国は、単年度では完結しない特定の目的を持つ事業の財源となる基金を設置造成するため、毎年度、多額の国庫補助金等を交付しており、25年3月31日時点において、国庫補助金等により基金法人に設置造成された基金は、188基金、基金保有額2兆6155億円(うち国庫補助金等相当額2兆5424億円)となっている。また、20年度から24年度までに、基金を設置造成するために、5兆5016億円の国庫補助金等が交付されており、今後も、多額の国庫補助金等が交付されることが想定される。
所管府省、基金法人等において、基金保有額の状況、基金の設置造成の状況、国庫への返納の状況、基金の見直しの状況等について検査したところ、次のような事態が見受けられた。
20年4月1日時点の基金数は152基金であったが、20年度から24年度までに161基金が新規に設置造成される一方、同期間に125基金が廃止されており、25年3月31日時点の基金数は188基金となっている。そして、20年度から24年度までに、基金の設置造成のために交付された国庫補助金等の合計は5兆5016億円と多額に上っており、25年3月31日時点における基金保有額の合計2兆6155億円は、20年4月1日時点における合計1兆0592億円を大きく上回っている。また、事業期間の終了等により、同期間に基金から国庫へ返納された額も1兆0515億円と多額に上っている。この基金から国庫へ返納された額の中には、基金の見直しを適時適切に実施していれば、返納時期を繰り上げて早期に国庫へ返納することができた事態等が見受けられた。
18、20両年度に行われた基金基準による見直し、さらに、21年11月の事業仕分け等により、国庫補助金等により設置造成された基金に対する見直しが実施され、使用見込みのない額が国庫へ返納されるなどしている。その後、23年度に実施する予定となっていた基金基準による見直し及び「平成21年度補正予算において設けられた基金等の執行状況等の公表について(連絡)」による基金の執行状況等の公表を、ほとんどの基金法人及び所管府省が実施していない事態が見受けられた。このことなどのため、一部の基金において、使用見込みのない額が基金法人に滞留している事態等が見受けられた。
基金基準は、基金事業を実施するに当たって、所管府省が基金法人に対する指導監督を行う場合の基準となるものであるが、一部の基金について、基金基準により基金に対する指導監督を行う旨が補助金交付要綱等に明記されていない事態が見受けられた。また、基金基準に定める基準に基づいて実施する基本的事項の公表、保有割合の算出における事業見通しの算出、新規申請の受付が終了した事業の見直し及び基金事業が複数ある場合の公表が適切に実施されていない事態が見受けられた。
基金基準による見直しの頻度、収入・支出及び事業実績の公表、使用見込みの低い基金の取扱いの検討、基金廃止時の状況の公表等について、基金基準の目的を達成するためには、基金基準に定める基準等の検討が必要と認められる事態等が見受けられた。
また、25年度以降は、内閣官房の行政改革推進本部事務局が作成する基金シートの様式に従って、所管府省が基金シートを作成し、基金の執行状況、保有割合等を毎年公表することとなっている。
基金基準による定期的な見直しや新規申請の受付が終了した基金の見直しを実施していないことなどから、使用見込みのない額が基金法人に滞留しているなどの国庫への返納等を検討すべき事態がある基金が見受けられた。
以上のような状況を踏まえて、内閣官房、所管府省及び基金法人においては、次の点について留意して、基金が適切かつ有効に執行されるよう努める必要がある。
会計検査院としては、基金法人の基金保有額は依然として多額であり、今後も基金の設置造成のために多額の国庫補助金等が交付されることが想定されることから、基金の見直しの実施状況、基金事業の実施状況等について、引き続き多角的な観点から検査していくこととする。