総務省は、電波需要の増加による周波数のひっ迫に対応して周波数の有効活用等を図るために、多額の国費を投入して地上テレビジョン放送のデジタル化を実施して、これに伴い発生する空き周波数帯(以下、この周波数帯のことを「空き周波数帯」という。)を四つのシステムに利用させることとしている。しかし、空き周波数帯に割り当てたシステムのうち、V-Lowマルチメディア放送及び高度道路交通システムはいまだに実用化されておらず、また、公共ブロードバンド移動通信システムは一部実用化されているものの十分に使用されておらず、空き周波数帯が十分に利用されていない事態が見受けられた。
したがって、総務省において、V-Lowマルチメディア放送については、利用者等関係者の意見を十分に調整して速やかに制度整備を行い、公共ブロードバンド移動通信システムについては、利用者として想定している都道府県等に対して機材導入経費等や導入効果に関する詳細な情報提供を適時適切に行い、それでも導入が促進しない場合は、利用者の意向を踏まえた上で、空き周波数帯を他の目的へ割り当てるなどの方策を検討し、高度道路交通システムについては、空き周波数帯の利用に向けて警察庁等と速やかに調整を行うよう、総務大臣に対して平成25年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、総務本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、総務省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア V-Lowマルチメディア放送については、25年11月までに利用者等関係者の意見を調整した上で、同年12月に関係省令を改正するなどして制度整備を行った。
イ 公共ブロードバンド移動通信システムについては、25年11月から26年7月までの間に開催された会議等において、都道府県等の想定される利用者に対して、導入効果や機材導入経費等の情報提供を行うなどしており、今後も引き続き情報提供を行うなどして導入促進を図っていくこととした。そして、導入が促進しない場合は、同システムの導入に向けた制度整備からおおむね10年後である32年度に実施する予定の電波利用状況調査の結果及び同システムの利用者の意向を踏まえた上で、他の目的へ割り当てるなどの方策を検討することとした。
ウ 高度道路交通システムについては、25年10月及び26年3月に開催されたITS関係四省庁連絡会議において、警察庁等に対して、路上に設置された同システムの通信装置と車両との路車間通信に用いる周波数帯を空き周波数帯である700MHz帯としていることを説明するなどして、路車間通信の利用に向けて調整を行った。