の基本となるものであるから、内閣府及び消防庁において、以下のアの事項に関して自ら実施し又は地方公共団体に助言するなどして、地域防災計画を当該地域の状況や防災対策等に関する調査研究の成果等を勘案するなどしたものとする必要がある。

また、耐震改修促進計画は、優先的に耐震化に着手すべき建築物の設定等、より地域固有の状況に配慮して計画することが望ましいとされていることから、国土交通省において、以下のイの事項に関して地方公共団体に助言するなどして、地方公共団体が当該地域の耐震化対策を計画的に実施できるようにする必要がある。

ア 地方公共団体における防災対策

(ア) 内閣府及び消防庁において、地方公共団体が地域防災計画を修正するに当たっては、防災基本計画等の修正を受けて行う場合が多いことなどから、これらを修正した際は、地方公共団体が地域防災計画にこれらの修正を速やかに(イ) 地方公共団体において、反映できるよう配慮する。

(イ) 地方公共団体において、

a 災対法や防災業務計画等に基づいて、地域防災計画で定めた防災に関する諸事項について、毎年及び随時これに検討を加えるとともに、地域防災計画を修正した際には、ウェブサイトを利用するなど広く住民に周知できるような方法でその要旨を公表するように努める。

b 地域防災計画で避難所に指定されている建築物については、耐震診断、耐震改修等を実施するよう努めるとともに、避難者の生活環境を考慮し、避難所生活において配慮すべき事項等を定めた避難所の運営に関するマニュアル等の策定に努める。

イ 耐震改修促進計画

(ア) 今後の公共建築物の耐震化に資するため、市町村耐震改修促進計画を策定していない市町村は、地域固有の状況等に配慮した計画の策定に努める。

(イ) 耐震改修促進計画の策定に当たっては、管内全体のほか、教育施設等の施設ごとについても耐震化等の目標を策定し、計画的に公共建築物の耐震化が図られるようにする。

(2) 教育施設における耐震化対策等の状況

教育施設については、文部科学省において、教育施設整備方針に掲げた目標等を達成させるよう、地方公共団体の財政事情等を踏まえつつ、以下のアからウの事項に関して地方公共団体に助言するなどして、また、エの事項に関して自ら実施して、教育施設の耐震化を引き続き促進させる必要がある。

ア 教育施設の耐震診断の状況

構造体の耐震診断を実施していない建築物については必要な耐震診断を着実に実施し、その結果を速やかに公表する。

イ 教育施設の耐震改修の状況

(ア) 耐震性能が確保されていないと診断された建築物については、施設の重要度も考慮して、計画的に必要な耐震化対策を実施する。また、地震発生時の児童生徒等の安全確保、避難所としての機能発揮のためには、構造体だけではなく建築非構造部材及び建築設備の耐震化も重要であることから、建築非構造部材及び建築設備の耐震化対策も同様に計画的に実施する。

(イ) 耐震化の際には、学校の統廃合によって、廃校となった施設が有効活用できないか十分に検討する。

ウ 教育施設における避難所の状況

(ア) 避難所に指定されている教育施設において、地震発生時に避難所としての機能を支障なく発揮させるためには建築物の耐震化のみならず、防災設備の整備が必要であることから、地域の実情に合わせるなどして必要となる防災設備の整備を計画的に実施する。

(イ) 教育施設において、学校防災マニュアル等を作成していない場合は速やかに作成する。また、学校防災マニュアル等を作成していても避難所の開設等について市町村の防災担当部局と事前調整を図っていない場合は、速やかに調整を図るとともに、津波等ハザードマップ等を十分に把握し、津波等による浸水域に該当するなどしている場合、学校防災マニュアル等に具体的な避難方法等を定める。

エ 東日本大震災に伴う被災等の状況

建築物の構造体の耐震診断結果がIs値0.3未満となっている教育施設の耐震化について、地方公共団体が引き続き優先的に進められるようにする。

また、東日本大震災に伴う建築物の天井脱落等の被害を踏まえて建築基準法施行令が改正されたことなどにより、文部科学省が25年8月に策定した「学校施設における天井等落下防止対策のための手引」の周知徹底を地方公共団体に対して図り、天井材についての耐震化対策を旧耐震基準に基づく建築物だけではなく新耐震基準に基づく建築物についても推進させる。

(3) 医療施設における耐震化対策等の状況

医療施設については、既に財政支援等による耐震化対策が講じられているところであるが、厚生労働省において、次の事項について、国土交通省等の関係府省、地方公共団体等と連携するなどしてその実施に努め、更なる耐震化の促進を図る必要がある。

ア 医療施設の耐震診断の状況

耐震診断については、耐震改修状況の調査等の機会を利用するなどして、特に建替え等の予定もないのに耐震診断を実施していない医療機関に対し、耐震診断の実施に係る助言等を定期的に継続して実施する。

