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  • 平成25年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第4 総務省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(2) ガスの調達契約を締結するに当たり、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、一般競争に付するなどの協定等及び特例政令等に基づく契約手続を実施することにより、内外無差別原則の確立と手続の透明性等を確保するよう是正改善の処置を求めたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)総務本省 (項)総務本省共通費
部局等
総務本省
契約の概要
庁舎等で使用するガスの調達を行うもの
件数及び支払額
3件 1億0717万円(平成24、25両年度)

本院は、国の機関が締結している特定調達に係る電気及びガスの契約の状況について、検査対象府省等の絞り込みを行った上で、16府省等(注)において会計実地検査を行った。

(注)
16府省等  衆議院、最高裁判所、会計検査院、人事院、内閣府、総務、法務、外務、財務、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業、国土交通、環境、防衛各省

その結果、平成26年10月30日に、総務大臣及び財務大臣に対して、「特定調達に係るガスの契約事務の実施について」として、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。

なお、上記のほか、衆議院及び法務省における特定調達に係るガスの契約事務の実施について、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項がある(本院の指摘並びに衆議院及び法務省が講じた処置の内容については、前掲及び後掲の「ガスの調達契約を締結するに当たり、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、一般競争に付するなどの協定等及び特例政令等に基づく契約手続を実施することにより、内外無差別原則の確立と手続の透明性等を確保するよう改善させたもの」参照)。

前記の是正改善の処置を求めたものの内容は、総務省及び財務省のそれぞれの検査結果に応じたものとなっており、このうち、総務大臣に対するものの全文は以下のとおりである。

【是正改善の処置を求めたものの全文】

特定調達に係るガスの契約事務の実施について

(平成26年10月30日付け 総務大臣宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 特定調達に係る契約手続の概要等

(1) 貴省における契約事務等の概要

貴省は、行政の基本的な制度の管理及び運営を通じた行政の総合的かつ効率的な実施の確保、地方自治の本旨の実現及び民主政治の基盤の確立、郵政事業の適正かつ確実な実施の確保等を図り、並びに他の行政機関の所掌に属しない行政事務及び法律(法律に基づく命令を含む。)で貴省に属させられた行政事務を遂行することを任務として各種事務を実施している。その実施の際に生ずる各般の需要を満たすために、売買、貸借、請負その他の契約を多数締結しており、これらの契約の締結に当たっては、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号。以下「予決令」という。)等に基づいて契約事務を実施している。

そして、貴省は、上記契約事務の一環として、貴省が管理する庁舎建物等で使用するガスの調達契約に係る事務を行っている。

(2) ガスの小売市場の自由化

近年、我が国のガスの小売市場は自由化が進められており、平成16年4月に、年間ガス使用量が50万m3以上の使用者は、一般の需要者に導管を敷設してガスを供給する事業者(以下「一般ガス事業者」という。)以外の事業者からも供給を受けられるようになっており、19年4月に、このような取扱いが、年間ガス使用量が10万m3以上の使用者まで拡大されている。このように、ガスについては、制度上、国内外の事業者が広く小売市場に参入できるような状況となっている。

(3) 政府調達に関する協定等の概要

政府調達に関する協定(平成7年条約第23号(平成26年条約第4号による改正前のもの)。以下「協定」という。)は、世界貿易機関(WTO)の下で運用されている協定の一つで、各加盟国の中央政府、地方政府及び協定が定める機関による調達の分野における、国内外のいかなる事業者でも参入を可能なものとする内外無差別原則の確立と手続の透明性等の確保を目的として、各国が遵守すべき調達手続上の義務等を規定している。そして、我が国政府は、調達手続を更に透明性、公正性及び競争性の高いものとするなどのために、「物品に係る政府調達手続について(運用指針)」(平成6年アクション・プログラム実行推進委員会)等を我が国の自主的措置として決定している(以下、協定及び我が国の自主的措置を合わせて「協定等」という。)。また、協定その他の国際約束を実施するために、「国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令」(昭和55年政令第300号。以下「特例政令」という。)が制定されている。

協定等及び特例政令の対象となる機関が、協定等及び特例政令の対象となる調達契約を締結する場合には、会計法、予決令等に加えて、協定等、特例政令等に基づき事務を行う必要がある。

(4) 協定等及び特例政令の適用対象

ア 適用対象となる機関

協定によれば、適用対象となる機関は、中央政府の機関、地方政府の機関及びその他の機関に区分され、それぞれ具体的な機関名が明示されていて、中央政府の機関としては、衆議院、参議院、最高裁判所及び会計検査院を含む会計法の適用を受ける全ての機関が適用対象とされている。

イ 適用対象となる調達

(ア) 適用対象となる調達の概要

協定によれば、産品及びサービスの調達が適用対象とされている。このうち、産品については、全ての産品の調達を適用対象とすることとされていて、適用対象となる産品の品目は具体的に示されていないが、特例政令においては、動産(現金及び有価証券を除く。)及び著作権法(昭和45年法律第48号)第2条第1項第10号の2に規定するプログラムが共に物品等と定義されている。そして、物品等の調達が特例政令の適用対象になる調達の一つとされており、ガスについても、物品等に含まれるとされている。

