厚生労働省は、医療保険制度及び後期高齢者医療制度において、これらの保険者又は後期高齢者医療広域連合(以下、両者を合わせて「保険者等」という。)が行う医療給付に要する費用の一部として、療養給付費負担金等(以下「国庫負担金」という。)を交付している。そして、国民健康保険等において、患者負担分を控除した診療報酬又は調剤報酬である医療費の過誤払による返還金等が発生した場合の国庫負担金の算定に当たっては、保険者等が調査及び決定するなどした返還金の額を対象費用から控除することとなっている。しかし、保険者等において、返還金に係る債権の把握等が適切に行われていなかったことなどから国庫負担金が過大に算定されて交付されていたり、返還金に係る債権の回収が速やかに行われていなかったりしている事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、国庫負担金の算定及び交付が適正でなかったものについて過大となっていた国庫負担金を返納させ、返還金に係る債権の把握等を適切に行うことなどについて市町村等に対して周知徹底を図るなどするよう都道府県等に対して技術的助言等を行うとともに、返還金に係る債権の回収を速やかに行うことなどができる体制の整備について具体的な検討に着手するよう、厚生労働大臣に対して平成25年3月に、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求め、並びに同法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、過大となっていた国庫負担金については保険者等から順次返納させるとともに、25年7月に都道府県等に対して通知を発するなどして、次のような処置を講じていた。
ア 後期高齢者医療広域連合に対して、後期高齢者医療制度において返還金等が発生した場合の国庫負担金の算定方法等について、都道府県等を通じて周知した。また、国民健康保険等において返還金が発生した場合は返還金に係る債権の把握等を適切に行うとともに国庫負担金の算定を適正に行うことを市町村等に対して周知徹底すること、市町村等が提出した国庫負担金に係る事業実績報告書について審査等を十分行うこと及び市町村等に対する指導監査等を行う際は返還金に係る債権の把握等を適切に行い国庫負担金の算定を適正に行うことを重点的に指導することについて、都道府県等に対して技術的助言等を行った。
イ 返還金に係る債権の回収を速やかに行うことなどができるよう、返還金に係る医療費相当額を保険者等の間で相互に調整できる体制を整備することについて、関係府省とも調整するなどして、具体的な検討に着手した。