イ 医療施設の耐震改修の状況

(ア) 耐震改修については、耐震改修状況の調査等の機会を利用するなどして、特に早急な耐震化が望まれるIs値が0.3未満の患者利用建築物を有する医療機関に対し、早期に耐震化を図るよう助言等を定期的に継続して実施する。

(イ) 医療機関だけでは解決が困難な課題を含め解決すべき課題が多いことなどが、医療施設の耐震化が進まない要因の一つとなっていることから、関係府省、地方公共団体等と連携して、医療機関が耐震化対策を実施する場合の問題点の検討、課題解決に資する情報の提供等を行うなどして、医療機関が行う耐震化対策を促進するための支援策を充実させる。

(ウ) 業務継続の観点からみると、災害拠点病院の指定要件は、自家発電設備の冷却方式等についての基準がないなど、指定要件を満たしていても、災害拠点病院として災害時に期待される役割を十分に果たせないおそれがあるものとなっている。したがって、災害拠点病院の役割に鑑み、施設等の信頼性向上の点も含めた施設整備の具体的な指針となるべき整備指針等を策定するなどして、災害拠点病院として整備を求める施設等の水準を明確化する。また、指定要件の厳格な運用が図られるよう、災害拠点病院の指定の基準とすべき最低条件を整理するなどして、指定要件の位置付けとその運用方針を明確化する。

ウ 東日本大震災に伴う被災等の状況

東日本大震災により病院機能に影響が生じた理由は、建物の損傷、ライフラインの途絶に伴う電力の供給停止、水不足等となっていることを踏まえ、構造体に加え建築非構造部材及び建築設備についても業務継続、病院機能の維持を図る観点からの耐震化対策を実施する。

(4) 庁舎施設等における耐震化対策等の状況

庁舎施設等については、地方公共団体が財政状況を勘案しつつ、地域防災計画、耐震改修促進計画等に基づき耐震化対策等を行っているものであることから、地方公共団体における業務継続体制の確立を支援している内閣府、防災業務計画において地域防災計画の作成の基準を定めている消防庁及び警察庁、基本方針を告示しその中で耐震改修促進計画の策定に関する事項等を定めている国土交通省、それぞれにおいて、次の事項に関して地方公共団体に助言するなどして、庁舎施設等の耐震化を更に促進する必要がある。

ア 庁舎施設等の耐震診断の状況

庁舎施設及び消防施設における構造体の診断率が6割程度となっていることなどから、各地方公共団体の財政事情や施設の重要度等を考慮しつつ、これら施設の耐震診断を計画的に実施する。

イ 庁舎施設等の耐震改修の状況

(ア) 庁舎施設の耐震化率が約6割、警察施設及び消防施設の耐震化率が約8割となっていることから、各地方公共団体の財政事情や施設の重要度等を考慮しつつ、耐震化対策を計画的に実施する。特に、庁舎施設については、災害時に被害情報収集や災害対策の指示を行うための重要な施設であるにもかかわらず、耐震化率が他の施設に比べて低くなっていることから、耐震改修促進計画に定めた目標の達成に留意して耐震化対策を着実に実施する。

(イ) 庁舎施設等の耐震化対策については、構造体の耐震化を優先している地方公共団体がほとんどであるが、防災拠点となる施設においては建築非構造部材や建築設備の耐震化も重要であることから、今後は、これらの耐震化対策の進捗を図る。

(ウ) 災害応急活動を支障なく実施等するためには、業務継続性の確保が重要であることから、防災拠点となる建築物については、業務継続計画の策定、代替施設の整備、通信手段の多様化、自家発電設備の設置による非常用電源の確保等に関し一層の進捗を図る。特に、自家発電設備の連続運転可能時間が24時間未満となっている建築物が多数見受けられたことなどから、内閣府等関係する各府省等において、防災上必要な最低水準を定めるなど一定の基準を示すことを検討する。

ウ 東日本大震災に伴う被災等の状況

庁舎施設等における東日本大震災に伴う被災等の状況について、建築非構造部材及び建築設備が被災したことにより、災害応急活動に支障が生じた事例もあることから、今後は、これらの耐震化対策の進捗を図る。

 

また、会計検査院は、24年報告の検査の結果に対する所見において、各府省等、独立行政法人及び国立大学法人等は、公共建築物の耐震化対策の実施に当たり、建築物の重要度、耐震化対策の緊急度等を総合的に勘案して、必要な耐震診断を実施し、耐震診断の結果、改修等が必要な場合には、既存官庁施設の有効活用等も含めて多角的に検討するなどして、耐震化対策を計画的かつ効率的に実施していくことが重要であると記述しているところである。さらに、関係する各府省等は、今回の検査で対象とした地方公共団体等が所有するなどしている公共建築物の耐震化対策の促進について、本報告書で報告した各事項等を踏まえて、計画的かつ効率的に実施する必要がある。

 

以上のとおり報告する。

会計検査院としては、今後とも、公共建築物における耐震化対策等が適切に実施されているかについて、多角的な観点から引き続き検査していくこととする。