水産庁は、昭和41年度及び48年度に漁船再保険及び漁業共済保険特別会計(平成26年度からは食料安定供給特別会計(漁船再保険勘定)。以下「特別会計」という。)から計47億円を漁船保険中央会(以下「中央会」という。)に交付している。中央会は、当該交付金を漁船保険振興事業資金(以下「振興資金」という。)として設置造成し、その運用益により漁船保険組合等に対して各種の助成等を行う漁船保険振興事業として、22、23両年度に漁船保険推進対策事業、無事故漁船報償事業及び海難防止助成事業(以下「3事業」という。)を実施している。しかし、漁船保険振興事業において、振興資金の運用益の減少に伴い事業費が大きく減少する中で、多くの漁船保険組合が研修会を開催するのに必要とは認められない経費を助成の対象となる事業費に含めていたり、類似の制度が整備されていることなどから事業の意義が低下していたりなどしている事態が見受けられた。
したがって、水産庁において、3事業の廃止も含めて検討するなど従来の事業の在り方を抜本的に見直すことにより振興資金を有効に活用するための方策を検討するとともに、有効活用が図られない振興資金については返還させるなどして、財政資金の有効活用を図るよう、水産庁長官に対して25年9月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、水産庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、水産庁は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 漁船保険振興事業については、従来の事業の在り方の抜本的な見直しを行い、3事業を25年度末で全て廃止させた。
イ 振興資金の活用について検討した結果、振興資金の運用益等を活用して、海難事故の防止を目的として船舶自動識別装置を導入した漁船等に対して保険料の一部を助成する新規事業を26年度から28年度まで実施させることとした上で、特別会計から交付された47億円の振興資金については、26年10月に中央会から全額を返還させた。