厚生労働省は、国民健康保険の保険者である市町村に対して、療養給付費負担金及び財政調整交付金を交付している。そして、市町村が、自らの負担で被保険者の一部負担金を当該被保険者に代わり医療機関等に支払う措置(以下「負担軽減措置」という。)を実施した場合には、療養給付費負担金及び財政調整交付金のうち普通調整交付金の交付額算定に当たり、負担軽減措置の対象者に係る療養の給付に要する費用の額等に、当該額等に対する被保険者の一部負担金の額の割合(以下「負担割合」という。)に応じた所定の率(以下「減額調整率」という。)を乗じて減額調整を行うこととなっている。しかし、負担軽減措置のうち、一部負担金に定額の上限を設けて負担を軽減するもの(以下「定額制」という。)を実施している多数の市町村において、被保険者が実際に負担した一部負担金の額(以下「実負担額」という。)に基づく負担割合を算定していなかったり、実負担額に高額療養費を含めて負担割合を算定していたりしているため、より減額の度合いが低い減額調整率が適用され、療養給付費負担金及び財政調整交付金のうち普通調整交付金が過大に交付されている事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、都道府県に対して定額制の負担軽減措置を実施した場合における負担割合の算定方法を具体的に示して、これを都道府県を通じて市町村に対して周知するとともに、その適用に関する技術的助言を行うよう、厚生労働大臣に対して平成25年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、25年12月に都道府県に対して通知を発して、定額制の負担軽減措置を実施した場合には、適正な実負担額に基づく負担割合を算定した上で、当該負担割合に応じた減額調整率を適用するよう、その算定方法を具体的に示して、これを都道府県を通じて市町村に対して周知するとともに、その適用に関する技術的助言を行う処置を講じていた。