(イ) 適用対象となる調達額

協定等によれば、機関の区分、調達する産品及びサービス、契約締結時期等ごとに、それぞれ基準額が定められており、当該基準額以上の価額の産品及びサービスの調達契約が協定等の適用対象とされている。そして、特例政令では、調達契約に係る予定価格が財務大臣の定める区分に応じ財務大臣の定める額以上の額であるものに関する事務について特例政令の適用があると定められており、24年4月1日から26年3月31日までの間に締結される物品等の調達契約に係る財務大臣の定める額は1200万円とされている(平成24年財務省告示第25号)。この額は、協定等において定められているこれと同一の時期に締結される産品の調達契約に係る基準額の邦貨換算額と同一である(以下、協定等及び特例政令の適用対象となる調達を「特定調達」という。)。

(5) 特定調達に係る契約手続

協定の適用対象となる機関は、特定調達を行うに当たり、協定等及び特例政令等に基づき、原則として一般競争に付することとなっており、緊急の必要により競争に付することができないなどの場合に限って随意契約によることができることとなっているが、随意契約によることができる場合は、予決令等に定められている場合に比べて限定されている。そして、一般競争に付する際には、予決令に定められている期間よりも長い公告期間を設け、また、契約期間等に関する情報等を官報で公告することとなっており、随意契約の際には、契約前に契約相手方等を官報で公示することとなっている。さらに、いずれの場合も、契約の相手方を決定したときは、契約の相手方、契約額等を官報で公示することとなっている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、従来、特定調達に係る検査を行い、特定調達に該当する調達契約を締結しているにもかかわらず、協定等に基づいた契約手続を実施していないなど適切でない事態について検査報告に掲記している。また、前記のとおり、近年、我が国のガスの小売市場は自由化が進められている。

そこで、本院は、合規性等の観点から、ガスの調達契約の事務を行うに当たり、特定調達に係る契約手続を適正かつ適切に実施しているかに着眼して、貴省本省が24、25両年度に締結するなどしたガスの調達契約を対象として、貴省本省において、入札書、契約書、請求書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、調書の作成及び提出を求めるなどして検査した。

(検査の結果)

検査したところ、貴省本省は、24、25両年度にガスの調達契約を計4件(支払額計1億2613万余円)締結するなどして、ガスの供給を受けていた。そして、これら4件の中には、当該契約に係る支払額が財務大臣の定める額である1200万円以上のものが、計3件(支払額計1億0717万余円)見受けられた。しかし、これら3件の調達契約について、調達契約に係る予定価格又は協定等及び特例政令等に基づき当該契約の評価の基礎となる額を算定する際に用いる前年度(23年度又は24年度)のガス料金の支払額が財務大臣の定める額を上回っているにもかかわらず、特定調達に係る契約手続を実施していないものが、中央合同庁舎2号館に係るもの計2件(支払額計8664万余円)、総務省第二庁舎に係るもの1件(支払額2053万余円)、合計3件(支払額計1億0717万余円)見受けられた。

このうち、貴省本省は、中央合同庁舎2号館に係る2件の調達に当たり、過去に実施した一般競争入札において、応札した業者が1者のみであったことから、あらかじめ公募による業者募集を行い、応募する業者が2者以上ある場合は、改めて一般競争に付することとしたが、応募した業者が1者のみであったため、協定等及び特例政令に規定する随意契約を行うことができる要件に該当するものと誤認して、一般競争に付することなく、契約前の契約相手方の官報公示等特定調達に係る随意契約の手続を実施していた。しかし、前記のとおり、協定等及び特例政令に規定する随意契約は、緊急の必要により競争に付することができないなどの場合に限定されていて、応募業者が1者であったということは要件として認められていないこと、また、我が国のガスの小売市場は自由化が進められており、制度上、国内外の事業者が広く小売市場に参入できるような状況となっていることから、協定等及び特例政令が定める調達契約の方式のうち一般競争に付する必要があったと認められる。また、総務省第二庁舎に係る1件の調達に当たっては、一般競争に付することなく、以前に提出した申込書によって締結した一般ガス事業者との間の契約をそのまま継続していた。

(是正改善を必要とする事態)

貴省におけるガスの調達契約について、特定調達の対象となる要件を満たしているにもかかわらず、一般競争に付するなどの特定調達に係る契約手続が実施されていない事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴省において、中央合同庁舎2号館に係るガスの調達契約については、応募業者が1者のみであったため、協定等及び特例政令が規定する随意契約を行うことができると考えていること、総務省第二庁舎に係る調達については、ガスの供給が可能な事業者は1者のみであると考えていることにもよるが、次のことなどによると認められる。

ア ガスの調達契約に関し、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、内外無差別原則の確立と手続の透明性等の確保という協定の趣旨を踏まえて、特定調達に係る契約手続を協定等及び特例政令等に基づいて実施することの重要性に対する理解が十分でないこと

イ ガスの小売市場の自由化が進展したことにより一般ガス事業者以外の国内外の事業者による新規参入が可能な制度になっていることの理解が十分でないこと

3 本院が求める是正改善の処置

貴省においては、今後も引き続きガスの調達契約を締結していくことが見込まれている。一方、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、内外無差別原則の確立と手続の透明性等の確保という協定の趣旨を踏まえて、特定調達に係る契約手続を協定等及び特例政令等に基づいて実施していくことが引き続き求められている。

ついては、貴省において、協定の趣旨を十分に理解した上で、これを関係部局に周知徹底し、ガスの調達契約について、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、特定調達に係る契約手続を協定等及び特例政令等に基づいて実施するよう、是正改善の処置を求める。